2016/11/20

「響け!ユーフォニアム2」深読み:第七回

いつもの前置き:何をどう工夫してもネタバレは避けられないし、そもそも自分が考えてることは明らかに他の皆さんと違っちゃってるようなので、まだ見てない人はもちろん既に見た人も含め、作品を素直に楽しみたい方は、この記事の存在を忘れてください。ただの感想文とか楽しい感じには絶対にならないので、そういうのを期待してる人は読まないでください。

警告おしまい。あとは好き勝手に書く。と言っても今回は個人的に第五回に匹敵するほど、いや、第1期を含めても異様に密度が高くて全く思考が追いついてないんだけど。









本題。第七回「えきびるコンサート」について。その前に『滝先生がなぜ自由曲に「三日月の舞」を選んだのか』という以前からの疑問について考えてみたい。吹奏楽コンクールがどういうものかまだ充分に理解していないので私見になってしまうのだが、課題曲と自由曲を演奏するというのは、フィギュアスケートのショートプログラムとフリースケーティングを1日のたった12分間でやるみたいなものと理解している。つまり課題曲では与えられた要素をどれだけ忠実に再現できるか、自由曲ではどれだけ技術と個性を表現できるか、その点を評価されているっぽいということである。そして自由曲は、どうやら選曲の時点でその団体のレベルをある程度判断されてしまうらしい。つまり、北宇治高校吹奏楽部が「全国大会出場」という目標を設定した時点で、滝先生はそれを達成できる難度と彼女たち彼らのストロングポイントを存分に発揮できる楽曲を選んだと考えてよい。そのストロングポイントとは、第一回で滝先生が言っていた北宇治高校吹奏楽部のトップ4、すなわち香織先輩と麗奈、サファイア川島、そして…あすか先輩である。その次に位置するのは久美子と技術的には申し分なかったみぞれ先輩、安定のホルン隊(滝先生いわく「ホルンがかっこいい曲」)、あとは喜多村&岡先輩のファゴットコンビなども含まれるだろう。臨時コーチの橋本先生と新山先生がパーカッションと木管楽器専門なので、滝先生がふたりを呼んだのはその他のパートの底上げを図るためとも考えられる。まあこのあたりを考えると長くなってしまうので、いずれ稿を改めて考察してみたい。少々話がそれた。今回持ち上がったのは、北宇治高校吹奏楽部のトップ4の一角…というよりもフロントマンと言った方が近い、あすか先輩の退部という大問題である。

その危機的状況に合わせたものかは不明だが、今回は異様な絵面が頻出するのでものすごいうショックを受けて大混乱している。まず、画面から光やツヤが失われているような気がする。夏服は着ているものの季節が既に秋であることは前回までに語られており、セミの代わりに鈴虫の声が聞こえてくるのが印象的だが、第1期中盤から第2期第五回くらいまでの、あの眩しくて目眩がする感じはもう戻ってこないのだろうという事実がとても寂しい。

上記に加えて、今回はこれでもかというくらいに極端な構図が繰り返し現れる。第1期でもここまで徹底した回はほとんど無かったんじゃなかろうか。できるだけ厳選して引用するけど、カット割りの細かさも影響して、とても全ては追い切れない。ここはぜひ皆さんでじっくり確認してほしい。





それと個人的に今回を象徴する場面だと思っているのが京阪電鉄宇治線の通学シーン。「ユーフォ」ではこれまで電車は登校下校どちらの場合でも「画面の左から右に向かって(→)進む」ことがほとんどだった。それが今回、「画面の右から左に向かって(←)進む」のが描かれたことで、物語が逆転している、つまり、これまで築きあげてきたものが崩壊しかねないという緊張感が醸し出されている。余談だが『映画「聲の形」』では、劇中の登場人物はほとんど画面の右から左に向かって動いていることを指摘しておく。


ここで映っている麗奈だが、怒っているような険しい表情がとても印象深い。あすか先輩を批判的に語る彼女もまた、あすか先輩と同様に演奏者としてのエゴに忠実で、周りのゴタゴタなどどうでもいいという不満を抱いていることが手に取るように分かる。まあ北宇治カルテットにだけは表情を崩して葉月にやさしく声をかけるところなどは、彼女が成長したと感じさせる部分だけど。





まだ本題に辿り着かない。今回は極端な構図とともに足の芝居がとても目立つので、第1期の雰囲気を思い出させる。そういえば劇伴も第1期のものだけ、特に「葵ちゃん退部事件」前後によく使われていた楽曲が多く用いられていて、やはりここでも「物語の逆転」が示唆されている。なお第1期のサントラから使用された劇伴は以下の通り:
  • Tr.6 青春の流転
  • Tr.20 不信
  • Tr.24 青春の苦悩
  • Tr.22 張り詰めた糸のように
  • Tr.23 衝突
  • Tr.16 青春の痛み
  • Tr. 29 去来する想い
  • Tr.26 微かな光






印象的な芝居ならまだある。この3人のバストアップ、ともすればアニメ的な記号として消費されがちな場面だが、同じように見えながらそれぞれ意味が違っている。親に束縛されいつまでも子供扱いされる理不尽、部の行く末とソロを任されるという不安、ストレートな不満の表明…特に晴香部長の腕時計がずり落ちる描写が素晴らしい。




その晴香部長、第五回であすか先輩にいいところを持っていかれて存在感がますます希薄になっていたのだが、あすか先輩の危機によって、全国大会まで部を引っ張っていかなくてはいけないという重責を担うことになった。「生徒の自主性を重んじる」滝先生が珍しく彼女にソロを任せる提案をしたのは、部をまとめられるのはやはり彼女しかいないと見込んでのことなんだろう。





しかし彼女はもちろんひとりではなく、その最大の理解者なのが香織先輩。第1期「第七回」の「葵ちゃん退部事件」で晴香部長が泣きべそをかいたあげく学校を休んでしまったときに、彼女の自宅を訪れて励ました場面を思い出す。また、口に指を添えるカットは明らかにあすか先輩との呼応だけど、彼女にこんな表情されたら男女問わず黙るしかないわなあ(笑)





さてやっと今回の主役のあすか先輩なのだが…部のカリスマ的存在である彼女が抜けることがそのままパフォーマンスに影響してしまう描写に一切の容赦が無くて胃が痛くなる。部員たちの不安そうな表情、第五回の大熱演とは明らかにクオリティの落ちた演奏、第1期の挑発的な口調から打って変わって心に深く訴えかけるような滝先生の「何ですか、これ」というセリフ…。カットを引用するとキリがないので以下にとどめるが、冒頭の母親との確執の場面より、ラベンダー(だよね?)と空席のカットの方が個人的には痛切でたまらない。





その彼女の不在が確定するかまだ不明な状態で皆が不安を抱えたままなのは変わらないのだが、晴香部長や香織先輩のほかにも彼女のために動き出している部員がいる。それはまだ伏線でしか示されていないが、音を聴けば何をしているのか誰にでも分かるのは、引用した葉月のカットで彼女がぶーぶー言ってるのが「宝島」の演奏だと気付けば理解できよう(ってこれはワタシは気付けなかったけど)。なお「宝島」は吹奏楽曲の定番中の定番らしいので、これが何かの暗喩ということはなさそう。…原曲はT-SQUAREだよね。4人?まさか、まさかねえ…





そのような状態で迎えた駅ビルコンサート、あすか先輩が戻ったことで皆の不安が和らいだせいか、リラックスした雰囲気の演奏シーンがまた見どころだらけで大変なことになっている。Tシャツ姿なのでバンクとしては使えないはずなのに、ここまで力を入れますか京アニさん…。ここも全部のカットを引用したいくらいだが厳選して紹介。サファイア川島かっこいい。





そして晴香部長のソロ。決意と悲壮感と高揚感がないまぜになったような、何とも形容しがたい迫力に満ちている。久美子とあすか先輩が驚くのも無理はない。









他にも言いたいことはあるけど、いいかげん長くなり過ぎたので個人的な見どころ。まず京都駅と京都タワー。「けいおん!」「たまこラブストーリー」でも登場したけど、ワタシが妄想するところの「京アニが編纂する京都偽史」がまた強化されてしまった。三者に共通するうさぎのモチーフは機会をあらためて考察したいところ。


それから3DCGの演奏シーン。その気になれば50〜60人を一斉に細かく動かせるという技術をあっさり見せるあたりが何とも恐ろしい。


そして何と言ってもここ。被写界深度が浅くて遠景がボケるのは分かるけど、そこから近寄ってくる久美子にどんどんフォーカスが合ってくる描写をアニメでどうやったら再現できるのだろう?さらりと描かれているけど、驚きを通り越して戦慄した。



やたらと長くなってしまったがこのへんで切り上げる。次回はまた別の大問題が描かれそうでさらに不安を抱えることになってるので早いとこ何とかしてください。




そして、次の曲が始まるのです。