2013/07/13

【OP動画】ジャイアンリサイタル【みらいのねいろ@AnimeExpo2013】が素晴らしいので解説してみた

毎年この季節にアメリカはロサンゼルスで開催されるアニメエキスポ(以降AXと呼称)が、先日無事に終了した。そのAXでは、数年前から日本のサークル「D.P.H.」がボーカロイドファンパネル「みらいのねいろ」を主催しているのだが、今年そこで披露されたG2さん作のオープニング動画がすさまじくて感動のあまり号泣している。ただニコ動の反応などを見ると、それがあまり伝わっていないかもしれないと思ったので、ネタバレ&おせっかいを承知の上で少々読み解いてみたい。

AXと「みらいのねいろ」については既に皆さんご存知だと思うので、説明は省略する。よく分からない場合は、以下を読む前に各自で予習してください。また、事実関係はできるだけ調べたつもりだが誤りが含まれるかもしれないので、例によって適宜加筆訂正することがある。あらかじめご了承いただきたい。


さて本題。要旨を整理したかったのだが、ほとんど全てのカットに意味があって解説したいことが多過ぎるので、基本的に動画を追いながら記述していく。同時に再生しながら読む方が分かりやすいかもしれない。



ミクは「ワールドイズマイン」のイラストの姿で目を閉じている。WIMは2011年のMIKUNOPOLISのオープニング。その彼女が不意に目を覚ます。

AX2013のロゴ。「赤い四角形」がアクセント。その上をマウスポインタの軌跡が通り過ぎる。

モニタに向かう女性の姿。マウスクリックで「ジャイアンリサイタル.vsq」が開かれる。

開かれたファイルの中にいる彼女からは、クリックは「赤い四角形の光」に見える。彼女はそれを見つけて、目を輝かせ微笑みながら、唄い、舞いはじめる。指先から放たれた「緑色の光」が軌跡を描く。その視線、指先からつま先に至るまでが、バレエのようにしなやかな表情をみせる。

「緑色の光」は我々の世界では.vsqファイル上の緑のシーケンスラインで、ミクの世界と「赤い四角形の窓」を介して繋がっている。

秋葉原の風景。「緑色の光」がいくつも軌跡を描く。地下鉄ではなくJRにしたのは、「線」のメタファーを視覚的に強調したかったのかもしれない。また、特にこのあたりの実写シーンの色づかいは、後に登場するキャラクターを意識して注意深く設計されているように思える。

先ほどの女性が車内でスマートフォンの「ジャイアンリサイタル」にタッチすると、「赤い四角形」が光る。「チケットは要らない」のは、クリックやタッチでいつでも彼女に呼びかけることができるからだ。そのアクションに、彼女は必ず気づいて振り返ってくれる。

既にアキバの風景に溶け込んだミクの姿。大面積の広告を特に気に留めることなく、女性が横切る。各種グッズもゲームもありふれたものになったが、それらに触れることも、ミクの世界に「赤い四角形」で呼びかけるための装置の一部だ。彼女にとって「赤い四角形」は全て同値である。

休憩する女性の背中に開いた「四角い窓」から、ミクが興味深そうにこちらを伺っている。彼女は常に好奇心とともに、呼びかけてくれた誰かを探している。

デジタルサイネージのなかでステップを踏むミクの姿。「等身大の投影」=実体化は、MIKUNOPOLISをはじめとしたミクのコンサートにおける大きなテーマである。「赤い四角形」と「緑の光の軌跡」が彼女に与えられたステージだ。

"follow me" と、ミクがこちらに両手を差し伸べる。それに気づいたのか、女性が振り返る。

"mine" 。MIKUNOPOLISで世界は私のものだと高らかに宣言した彼女は、お前のものも私のものだと軽く言ってのける。慈愛に満ちた表情で。

アキバの光と影から、ミクやリンレン、ルカ、MEIKO、KAITOが溢れ出す。お前の涙も悲しみも "mine" だと言いながら。彼ら彼女たちの指先から「緑色の光の軌跡」が描かれ続け、ついに女性とミクは出会いを果たす。ミクは「我々の全てを護るために」やってきたのだ。

ワブルベースの咆哮とともに出現するミクダヨーさん。MIKUNOPOLIS以降に爆誕した、有無を言わせぬ圧倒的存在。「緑色の光の軌跡」が円を描いてダヨーさんの周囲に集まり、元気玉のように一気に弾ける。

「緑色の光の軌跡」はアキバの夜空を駆け抜け、日本をやすやすと飛び越える。

ミクがたおやかな笑顔とともに美しくスピンし始める。バレエには疎いがピルエットと呼んで正しいのだろうか。長い緑色の髪がやわらかな弧を描く。

日本から放たれた「緑色の光の軌跡」はロサンゼルスに届く。LAの夜景とAX会場のコンベンションセンター。

ミクがスピンしていたのは、高層ビルの屋上である。他のボカロがミクの周囲から街を見下ろす。このビルに既視感がある理由を最後まで思い出せなかったのだが、Google Mapで調べてやっと把握した。ビルの名はU.S. Bank Tower、通称ライブラリータワー。LAのランドマークであり、映画「インデペンデンス・デイ」で宇宙人から最初に攻撃を受け破壊される建物である。ただし実際は、屋上に書かれている数字は「39」ではない

「緑色の光の軌跡」とともに、LAのダウンタウンを蹂躙するダヨーさん。やはり向こうでも圧倒的存在。まさに "Kaiju" 。

ミクのスピンが空気の螺旋を引き起こしたのか、皆が集まる。画面がときおりギクシャクするのは、ダヨーさんが暴れてまくっているせいだろう。

街の夜景をバックに、マイクスタンド片手でこちらを振り返っているミクの立ち姿。それはオリジナルの「ジャイアンリサイタル」の、CHAN×COさんによるイラストそのままのポーズである。彼女はLAの地に再び舞い降りた。ダヨーさんが見切れているのは、スケールがデカ過ぎて画面に納められないからだろう。

ミクたちが天を指さして「緑色の光の軌跡」とともに昇っていく。その先は「みらいのねいろ」である。「なーりーたー」はZANEEDSのお約束であり、日本と世界を繋ぐ空の窓口だ。

再び秋葉原の日常風景。ミクに出会った女性は、もはや振り返らず進む。

"Special thanks for your Sharing" 。俺のものを「シェア」してくれたお前に感謝。

以上。つまりこれは、元々は別離の歌であった「ジャイアンリサイタル」の「お前のものは俺のもの」というたったそれだけのフレーズをもとに「初音ミク現象」の本質を2013年現在の視点で動画としてまとめ上げ、7月4日という特別な日に始まった今年のAXに向けて日本から届けられた、熱いメッセージである。たった2分ほどの長さにこれほど濃密な情報とリスペクトたっぷりのネタを込められること、また、それを個人レベルで存分に表現できることに、心底敬服せざるを得ない。2011年のAXへ行かれたPENGUINS PROJECTさんは、ボカロを「環太平洋のマイノリティ・ブルース」だと評したが、今年のAXに「ボカロが好きだという価値観を共有するために」集った方々にとって、この動画は極上の贈り物になったであろうと想像している。現場で皆と一緒に見て盛り上がりたかった。なお指摘するまでもないことだが、点・線・円と地球のモチーフ、リアルとバーチャル・パーソナルとグローバルの対比という手法は、もちろんGoogle Chrome CMのオマージュだろう。



最後に。当然だが、上記は全てワタシ個人の勝手な解釈であり、G2さんはもちろん、「D.P.H.」の皆さんやざにおさんとは特に関係がないことをお断りしておく。ただ、あなた方の想いにわずかでも近づくことができたのなら、こんなにうれしいことはありません。