For short, " I. M. G. D. "
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2024/10/10

めんどくさいアニメおじさんが宝塚版ベルばらを見て激しく衝撃を受けた話 〜 宝塚歌劇雪組公演「ベルサイユのばら」にまつわるあれこれ

宝塚版シティーハンターから始まって宝塚歌劇を既に何度か見て、その度にすげえものを見たと思って帰ってくるわけだが、今回はあの「ベルサイユのばら」、通称ベルばらである。少女マンガとアニメの双方においての金字塔であり、宝塚と聞いて真っ先に思い浮かべるあれを、運良く見ることができた。

結論から先に書く。

頭を殴られたような衝撃を受けた。ものすごかった。素晴らしかった。

この調子で続けるとそれだけで終わるので、もう少し噛み砕いて、何がワタシにとってそれほどの衝撃だったのかを、つれづれに記しておく。

(画像は宝塚歌劇公式ページよりお借りしました) 

2019/09/13

アニメにおける歌唱・楽器演奏描写のイノベーションの現在 〜『キャロル&チューズデイ』『劇場版「BanG Dream! FILM LIVE」』を例として

いきなり本題。

アニメにおける歌唱・楽器演奏シーン描写の近代革命は、「涼宮ハルヒの憂鬱」によってもたらされたというのは、おおむね異論のないところであろう。




2017/09/09

Re:CREATORSは2010年代の第四人称ソーシャルフィクションである(※少々ネタバレあり)

記事のタイトルで全て言っちゃった感があるんだけど、とにかく現在放映中のRe:CREATORS(レクリエイターズ)(以下、カタカナ表記あるいは本作品と呼称)、多忙で録画しただけで見られずにいて少し余裕ができたので先日一気に見たんだけど、まあ驚いたのなんの。今はちょうど終盤のクライマックス直前なので細かいところは抜きにして、自分が本作品を見て現時点で何を考えているかを少々ネタバレ込みで書き留めておく。物語の結末を見届けたら、改めて記事を起こすかもしれない。


2016/10/01

DAIMお蔵出しこぼればなし

2016年春に活動を休止したネット音楽レビューサイト・DAIMで、自分が書いた楽曲レビューを思うところあって先ほどここで再公開した。

DAIMについてはもう忘れられてる頃だろうから、軽く説明しておく。現Stripelessレーベルのボス・しまさんとワタシが2012年8月下旬に共同設立した、「全ての音楽を掘りつくす勢いでやる」楽曲レビューサイトがDAIMであった。以降の約3年半、ボーカロイド楽曲寄りではあったが、我々を含めたチームメンバーがインディペンデントなネット音楽について何か感じたことをレビューに仕立てて発表する場として、少しは何かの役に立てたかもと現在は思っているところである。

DAIMの意味やなぜ誰でも参加できるようにしなかったのか等のネタばらしは別の機会に譲るが、このままDAIMのサイト(Tumblr版とWordpress版の2つあった)が消滅したままだと自分の書いた文章が闇に葬り去られるため、今回サルベージすることにした。また、DAIMの最盛期を知らない方から最近「DAIMが読めないのでどういうものだったのか分からない」というご意見をいただき、そうは言っても全レビューを自分の一存で再公開するわけにもいかないので、ワタシの責任が持てる範囲、すなわち自分が書いた文章をなるべくそのまま転載して、少しでも当時の雰囲気を味わってもらえるようにした。そのため、基本的には原稿を丸ごとコピーして貼り付けただけで、リンクがおかしかったり変な間が空いたり一部のコンテンツが消えたりしている。作者と曲名は正しいので、必要なら各自で検索するなりしてください。

さて各レビューのリストと、執筆時の意図などを軽く解説:
  • t.Komine(うたたP) / 鳥居羊 / “こちら、幸福安心委員会です。”
    DAIM設立時に「ここではメジャーな曲を積極的に扱っていこう」という個人的な方針を決め、そのとき最も気になっていた作品をピックアップしたもの。「プロパガンダ」という単語を導き出して動画の扇情的な絵と扇動的な歌詞、そして強烈なビートをかなり強引に結びつけた感じ。
  • ゴジマジP / “おちゃめ機能”
    「メジャーな曲を積極的に扱う」と決めた際に、これも書こうと真っ先に決めたもの。ニコ動ネイティブなボカロPの筆頭と個人的に思っているゴジマジP=ラマーズPを、なるべくフラットに評価しようという試みでもある。氏の腕前は最近ますます磨きがかかっていて舌を巻くばかり。
  • daniwell / “WHISPER MOMOKO”
    ネットミーム化した「Nyan Cat」の元曲の作者であるdaniwell氏のアイディアと、「Nyan Cat」を唄っている桃音モモの中の人である藤本萌々子さんの声素材が合わさって、インタラクティブアート的な雰囲気を醸し出した作品。「全ての音楽を掘りつくす勢いでやる」方針の個人的な具現化の一発目。
  • 名無しさん / “生演奏 ちんこ音頭 Jazz Ver.”
    CGM/UCGと呼ばれる行為がまるでニコ動やボカロ、ピアプロ等で始まったみたいな言説をぶち壊したくて書いたもの。掘れば似たような話がもっとあるはずで、そういう先例があるのを抜きにして議論を組み立てたくなかったので。このあたりはDAIMの仲間だったアンメルツPの知見にかなり影響されたりもしている。
  • 鼻そうめんP / “YOUTHFUL DAYS’ GRAFFITI”
    モストフェイバリットボカロPのひとりである鼻そうめんPの作品から最高に笑える作品をピックアップしたもの。最後の「R」が昭和軽薄体なのに気づいた読者が何人いたのか、ちょっと自信が持てない(笑)。
  • 委員長 / “台湾人が中国語で「いーあるふぁんくらぶ」を歌ってみた”
    2012年のミクパ香港・台湾ツアーにぶつけて書いたもの。原曲ではなく台湾の方が中国語に翻訳して歌ったこの作品を取り上げたのは、「歌ってみた」が原曲の強さに負けず、バリューを付加できることもあるのを強調したかったから。何度聴いても日本語で歌われるパートにグッときちゃうんだよなあ。
  • 曲者P / “10月の雨”
    選曲は完全に趣味。今までいろんなところで書き散らしてきたなかで、どうしても拾い上げたかったけどその機会に恵まれず、ついにここで書くことができて、当時は勝手に感無量になってた。
  • ぱきら / “Ribbon~脱・女のコ宣言”
    これも完全に趣味。ニコ動以外にも良曲が存在するのでケアしようよという呼びかけの意図もあった。あとQlairちゃんって言いたかっただけだと思う。
  • 島白(よだれP) / “初音ミクが「ほしのこもりうた」歌いやがった【リローデッド】”
    2008年8月31日が忘れられない日になったのはこういう良い作品群が同時多発的に投稿されたからというのと、ボカロ曲が新しいジャンルの音楽との出会いの導線になっているというのの両方を書いたつもり。作品が非公開になっているのがつくづく惜しまれる。
  • kz(livetune) / “Tell Your World”
    Google Chromeの例のCM公開1年後にぶつけて、その映像をテキストで表現しようと試みたもの。当時のニコ動で「初音ミクオリジナル曲」タグを検索して再生数順に並べた上位30曲からネタ(=その作品を連想させる言葉)を拾い集めて、「自動車ショー歌」のn番煎じに仕立て上げた。今となっては何故39曲にしなかったのか不思議でならない。
  • OSTER project / “【初音ミク】恋スルVOC@LOID -テイクゼロ-【おまけ】”
    初音ミクの代表曲の「虚構の別テイク」を紹介しながら、彼女のキャラクター形成がある意味で自覚的に行われていったという指摘をしたかったもの。これを書いた当時、「こんな曲があるなんて知らなかった」という反応が散見されたのが少々驚きではあった。
  • Treow(逆衝動P) / “Chaining Intention”
    趣味の選曲だけど、「これを聴いてボカロ曲にハマる若い奴が絶対いるだろうな」と当時思っていたのも確かで、それを素直に書いた。なお文中の「ワタシ自身のトリガー楽曲」とは、坂本龍一の「Riot in Lagos」です。
  • ちえ / “フライングスタート”
    これも趣味の選曲。聴いた当時はぽかんと口を開けて呆然としながら「世の中には得体の知れない天才めいた奴が少なくとも1人いる」という事実に戦慄していた。時を経てついにメジャーデビューするところまでいったのも、当然の帰結だと思う。
  • くちばしP / “EX-GIRL”
    さらに趣味の選曲。異様にポップなのに謎めいてる歌詞についてとにかく書いてみたかった。氏はある時期を境にぷつりと音沙汰が無くなったが、最近になって活動を再開しているようで何よりである。
  • ケフィアP / “VOCAL-ENGINE”
    これを書いた時点で既に忘れられようとしていた、クルマのサンプリング音とボカロによるラップで構成された画期的な作品をサルベージしようとしたもの。何度聴いてもカッコいい。
  • ZANEEDS / “ジャイアンリサイタル”
    モストフェイバリットボカロPのひとりであるZANEEDS最後の名曲。非常に思い入れがあるので書くのをためらっていたが、文中の動画がきっかけとなって扱うことに決めた。ざにおは現在では蒙古タンメンマンに転生したようだが…(笑)。
  • RUBY-CATMAN / “Computer Music Love”
    モストフェイバリットボカロPのひとりであるRUBY-CATMANさんの作品をどうしても取り上げたかったので書いた。公式ライブでルビーさんの曲をやるようになったら誰か教えてください。
  • Gun-SEKI / “『恋の2-4-11』フルバージョンでいっくよー★”
    書いた時点では「艦これ」を遠目で眺めるエア提督だったんだけど、いきなりこういう作品が出てきて非常に驚いたので勢いに任せて書いたもの。もはや「艦これ」も一大コンテンツに成長してしまって、いろいろと感慨深いものがある。
…こんなところかな。レビューの裏話を書くことなんてめったにないけど、今後似たようなことをやる誰かの参考に少しでもなってくれれば、それだけで満足。こうやって振り返ってみると、全然成長してねえなあと思うばかりだけど。

DAIMお蔵出し:RUBY-CATMAN / “Computer Music Love”

  1. 「初音ミク現象」を語るときに決して忘れてはならないものがある。
    CGMやUCGといった、難しい言葉は要らない。
    今こそ叫ぼうではないか。
    コンピューターと音楽への愛を。
    この作品のモチーフとして描かれるコンピューターは、1980年代のスタンドアローンなものではなく、90年代から現在まで続く、インターネットに接続された端末群をイメージさせる。
    人と人を繋ぐそれは、常に持ち歩けるまでになった。手のひらから発したメッセージは、リアルタイムで世界の向こうの誰かにまで届く。
    例えば、海に放ったガラスの小瓶。かわいらしくしたためた封筒と便箋。到達時間を無視すれば、あなたの目の前のスマートフォンは、実はそれらの代わりに過ぎない。ただし、ひとつだけ違いがある。
    文字と一緒にいろんなものが送れること。
    スタンプや写真、動画、そして、音楽。
    ニコ動やYouTubeで見つけた作品のURLを友人や仲間に送って、すぐにシェアして楽しむ。かつての我々のように、レコードショップで音源を発掘しなくても、音楽雑誌を隅々まで読み込まなくても、元ネタを知らなくても、もう構わない。
    そういう重力を振り切ってしまおう。
    初音ミクが発売されて、もうすぐ6年を迎える。一方、作者のRUBY-CATMANさんは、この作品を2012年12月25日にニコ動で発表した。音楽の長い歴史からすればほんの一瞬に過ぎないが、この幸運な出会いを喜びたいと思う。
    これは、6年前に届いていたミクさんからの手紙を開いたら、きれいな押し花がはらりと舞い落ちてきた、そんな曲である。
    ********************
    ■music&lyrics RUBY-CATMAN
    ■illust ラグ
    ■movie 千音子
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    Info

DAIMお蔵出し:ZANEEDS / “ジャイアンリサイタル”

  1. 2012年末で事実上解散した、ざにお氏率いるZANEEDSのラストシングル。この曲をレビューする気になれるほど哀しみは癒えていなかったのだが、今回とある理由により取り上げてみることにした。
    ご存知の通り、ZANEEDSはボカロシーン(と敢えて記すが)に対して、思いっきり斜に構えていた。ネットで拾ってきたようなネタに走り、笑わせ、泣かせ、挑発して、困惑させた。その一方で海外展開を視野に入れ、実際に何度も渡航していた。
    この、ニコ動というよりも日本のドメスティックなネットカルチャーを強く意識しながら海の向こうへダイレクトに打って出るという両極端なスタンスは、いったい何に裏付けられていたのだろうか。
    この作品は、上記の謎を解くのに最適である。
    タイトルと詞は、オタクでなくても分かる国民的なお約束。変拍子によるトリッキーな構成に、チップチューン風味をわずかに効かせたフレーバー。いつもの「ざにおん家の」ミクの唄声。これらが実は伏線であり…サビで全て持っていくカタルシスとして爆発する。
    が、これらの「ギミック」は、あくまでも氏の照れ隠しであろう。小さくて静かで途切れ途切れで、しかし丁寧に奏でられるピアノの音色こそが、彼の託したメッセージに思えてならない。この音が聴こえる限り、想いは必ず伝わるはずだと。
    だから、たとえネタとして消費されても、たとえ言葉が通じなくても、ZANEEDSの音楽は我々の心を揺さぶり続けるのだ。
    2013年以降、氏はソロとしても新曲を発表していない。だが、音楽が大好きなあなたはきっと自分に嘘をつけない。その証拠に、今でもよく海外に行ってるじゃないか。まあ個人的な趣味なのも分かるけど。
    いいよ別に。引き出しが開いた机の前で、膝を抱えて座りながら待ち続けてやるから。
    ********************
    ■music:ざにお
    ■illust:CHAN×CO
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    ※冒頭に書いた「とある理由」とは、この曲をフィーチャーした「【OP動画】ジャイアンリサイタル【みらいのねいろ@AnimeExpo2013】」を見て感動したためです。とにかく素晴らしいので、ぜひ一度ご覧ください。

    Info

DAIMお蔵出し:ケフィアP / “VOCAL-ENGINE”

  1. 声と楽器と音とノイズについて、ここしばらく考え込んでいる。
    ボーカロイド等は歌声合成ソフトという楽器の一種だが、その元はサンプリングされた声である。
    楽器は音楽を奏でるための器材だが、様々な音程が出せるよう工夫されたものもあれば、音が出れば良しとする場合もあって、もちろん声も含まれる。
    音とは空気の振動だが、キャラクターが明瞭に響くものもあれば、雑多な周波数が混在しているものや不可聴帯域のものもあって、もちろん各種楽器の音色も含まれる。
    ノイズとは不快な音だが、無響室に入ると自分の身体が発するノイズが聞こえてくる。
    人間の聴覚は、こういったノイズを無意識下でフィルタリングしているらしいと何かで読んだ気がする。
    音楽への衝動は、長い歳月を経て様式が整理され器材が進化しても、根っこは変わらないのだと思う。声があるかぎり歌う。音が出るかぎり奏でる。その気になれば、どんなノイズでさえも歌にすることができる。
    ボカロの声に魅了されるのも、フェラーリの走行音に官能を見出すのも、実は似たような話なのかもしれない。
    ********************
    ■music:ケフィアP
    ■illust:ゆかこ
    ********************

    Info

DAIMお蔵出し:くちばしP / “EX-GIRL”

  1.  初音ミクのオリジナル曲の歴史を語るとき、「メルト」によって「キャラソン」が「私とあなたの歌」に変化した、というのが一般的な意見である。しかし、ミクという仮想人格への自己言及から二人称的な誰かの物語へのシフトは、「メルト前メルト後」のようにデジタルに遷移したものではない。そのことを強く印象づけているのが、この作品である。
     曲の概要はニコニコ大百科に譲る。注目したいのは、タイトルの「EX」と歌詞の謎である。「EX」とは何だ?「自分に飽きた」のは、いったい誰なんだ?この独白を、初音ミクという「個人」、あるいは、どこかにいる多感な少女の心の動きと解釈することはたやすいが、両者を隔てるものは無に等しい。ここにいる彼女は、「細い裏路地」という日常空間から「この世の全て裏から眺め」ることができるのだから。そして彼女が獲得するのは、全ての視線と新たな世界である。
     「EX」とは、初音ミクと分かちがたい特別な存在、つまりニコ動を見ているあなた自身のことである。
     ※ただしおっさんを除く
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    ■music&illust:くちばし
    ********************

    Info

DAIMお蔵出し:ちえ / “フライングスタート”

  1.  この季節にふさわしい、せつなくもあざやかな高揚感につつまれてみよう。そして、なぜかを探ってみよう−こんな調子で語り始めると1年が過ぎてしまうので、できるだけ端的にまとめてみたい。
     まず、たった11秒、ピアノとベース、ドラムだけのイントロの豊かさに目を瞠る。そこからミクの声とフルートのような音色が加わって、ひらひらと舞い踊る。35秒あたりからは弦楽器のピチカートを交えつつタメをつくり、46秒からのサビで喜びを爆発させて、2番に続く間奏からは一気に畳み掛ける。
     このスピーディでトリッキーな構成に、いかにも春らしいキーワードを散りばめた歌詞が花を添える。曲を聴きながらじっくりと確かめて、メロディと言葉が織りなす響きとリズムを堪能してほしい。
     そしてやや後ろから描かれたミクのイラストは、翼のように両手を広げ彼方に翔んでいってしまいそうな彼女の一瞬を切り取っている。
     ざっと見渡しただけで、この密度である。まるでポップソングのお手本なのだが、おそらく楽曲制作や楽器演奏の経験があるほど驚きが増すだろう。これを聴いて自分も何かやってみようとそわそわし始めた方が、決して少なくないと想像するのだ。
     3分57秒。この余韻は、なにものにもかえられないきらめきである。
    ********************
    music:ちえ
    words:リョータイ
    illust:はらの
    ********************

    Info


DAIMお蔵出し:Treow(逆衝動P) / “Chaining Intention”

  1.  卵から孵ったばかりの雛鳥が最初に見たものを親と思い込む「刷り込み」という行動があるが、音楽はそのトリガーになりうるだろうか。ワタシは充分に有り得ると思っている。
     いや別に胎教の話をするつもりはない。音楽に対して主体的に行動するきっかけになる楽曲が、誰にでも必ずあるだろうということだ。
     そういうポテンシャルを持つ作品は、往々にしてブロードキャストされていない。例えば皆が見ているTVに独りそっぽを向いてPCを眺めているときに、前触れなく現れるものだ。ネットでそんな楽曲を発見して大きなショックを受け、血眼になって音楽情報を漁るようになったティーンエイジャー…ボカロネイティブあるいはネット音楽ネイティブが、今後どんな風景を見せてくれるのか、あるいはどんな人生を歩むのか、実は楽しみで仕方がないのである。
     てなことを、この作品とワタシ自身のトリガー楽曲を聴き比べながらぼんやりと考えている。
     「刷り込み」は中二病の感染源だよなあ。
    ********************
    music:Treow
    words:NaturaLe
    illust:花雀
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    Info

DAIMお蔵出し:OSTER project / “【初音ミク】恋スルVOC@LOID -テイクゼロ-【おまけ】”

  1.  2013年の今こそ、あえて取り上げる。
     いわゆるn次創作の端的な例であるパロディは、元ネタへの深い洞察とリスペクトとセンスが必要となる。さらに元ネタと密接な距離に位置するので、ハズすわけにはいかない。そのプレッシャーを想像するだけで胃が痛くなる、そういう種類の創作である。
     ボーカロイド…特に初音ミクのキャラクター性の成立過程において、極初期に制作され広く共有された「ハイレベルな2次創作」が影響していることは、あらためて強調しておきたい。実際、ミクがなぜ仕事を選ばないのか、なぜネギを持っているのか等を説明するには、年表を広げるしか無いのだ。
     さて、自身の曲を高度かつ徹底的にパロったこの作品によって、作者がミクにアホの子属性を付加した罪は重い。しかも作者は現在に至るまで懲りるどころか最前線から降りそうな気配もないので、始末に負えない。
     まったく、「セルフバカー」とはよく言ったものである。
    ********************
    ■music,lyrics:OSTER project
    ********************
    ※通常はレビュー曲の外部プレイヤーを配置するのですが、今回は原曲と、あたま@ニコニコさんによる素晴らしいProject Divaエディット動画をご紹介しておきます。

    Info

DAIMお蔵出し:kz(livetune) / “Tell Your World”

  1. ハジメテノオトが溶けて消え失せた世界の終わりで踊ろう
    どんな歌でも歌うから
    あふれ出す想いは歌に変えて
    おはよう、おはよう
    記憶の中の幻と陽炎の日々は昔々の今日
    オンディーヌ?ウンディーネ?
    深海へ沈むリアルな世界は明日も皆様他人事
    進化の過程の僕が贈るものは全て胡桃と緑のジュース
    未来と願いと奇跡の絵の具で猫という猫を虹色に!
    千の桜の雨が降る最果ての世界で一番のお姫様は
    アイとはなんぞと問われれば
    ここから連れ出してと
    十文字以内で答エル





    「覚悟をしててよね?」
    「教えてよ 君だけの世界」




    *******************
    ■music&lyrics:kz(livetune)
    ■movie:わかむらP,ファンタジスタ歌磨呂,TAKCOM
    ********************

    Info

DAIMお蔵出し:島白(よだれP) / “初音ミクが「ほしのこもりうた」歌いやがった【リローデッド】”

  1.  おっさんには新しい音楽なんて必要ないのさ勝手にやってればいいのさ。そう考えていた時期が自分にもありました。
     タイトルの通り、これは「2008年08月31日」に投稿されたものの再投稿である。あの24時間前後の異様な熱気と一体感による興奮で文字通りモニタに齧りついていたことを、夏の終わりの暑さとともによく覚えている。
     この曲は、あの日に投稿された作品群のなかでも異質であった。モチーフ・メロディ・歌詞・アレンジのアクロバティックとさえ思える組合せを、可愛らしい合成音声が唄う。一聴してすぐに自分が蓄積してきた音楽感、いや、独りよがりのまま更新されなかった知識と嗜好が、一気に崩壊した。
     あとで調べたら、どうやらこれは「ドラムンベース」と呼ばれるジャンルの一種らしいと分かった。ではジャングルと何が違うのだろう。調べるなら手がかりはそのへんか。こうして、音楽をめぐる探検を再開したのである。
    ********************
    ■music&lyrics:島白(よだれP)
    ********************

    ニコニコ動画

    この動画は投稿者により非公開に設定されています。

    Info

DAIMお蔵出し:ぱきら / “Ribbon~脱・女のコ宣言”

  1.  隠れた名曲である(と言っても殿堂入りしている)「涙にさよなら」の作者・ぱきらさんの、もっと隠れてるけど個人的に忘れられない作品。
     一言で表すと、メロディ、アレンジ、(初音ミクに寄せているが)自称的な歌詞のどれもが、1980年代後半〜1990年代初期に隆盛を極めた、典型的な女性アイドルポップスである。
     こういったテイストが、2000年代後半にインディペンデントで聴けるとは、さすがに予想していなかった。我らがバーチャルアイドルが唄う音楽は実にバラエティに富んでいるけど、それらがアイドルポップスとして機能しているなら、たまにはこういうのもいかがでしょう?
    ********************
    ■music&lyrics:ぱきら
    ********************
    ※参考:Qlair「思い出のアルバム」

    Info


DAIMお蔵出し:曲者P / “10月の雨”

  1.  おっさんどもがボカロにハマる理由を考えたことがあるだろうか?キャラに魅せられた奴、世界を変える可能性を感じてる奴もいるが、ワタシは「音楽を取り戻すことができた」からに尽きる。
     ワタシはフォークからMTVに至るまで、TVやラジオで流れる音楽を聴いてきた。やがて音楽が「産業として」成熟しJ-POPだらけになって、ワタシが親しんだ音楽は表から消えた。いよいよ新譜購入を止めようと考えてたのが2007年の夏。マジ。
     この曲はそういうおっさんの琴線に触れた。シンセ主体のAOR的なミディアムポップス…求めていた音楽を見つけた。これが新作で聴けて見渡せば他にも良曲がある。ここは宝の山だ!そう感激したのが2007年の暮れ。マジ。
     おっさんどものこんな音楽体験の「再生」が、たぶん今でも同時多発している。これで理解できないなら、ホール&オーツのKiss on My Listを引っ張り出してこい。話はそれからだ。
    ********************
    ■music&lyrics:曲者P
    ********************

    Info

DAIMお蔵出し:鼻そうめんP / “YOUTHFUL DAYS’ GRAFFITI”

  1. 先日も謎のヒットを飛ばしたアニメーター兼イラストレーター兼コンポーザーである氏の作品から、おっさん的な好みでこれを紹介しつつ、氏がいわゆる総合Pではないことを指摘したい。
    この曲のほぼ完成した状態を、ピアプロで聴ける。

    だが何かが足りない。もちろん歌詞である。これに限らず、氏はほとんどの作品で歌詞を外注しているので、総合P=楽曲や動画の全てを手がける制作者とは言えない。
    さて、歌詞の不在で不足するものとは何か。電気グルーヴが「Shangri-La」を発表した際、石野卓球氏が「ラブソングがないと駄目だ」と発言した記憶がある(がソース不明)。両者ともガチな電子音楽家で多彩な表現力を持つのに、場合によっては欠落してしまう要素があるらしいのだ。
    推測だが、氏は十分にそれを理解している。できないことを潔く切り捨てることも、表現者には必要なのでR。
    ********************
    ■music&illust:鼻そうめんP
    ■lyrics:友場洋
    ********************

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DAIMお蔵出し:ゴジマジP / “おちゃめ機能”

  1.  重音テトの代表曲のひとつであるこの作品は、2010年04月01日投稿のオリジナル(作者は匿名扱い)から始まり、作者であるラ…ゴジマジPの連続投稿(八頭身モナー:2010年05月10日線画その1:2010年05月11日その2:2010年05月12日)で祭が勃発して多数の作品が派生し(カラー化:2010年05月15日歌ってみた:2010年05月20日踊ってみた:2010年05月30日など)、現在に至る(MMD版:2012年04月01日など)。
     一連の流れを見るとニコニコ動画における表現の連鎖の典型例だが、作者自身が投稿した3作品に注目してみると、オフボーカル版の作りがとてもシンプルであるのが分かる。このことは逆に、氏の紡いだメロディがリッチであることの証明になろう。
     同時に歌詞にも注目したい。氏の書く詞に頻出するパ行の繰り返しだが、ここでは「夢から覚めないで」というフレーズの間にたった3文字のピピピを置くことで、彼女のキャラクターと風景をシンプルに描写している。
     このシンプル/リッチ/シンプルという緩急が、ポップな厚みを創り出している。祭のトリガーは、3連続投稿された動画の楽しさだけではないのだ。
     なお個人的には、UTAU SONIC 2011でのアクトが強く印象に残っている。中の人が歌い切ったんだよこれを。
    ********************
    ■music&lyrics,: ゴジマジP
    ■irrust:千愛
    ■movie:キッカ
    ********************

    Info

DAIMお蔵出し:t.Komine(うたたP) / 鳥居羊 / “こちら、幸福安心委員会です。”

  1.  元ネタの古典TRPGはさておき。
     作品内で繰り返される「義務なんです」というフレーズから、ジムナスティック=体操=YMOを連想してみる。
     初期YMOが共産主義的独裁をキーイメージとして打ち出し、散開ライブで「プロパガンダ」を展開したのはご存知の通りである。
     プロパガンダとは政治的な宣伝行為で、サーチライトの強烈な光、演説や音楽を拡声器や巨大スピーカーで増幅した音響などで構成される大規模な舞台装置、また、ユニフォームを着た群衆による行進やマスゲームといった律動等を伴う。
     これによって個人を否定する同調圧力が生じるが、この力は「いじめる側の論理」とほぼ同義である。ときには個人の死すら厭わない残酷な世界が待っていることを、肝に銘じるべきであろう。
     もちろんこの作品は、このようなディストピアのパロディなのだが、妖しい肢体と人を見下した声を持つ幻の存在によって、我々は煽動されてしまうかもしれない。
     それほどに危険なのだ。
    ********************
    ■music:t.Komine (うたたP)
    ■lyrics:鳥居羊
    ■illust:wogura
    ********************

    Info


2016/07/11

Re:animation9 雑感

既にTwitterでも話したことだけど、あらためて整理しておきたくなったので書く。

7/10(日)に新宿歌舞伎町のど真ん中で行われたRe:animation9(以降リアニと表記)の野外フロアへ入場して爆音で流れるアニソンにゆらゆらと身を委ねてしばらくして、BOOM BOOM SATELLITES の「LAY YOUR HANDS ON ME」がプレイされたとき、喜びとも哀しみとも分からない感情に包まれて、ひどく動揺した。



ワタシは彼らの熱狂的なファンではないけれど少々の音楽好きではあるから、アニメその他を通じて彼らの作品を知っている。そしてこれがどういう意味合いの曲なのかも。そういう音楽がアジアの雑踏の極みのような都市空間に大音量で解放された事実が、自分を打ちのめした。



音楽消費がフェス化して久しいと聞く。それはフジロックに代表される野外フェスや、アリーナやスタジアムといった大規模な閉鎖空間で行われるライブイベントが盛況であるという話に裏打ちされる。ではそういった日常生活から切り離された大空間はもう他にないのか、というところを思いっきり逆手に取って、大繁華街のど真ん中でアニメソングを中心にした屋外クラブイベント(アニクラ)を敢行したのが、リアニの始まりのようである。

そのリアニに、ワタシは1度参加したことがある。Wikipediaで調べるとそれは2013年の9月の第5.5回、小雨が降って少々肌寒い印象が強かったその日は、フロア後方でグダってる泥酔客とサークルモッシュ的オタ芸に熱心でプレイされる音楽なんか知ったこっちゃない勢と知っているアニソンがプレイされると後方からダッシュして体当たり上等な女性客が気になって、とてもじゃないが音楽を楽しむ気分になれず途中で帰ったことをよく覚えている。それがアニクラの流儀のひとつだというのを知ったのはその後しばらくしてからで、ちょっともったいなかったとは今でも思うが。

今回のリアニは、その印象を覆すものだった。アニソンはプレイされるものの基本はEDMフェス、もっと言うとテクノやトランスの野外レイブの再現をコンセプトに据えたのだと思う。もちろんアニソンやゲームミュージック、ボカロ曲(!)などの文脈の範疇からは外れないんだが、DJが変わる度にアニクラ、EDM、ベースミュージック、トランス、テクノ等に場の色彩がきれいに染まっていき、そういう音楽をまともに聴いたことがない風情のアニオタにさえステップを踏ませるようなパワーが発散されていた。そして音楽が中心であることは、スタッフの皆さんが先に挙げたような問題を起こしそうな人たちに対してよく注意を払っていた様子からも伺えた。



ボカロ系クラブイベント(ボカクラ)で度々お見かけするDJ Megsysさんが回し始めたとき、ワタシは入場規制列にいた。最初に聴こえてきたのは「ルカルカ★ナイトフィーバー」。ボカロクラスタにしか分からない想いをこんな形でぶっ込んでくる心意気みたいなものがビリビリ伝わってきて、その後ボカロ曲からアニソンRemixへきれいに繋いで熱く盛り上がり、クラウドファンディングで権利を買ったらしい人からの放水を浴びせられながら多幸感に包まれたあのとき。

ゴリゴリのトランスで押しまくるDJさんが当然のようにHiroyuki Odaではなく鼻そうめんPのボカロ曲を2つもプレイしたあのとき。

ラストのロングセットでコアなテクノが鳴り響いてもほとんど誰も帰ろうとせずひたすら踊っていたあのとき。

そしていまもう一度、「LAY YOUR HANDS ON ME」がプレイされたときの、四方をビルと派手な看板に囲まれた都市の風景と空の色が視界の中で境界を失って混じり合い、自分の身体も思考も何もかもがどこかへ溶けてしまったような、あの感覚を思い出す。おそらくそれは祈りのようなものだったのだろう。



次のリアニもがんばって行くようにします。できればスタートから。

HiroshiWatanabe aka Kaitoさん(@hiroshi_w_aka_kaito)が投稿した写真 -


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