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2021/10/17

幕張の片隅でリベンジを叫ぶ 〜 「ゾンビランドサガLIVE~フランシュシュ 佐賀よ共にわいてくれ~」雑感

2020年3月8日の数日前。状況を鑑みライブを自粛する旨のアナウンスが公式発表された。あの、先が見えない混乱と不安のなか、他のイベントが軒並み延期や中止になっていた以上、妥当な判断ではある。ただ、2019年夏のアルピノ凱旋ライブのライブビューイングを一緒に見て以来の名も無きデスおじ仲間が当ててくれたチケットは払い戻しとなって、仕方がないと自分に言い聞かせながら、内心では行き場のない無念さや悔しさを噛み殺していたことを、ずいぶん昔のことのように思い出す。


あれから約1年半。

ふざけんじゃねえ、こんなもんじゃねえ。

我ら名も無きデスおじは、喉から飛び出そうになる叫び声を必死で押さえ込み、でも流れる涙はそのままに、拳を幕張メッセの天井めがけて何度も突き上げた。

ふざけんじゃねえ、こんなもんじゃねえ。



ゾンビランドサガ」は佐賀が舞台のオリジナルアニメとして好評を博し、劇中の主役である(実は全員ゾンビの)アイドルグループ・フランシュシュの中の人…本業は声優さんなのだが、によるライブも回を重ねるごとにそれらしさを増していって、その効果もあったのだろうか、いわゆる2期「ゾンビランドサガR(リベンジ)」が製作・放送された。今回はライブの話をしたいので詳しくは書かないが、2期では一度挫折したフランシュシュが紆余曲折を経て佐賀の危機を救うという結末(と新たな謎)が描かれた。

ここで重要なのが、劇中でフランシュシュは佐賀の危機を救うために立ち上がるのだけど、現実の我々の状況も照射した作りになっていたということである。

逆境に見舞われ先行きが見えなくなり不安に押しつぶされそうになったとき、人は何をすべきか。

フランシュシュは(ゾンビだけど)アイドルなので、アイドルとしてステージに上がることを選んだ。

自分が今できることをやる、なすべきことをなす。それは我々ひとりひとりが約1年半ほど歯を食いしばりながら体験してきたこと、そのものではないか。

2021年晩秋のその先はまだまだ予断を許さないけれど、ひとりひとりの積み重ねによって幕張メッセでイベントを開催できるところまでは何とか辿り着けた。ライブ会場に入るとき、大きなステージと眩しい照明と、期待に胸を躍らせている満員のお客さんの姿を見て、うれしさと懐かしさが入り混じったような複雑な感情に囚われたことを白状しておく。



フランシュシュのライブを配信でご覧になった方も多いと思うけど、彼女たち…繰り返しで恐縮だが本業は声優さんの歌とダンスは、アニメで描かれたフランシュシュの実体化という以外の言葉が見つからない。2019年夏の時点でもかなりそれらしかった記憶があるが、あれからどれだけレッスンを重ねたらこんなことになるんだろう、人間ってマジですげえ、声が出せないので精一杯の拍手をしつつ、彼女たちの一挙手一投足をそんなふうに感心しながら眺めていたように思う。

これはおそらくどの2次元アイドルコンテンツでも同じことが起こってるのだと思うけど、声優さんがキャラクターの実体化という重責を担ってステージに立つとき、マルチタレントという言葉では言い表せない一種の神々しさみたいなものが垣間見える。演者としてキャラクターのファンの期待を絶対に裏切れないという巨大なプレッシャーを克服し、本業ではないはずの歌とダンス(さらには楽器演奏など各種パフォーマンスも加わる)をマスターして人に聴かせられる・見せられるところまで持っていくためのトレーニングを繰り返し、そして大抵の場合ソロではなくチームなので、複雑なパート割りやフォーメーションetc.を覚えて呼吸を合わせなければいけない。そもそもステージに立って大勢の観客を前にすること自体が「声優のお仕事からすれば」異例なことなのだ。最近は皆さんがハイレベルなことをあまりにも普通にこなして見せてくださってるので忘れてしまいがちだが。

今回のフランシュシュのライブはそういった神々しさに加えて何かが取り憑いたような、ゾンビだから霊とかそういうのかもしれないけど、鬼気迫るものがあった。私たちはどうしてもこれを見せたかったから全力でやるという無言の叫びがステージの上から聞こえてくるようだった。そして我々観客側も、何が何でも今日これを見届けてやるぞという気迫がほとばしっていた。

端的に言えば、ステージと客席の間で、魂と魂が音を立ててぶつかり合ってた。



「ゾンビランドサガ」には、実際の生死の境界を超えて「生きるということは何なのか」という重いテーマが根底に流れていると思っている。2021年10月16日、幕張メッセで、その答が少しだけ分かった気がした。

人間ってマジですげえな。
次は思いっきり叫んで暴れる勢いで全身全霊で楽しみたいな。
まだまだこんなもんじゃねえの知ってるからな。

ひとりの名も無きデスおじの胸の奥で、何か熱いものが再びくすぶり始めた。それを一般的には、魂と呼ぶのかもしれない。



フランシュシュの皆さん、デスおじのお二方(個人的に今回のMVP)、ゲストやスタッフの方々、本当にお疲れさまでした。映画、楽しみにしてます。




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