2016/11/25

「響け!ユーフォニアム2」深読み:第八回

いつもの前置き:何をどう工夫してもネタバレは避けられないし、そもそも自分が考えてることは明らかに他の皆さんと違っちゃってるようなので、まだ見てない人はもちろん既に見た人も含め、作品を素直に楽しみたい方は、この記事の存在を忘れてください。ただの感想文とか楽しい感じには絶対にならないので、そういうのを期待してる人は読まないでください。

警告おしまい。あとは好き勝手に書く…けど、今回はいつものノリとは違うので、今までお付き合いいただいてた方にも正直オススメできません…もし読んでしまって変な熱が出ちゃったら、サファイア川島に頭突きで体温を測ってもらってください。







本題。第八回「かぜひきラプソディー」について。第1期の第八回が伝説的だったんで期待しながらリアルタイムで見始めたんだけど、終わったときに京アニもついに息切れしたかと思った。具体的に言うと以下の点がとても気になった:
  • 構図・レイアウトが(特に極端だった第2期第七回の直後ということもあって)平凡に感じられ、動画・モブの枚数・精度も第1期から通じても物足りなく、カメラのブレも通称ダメレンズ表現も主観映像的表現のために多用されてきた3DCGの背景もほとんど見られない
  • 過去の回想の演出として効果的に引用されてきた第1期のカットが無い
  • 久美子のナレーションと一部のカットが説明的すぎて目立つ
動画の物足りなさや(おそらくは尺が足りないのが強く影響している)久美子のナレーションの説明的な印象などはだいたい第六回以降から少しずつ感じられていたことだが、EDの原画・動画に書かれている人数を見れば、リソースと熱量がこれまでの回に比べて少なめなのは明らか。それでもこの後に引用するスクリーンキャプチャなどを見れば万策尽きそうな他のTVアニメよりはるかにマシで贅沢なのは分かるんだけど、劇場版オリジナルアニメと見紛うほどの出来である第一回〜第五回に比べると、差は歴然としている。もちろん連続TVアニメなので回ごとの品質の差は許容すべきものと頭では理解できるんだが、京アニは「TVアニメを映画にするつもりだ」と期待しながら、このハイテンションな試みがいったいどこまで続くのか、それとも破綻してしまうのかと思いつつ見守ってきたので、ほんのわずかな弛みがこれほどまでに目立ってしまう事実に個人的には大きなショックを受けてる…少なくとも動画やモブに関してはBlu-ray/DVDで修正が入ると思う。繰り返しになるけど、上記はあくまでもこのTVアニメシリーズに限った個人的な印象に過ぎず、贅沢な話をしているのは百も承知なので念のため。



…気を取り直して、思うところをつらつらと。

久しぶりに出てきた宇治橋。カメラ位置が低いのが印象的。久美子と葵ちゃんが立ち話するシーンは宇治橋西詰(宇治橋の西側の交差点)で、近くにある、第1期第七回で葵ちゃんと晴香部長が話し合ったサイゼリヤが見える。今回の見どころは実は背景かもしれない(けど被写界深度が浅めの描写が多いのが少々残念)。それと宇治川にいるでっかい鳥は鷺だったんだね。1羽だけ飛び去っていくのが、まあ分かりやすいところではある。





「口を縫う」というのは「コマンドー」が元ネタのひとつらしいのだけど…久美子の失言癖は幼い頃の「思ったことをすぐ言葉にする」素直な性格の名残りかもしれない。それと麻美子ねえちゃんの制服、北宇治高校はもちろん北中とも南中とも違うよなあ…南宇治高校?それとも宇治に引っ越してくる前の制服とか?そういえば家具の配置も違う。うーん、よく分からない。



そのリトル久美子、何といっても中の人である黒沢ともよ嬢の演技に違和感が無くて凄みすら感じる。子役時代からの分厚いキャリアを見込んでキャスティングしたとしたら、この物語における黄前久美子というキャラクターは彼女以外には演じられなかったんだろうなあ…それはともかく、葉月そっくりの屈託ない笑顔とパーカーの柄が分かりやすくていい。




勉強の面倒をみることを口実にして久美子を自宅に誘うあすか先輩、表情がコロコロ変わるので本心は読み解けないのだが、心配げな久美子と対比的に描かれる思い詰めたような顔つきが印象深い。そして彼女は「帰還しました」と言いながら姿を消してしまうので、不安になるなという方が無理というものである…



一方、第2期ではもう出てこないと思っていた葵ちゃんは、いまの久美子にとって特別である吹奏楽部とあすか先輩を客観的に眺める者として登場する。他者の干渉によって吹奏楽を辞めて未練を残している麻美子ねえちゃんと、その瀬戸際で揺れるあすか先輩との対比が残酷で冷たい。が、わずかな後悔と戸惑いと苛立ちをはらんだような葵ちゃんの複雑な表情と声色が、部活というものの現実を突いてもいる。彼女は晴香部長に別れを告げたこの場所を歩くたび、それを思い出しているのかもしれない。





アイキャッチは梨子先輩。北宇治高校吹奏楽部の癒し系である彼女のありのままを描いたらこういう姿なわけだけど、まあ何というか容赦ねえなあ…


風邪を引いて早退した久美子の自宅へ見舞いに訪れた麗奈、びっくりするくらいの美少女として描かれるのがこれまた容赦ないんだが、彼女の理想主義者的な性格と言動は家族の理解とバックアップがあってこそで、あすか先輩ですら特別ではないという事実が露わになり、さらに最も距離が近いと思っていた久美子も姉=家族との葛藤を抱えているのを目の当たりにして、ショックを受けているように見える。そういう意味では第1期第八回と極めて対照的ではあるんだが…ともあれ、久美子の幼なじみで今は少し離れて見守っている秀一との想いの差は、彼女にとって自分と久美子を見つめ直すきっかけになるかもしれない。余談気味だが、このシーンで麻美子ねえちゃんと口論する「地声の」久美子の怒声、先に述べたリトル久美子も含めて考えるとやはり感嘆せざるを得ない…





妹と秀一に痛いところを突かれた麻美子ねえちゃんが頭を冷やしにきたのは通称久美子ベンチ。OPの伏線も回収完了。なんだかんだ言って姉妹なのだねえ。ねえちゃんがんばれ応援するぞ。




さて、例によって個人的に気になったところを列挙。まずはこの記事の冒頭で述べた「説明的すぎる」カット。麗奈の一言も含めて深読みも何もあったもんじゃない…って第1期最終回でそれとなく出てたのはさすがに気づかなかった!ちなみに氏のCDから流れる曲はEDによると「北宇治四重奏 第1番 ユーフォニアム」だが、せっかくだから曲名や作曲者も伏線っぽく表記を工夫してほしかった…





次。麻美子ねえちゃんがトロンボーンを演奏する姿。久美子(とおそらく秀一)が吹奏楽を始めるきっかけになったのがうなずけるほどカッコいいけど、ここまでダイナミックなパースがついたり主観的だったりする楽器演奏の構図は少々やり過ぎな気もする。なお、ねえちゃんが吹いている劇中初出の新曲は「アメリカン・パトロール」。第2期のサントラがCD3枚組になるのもうなずける。





それと…木々の葉が落ちた宇治川沿いの景色。水面は相変わらずぞっとするほど美しいけれど、あの熱い夏はとっくに過ぎ去っていて、次回くらいから冬服に衣替えするかもしれない。全国大会は刻一刻と迫っている。



さて、滝先生が決断を下すまで、時間の猶予はほとんどない。物語的にもTVアニメシリーズとしても、正念場と言える。悠長にプリン食って寝てる場合じゃねえ…って宇治に住んでて「抹茶じゃないやつ」を頼む久美子もアレだが、それに応えてほうじ茶プリンを買ってくる黄前母の性格も相当である(笑)。






そして、次の曲が始まるのです。