2016/08/24

21世紀のニューシネマパラダイス

いつものように妄想をスケッチしておく。

自分の映画視聴経歴なんて全く威張れたもんじゃないんだが、1984〜85年前後の映画だけは度々映画館へ見に行っていた。理由は、ちょうどその時期の学友のツテで無料チケットが簡単にもらえたから(そいつは映画に飽きてしまってチケットを持て余していた)。当時の田舎の映画館は総入替制ではなく、気力と体力さえあれば3本立てを朝から晩まで見続けることができたので、結果としてかなりの本数の映画を見ることができた。この体験はラッキーだったのだなあと、最近になって思い返すことが増えた。理由を先に言ってしまうと、現在(2015年くらいから16年の今まで)の映画は、あのときと同じように洋画邦画実写特撮アニメ関係なく大豊作に見えるからだ。

実例を、1984年(ちなみにロサンゼルスオリンピック開催年)、1985年に日本で公開された映画のなかから、(ワタシが実際に見たものを中心に)ざっとピックアップしてみた。

1984年:
  • ザ・デイ・アフター(第三次世界大戦での核戦争後の世界を描いた近未来SF)
  • うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(押井守による伝説のカルト映画)
  • プロジェクトA(時計台のスタントシーンが超有名)
  • 風の谷のナウシカ(説明不要)
  • さよならジュピター(日本SF界の総力を結集したはずがいろいろあって…)
  • ブレインストーム(サイケからサイバーパンクを経て現在のVR・ARに繋がりそうなSF)
  • インディ・ジョーンズ/魔宮の伝説(シリーズ2作目)
  • メイン・テーマ/愛情物語(角川映画全盛期の代表作)
  • 超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか(SFロボットアニメの傑作+現代風アイドルアニメの嚆矢)
  • フットルース(MTV時代の青春映画、主題歌が大ヒット)
  • ライトスタッフ(宇宙開発全盛期に音速の壁を人類ではじめて突破した人物を描いた名作)
  • 麻雀放浪記(阿佐田哲也原作小説の映画化、終戦直後の博打打ちの泥臭さをたっぷり味わえる)
  • ゴーストバスターズ(いまやってるリメイク版のオリジナル)
  • グレムリン(動物をお風呂に入れるのって苦労するよねという映画)
  • 天国にいちばん近い島/Wの悲劇(角川映画全盛期の代表作)
  • ゴジラ(いわゆる'84ゴジラ)
1985年:
  • 死霊のはらわた(スプラッタームービーブームの火付け役)
  • アマデウス(天才モーツァルトへの嫉妬に狂ったサリエリを描いた超名作)
  • ベスト・キッド(ワックスがけこそカラテの奥義。イヤーッ!)
  • ネバーエンディング・ストーリー(超有名ファンタジー小説の映画化)
  • ターミネーター(親指を上に向けて溶鉱炉へ沈んでいくのは先の話)
  • 乱(黒澤明最後の時代劇映画)
  • ペンギンズ・メモリー 幸福物語(CMで人気が出た可愛らしいペンギンキャラで釣られると痛い目に合うカルト映画)
  • マッドマックス/サンダードーム(シリーズ3作目)
  • 台風クラブ(日本型青春映画の佳作)
  • キリング・フィールド(カンボジアのポル・ポト政権下での大虐殺を描いた問題作)
  • タンポポ(伊丹十三監督によるラーメンアクション?映画)
  • バック・トゥ・ザ・フューチャー(偉大なるシリーズ第1作)
なお1983年には「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」が、1986年には「エイリアン2」が公開されていることを付記しておく。

さて、2015〜16年をざっくりと見渡してみよう。下記は完全に主観でピックアップしたもの(なので日本のアニメが多くなっているけどご容赦):
  • ラブライブ! The School Idol Movie
  • 海街diary
  • マッドマックス 怒りのデス・ロード
  • ガールズ&パンツァー 劇場版
  • スター・ウォーズ/フォースの覚醒
  • KING OF PRISM by PrettyRhythm
  • ちはやふる -上の句-/-下の句-
  • アイアムアヒーロー
  • 劇場版 響け!ユーフォニアム〜北宇治高校吹奏楽部へようこそ〜
  • ズートピア
  • 帰ってきたヒトラー
  • シン・ゴジラ
  • ゴーストバスターズ
これより前の「パシフィック・リム」と「アナと雪の女王」あたりを付け加えれば、話題に釣られて見に行った作品が少なくとも2つ3つくらいあると思う。この、様々なジャンルとモチーフにわたって良作駄作が入り乱れるなか、傑作と人気作と半ばカルト化した作品が揃っていて、それを皆が好きずきに話をしている風景が、何となく1984〜85年のそれと似ているように思えてしょうがないのだ。例えば、自分の人生を完全に狂わせた「ビューティフル・ドリーマー」も、大して興味が湧かず友人に無理矢理連れて行かれた「風の谷のナウシカ」も、ノリノリで見に行った「愛・おぼえていますか」も、当時は決して肯定的な評価だけではなく、あれこれ言い合っていた。それらを(田舎の映画館でプアな設備とは言え)映画館の巨大なスクリーンで見られたのは、今となっては貴重な体験だったと言うしかない。

その過去と現在を比較すると、2つの違いがある。

ひとつは話題の消費速度。SNSでバズった作品はあっという間に人気となり、上映期間が延長され、ついには短期間でのリバイバルあるいはロングラン上映に至るものが増えた。雑誌が年末にベスト映画を選ぶ前に、作品の良さは視聴者によって決められてしまうのだ。もうひとつは映画館の設備の向上。大昔の映画ブーム以来の古い劇場はかなり淘汰され、快適でスクリーンも音響も整ったシネマコンプレックスが一般化した更にその上に、さらに高品質をうたうULTIRA上映や、体験型の4DX、「極上爆音上映」という一点突破型スタイルを確立した立川のシネマシティ、その後を追う塚口サンサン劇場と川崎チネチッタなど、その劇場ならではの個性を全面的に打ち出すようなところさえ現れ始めた。こうして視聴者は可能であれば映画館を選び、好みのスタイルで(場合によっては光る棒などを振って)作品を楽しむことができるようになったのだ。

映画は部屋で見るより映画館で見る方がより楽しい。こんなシンプルなことを数十年ぶりに再認識している。数千円を出して数時間イスに拘束されるだけの簡単なお仕事で、驚くほど非日常的な体験が得られるかもしれないのだ。ひとりで見ても、誰かを誘っても、その映画は必ず楽しい。そして誰かと話すネタが増える。面白い映画なら賛美の言葉が並び、クソ映画なら罵倒の文句があふれるだろう。だが、それすら楽しい。本当に楽しい。だから、今はあれこれ理屈を並べる前に、それを存分に味わっておいたほうがいいように思うのだ。こんな幸せな季節はしばらく巡ってこないかもしれないのだから。