2017/01/13

「響け!ユーフォニアム2」深読み:第十一回

2016年末に終了した「響け!ユーフォニアム2」を10月から毎週ほぼリアルタイムで追いかけてはキモい感じであれこれ語ってきたこの記事、自分の(想定外の)引越しが重なってラスト3回分を書く余裕が無く放置して(しかしそのあいだ「ポッピンQ」を見に行ってたりして)いたのだが、2017年を迎え新作TVシリーズが放映される時期になってやっと自分の中で落としどころが見つかった気がするので、ぼちぼちまとめようと思う。当然、ネタバレとか原作小説への言及とか気にせずにいくので読まれる方はそのつもりでいてください。







さて第十一回「はつこいトランペット」について。実は執筆が止まった理由の大きなもののひとつはこの回にある。第十回「ほうかごオブリガード」であすか先輩にまつわるエピソードがきれいに折りたたまれて、「2」において主役クラスで内面を語る必要があるのは麗奈だけになってはいたのだけど、何だか別のアニメを見ているみたいで…一言で表現すればエピソードを盛りすぎて彼女のキャラが変貌してしまったんじゃないか、いわゆる「美少女枠」から「若くして情念にまみれて業の深くなりそうな女」にクラスチェンジしてしまったように感じた。あすか先輩は事あるごとに「おばけに取りつかれて呪われる」と口にしていたが、麗奈は滝先生に恋をしているというより、滝先生に呪われて取りつかれている女の子ということになってしまった。そういうのも一途で切実な恋のうちと言ってしまえばそれまでなのだけども。

原作小説に無いエピソードを盛ることは決して悪いことではない。例えば第1期第十二回「わたしのユーフォニアム」は丸ごとアニメオリジナルのエピソードだが、夏の夜の宇治橋を駆ける名シーンが象徴するように、久美子の、ひいては楽器演奏者の誰もが一度は直面する切実な葛藤を描いて物語世界を大きく深く広げることに成功した。一方、今回のエピソードの骨格は、原作小説の3巻+短編集にある『久美子と麗奈が再び大吉山に登るシーン』と『過去のリトル麗奈が「自分が普通ではない」と初めて気づかされる場面+滝先生とのファーストコンタクト』に、原作には無い『滝先生からトランペットのスコアを渡されるシーン』と『天ヶ瀬ダム近くにある滝先生の奥さんのお墓へお参りするシーン』が追加されている。前者も大概だが後者はさすがにどうよ、というのが率直な印象で、彼の心をいまだ占めている亡妻の墓標に(半ば強引に押しかけて)祈る彼女の姿は、想いに取りつかれたおばけのようだった…文化祭で幽霊の格好をしていたのはそういう前フリだったということなのかもしれない。



さてだいたい言いたいことは言ってしまったので、いつものように思うところをつらつらと。まあ時間も開いたことだし今回は少なめで。

いつもマイペースなサファイア川島のこういう顔つきは久しぶりでホッとするけど久美子のデフォルメされた表情もご無沙汰だったかも。後でも述べるけど、エピソードの主題を描きながらこういった「過去への回帰」が少しずつ顔を覗かせるのが今回のポイント。あと鮮やかさの薄れた背景にも注目。



練習に復帰したあすか先輩に「ペットボトルの水」を渡す夏希先輩。第1期から続く、「そのキャラクターの転換点」に差し出される記号的なもの。


そのあすか先輩がユーフォを構える姿の描写が違和感なさ過ぎて見過ごしてしまいそうなので改めてピックアップしておく。初見でギャーって叫んでしまったよ…





もう放送後だから書いてしまうけど、誰か(≒久美子)が頭の中で想像している場面を表す記号としての青枠描写は、「2」本編ではこの回だけで使われている。第1期との違いを出すために捨てた表現だと思っていたのだけど…これ以降から明確になる「過去への回帰」の象徴的なカットと言える。


久美子と麗奈の密会…もとい待合せ場所は例によって宇治神社で、その鳥居の前にある石像がシルエットで描かれているけど確か源氏物語関係だったような。今回盛られた話がもしかすると源氏物語からの引用という線も考えられるけど、考え過ぎかね…?


大吉山の上で夜景を背に振り返る麗奈。服の白さはあがた祭りの夜と同じだけど、表情はまるで違う。そして、あのときは呆けてばかりだった久美子は、「性格悪い」がゆえに今の彼女に必要な言葉をかける。こういう部分の反復と対称性が、単純な「過去への回帰」ではないことを伺わせる。



小学生低学年の麗奈が、自分が普通ではない、他人とは違うと「気づかされた」直後に描かれる、ヤング滝先生とのファーストコンタクト。なぜトロンボーンを構えてるんだ等の謎は多いけど、このあたりは底なし沼っぽいので深読みせず放置。





その滝先生が麗奈に呪いをかけたシーン。「もう必要ない」という言葉の意味は、楽器から遠ざかってしまったから使うことは無いということだろうか、もしかすると亡くなった奥さんの持ちものを誰かに託したかったのかも、とさえ想像してしまう。通常ならちょっと待てと言いたくなるところだが、愛妻を亡くした時期であろうことを考えると、何ともやりきれなさが残る。ちなみにここは宇治川と宇治橋周辺にある橋のうちのひとつだけど存在をすっかり忘れていた。塔の島を挟んで久美子の家周辺とほぼ反対の位置であることに注意。





滝先生の事実を知って動揺を隠せない麗奈の演奏を「弱い」と斬って捨てる滝先生。彼に迷いは無く、私情を挟む余地もない。その言葉を受ける麗奈の心情やいかに…


「秋の早朝に宇治神社の前で待ち合わせて自転車で天ヶ瀬ダムまで行ってお墓参りしてくる」というのは、まあ…ファンタジーみたいなものと考えることにする。これで吹っ切れたのだから、麗奈は強いということで。





さて次はいよいよ全国大会。しかし実は放送直後「あと2回しか残ってないのにどうするんだ」と感じたのが正直なところ。府大会(第1期第十三回)と関西大会(第2期第五回)でやった演出や描写は使えない。さらに短編を含めるとエピソードはまだたくさん残っている。尺が足りない印象はどうしても拭えず、期待より不安の方が大きかったことをあらためて記しておきたい。



そして、次の曲が始まるのです。