2012年末で事実上解散した、ざにお氏率いるZANEEDSのラストシングル。この曲をレビューする気になれるほど哀しみは癒えていなかったのだが、今回とある理由により取り上げてみることにした。
ご存知の通り、ZANEEDSはボカロシーン(と敢えて記すが)に対して、思いっきり斜に構えていた。ネットで拾ってきたようなネタに走り、笑わせ、泣かせ、挑発して、困惑させた。その一方で海外展開を視野に入れ、実際に何度も渡航していた。
この、ニコ動というよりも日本のドメスティックなネットカルチャーを強く意識しながら海の向こうへダイレクトに打って出るという両極端なスタンスは、いったい何に裏付けられていたのだろうか。
この作品は、上記の謎を解くのに最適である。
タイトルと詞は、オタクでなくても分かる国民的なお約束。変拍子によるトリッキーな構成に、チップチューン風味をわずかに効かせたフレーバー。いつもの「ざにおん家の」ミクの唄声。これらが実は伏線であり…サビで全て持っていくカタルシスとして爆発する。
が、これらの「ギミック」は、あくまでも氏の照れ隠しであろう。小さくて静かで途切れ途切れで、しかし丁寧に奏でられるピアノの音色こそが、彼の託したメッセージに思えてならない。この音が聴こえる限り、想いは必ず伝わるはずだと。
だから、たとえネタとして消費されても、たとえ言葉が通じなくても、ZANEEDSの音楽は我々の心を揺さぶり続けるのだ。
2013年以降、氏はソロとしても新曲を発表していない。だが、音楽が大好きなあなたはきっと自分に嘘をつけない。その証拠に、今でもよく海外に行ってるじゃないか。まあ個人的な趣味なのも分かるけど。
いいよ別に。引き出しが開いた机の前で、膝を抱えて座りながら待ち続けてやるから。
********************
■music:ざにお
■illust:CHAN×CO
********************