いまどきのアメニティあふれるクルマならいざ知らず、ワタシが乗っている1999年型トヨタMR2(もう15年前…)にそのようなものは時代的にも車種的にも期待できない。そんなわけで乗り始めてからずっと「ドライブ時に車内のどこへ飲み物を置くか」は永遠に近いテーマだった。走り始めたら2〜3時間は止まらないのが当たり前なのと天井がTバールーフで意外と暑いので、こまめな水分補給は実際重要なのですよ。
最初の解決策はDINサイズのドリンクホルダー兼小物入れをオーディオユニットと共にセットすることだった。…ってDINってもう通じないんだろうな。カーオーディオの一種の規格で大きさに互換性があるのでパーツの流用やら何やらが簡単、って話がそれた。まずはトヨタ純正オプション品を装着して、そして同様の社外品に換えてひとときの平穏を得た。
が、iPodの登場で事情が大きく変わる。今でこそクルマやカーオーディオがiPod(またはiPhone)に対応しているのは普通だが、まだそれほど普及していない頃には「あの四角いステンレスの小箱をどこに置いて操作するか」は結構大きな悩みのタネで、自分はしばらくのあいだ音声出力ケーブルを刺したiPodを上記のドリンクホルダーへ無造作に突っ込んで場をしのいでいた。
しかしこの方法、飲み物類とiPodの形と大きさの違いにより早々に破綻した。コーナーを曲がると車内でiPodがどこかへすっ飛んでいくことが多発し、その度に停車しては座席の下をまさぐってiPodを探すのを繰り返すこと数回、別の方法での固定方法を模索することにした。
ちょうどこの頃になると目ざといアフターパーツメーカー(余談だがアフターパーツってクルマ業界の和製英語だよな、デッドニングとかも)が、iPodも一緒に置けるドリンクホルダーを販売し始めていた。価格もそれほど高くないし、良さげなものを見繕って取り付けておしまい…と思ったら大きな大きな罠が待っていた。
後付けのドリンクホルダーの主流はエアコン吹出口取付式である。本体にカニのハサミのような細長いアタッチメントを差し込み吹出口のルーバーに引っ掛けて固定するという手軽で加工の要らない方法で、ドリンクホルダー業界(?)のデファクトスタンダード(??)である。
しかしこれが少なくともワタシのクルマには相性最悪で、何度取り付けても突然ズレたり外れたりして、その度に置いてあったペットボトルやiPodが車内のどこかへ落っこちる。メーカーや年代が変わればこのあたりも改善されるだろうと思って別なものを買ったりしたのだが、ズレと外れは一向に治らない。これはつまり取り付け方法そのものに問題があるということだ。
たいていの場合、車内エアコンのルーバーは上下左右に可動する。ここに一定の重量物を引っ掛けて手軽に固定しようという発想もまあ安直だが、それ以上に何十年も同じ方法で「固定できたことにする」アフターパーツメーカーの考えの 浅はかさには本当に辟易する。「枯れた趣味の世界では技術革新が起こらず商品開発も停滞する」というのはワタシの持論だが、それを地で行っているようなものである。同様の場所に固定するナビゲーション用モニタ台座アタッチメントには金属バネとネジで確実にガッチリと取り付けられる工夫のされたものが存在するというのに。努力をしなくなった業界に未来は無い… 近所のカー用品店は驚くほど閑散としてたもんなあ。
ともあれダッシュボード上に吸盤や両面テープでデデーンと取り付けるのも大嫌いなので、この場所で何とかするしかない。要は外れないようにすればいいのだ…と悩むこと実に十年近く、ようやく解決策を見出すことができた。
その方法とは何のことはない、「付属アタッチメントを使わずタイラップ等の結束バンドでルーバーに固定する」というもの。ふと思いついて実際に仮止めした時点で効果が抜群なのが 分かったので、今までの試行錯誤はいったい何だったんだろうと気が抜けてしまったほど。なおあまり強く結束するとルーバーを破損しかねないので、ある程度しっかり固定できたところで両面テープを併用して微妙な位置ズレを防ぐのがよかろう(写真をよく見ると両面テープがはみ出しているが、3Mの超強力両面テープの切れ端を後から適当に挟んだため。見栄えがよろしくないので後でつけ直す予定)。
ただこの方法にも「角度調整ができない」という欠点はある。その場合は何かスペーサーを自作する必要があるが、そもそも車内に常設のドリンクホルダーが存在しないクルマに乗っている人が現在どれだけいるのかを考えると、これは杞憂の類と言っていいだろう。
そんなわけで我がクルマにもついに平和が 訪れた。こないだコスッたけど。取り付けたドリンクホルダーはイマイチ使いづらいけど安かったから良しとする。こないだコスッちゃったけど。あの程度なら自分でも塗装できるけど色が無いんだ色が。このへんも(結果的にそうなってしまったとは言え)レアなクルマに乗る者の悩みのひとつである。