For short, " I. M. G. D. "
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Light up your room, and browse away from the monitor, please! :-)

2015/12/27

ボカロP最弱セットMac版(2015)

以前、ほぼ同様のタイトルでMacでのボーカロイド作曲環境を廉価で整える記事を書いた。今回はそのアップデート版なので、基本的なことは前の記事を参照にしてほしい。

2015年に入りDTM環境は一層の多様化を見せ、また、ボーカロイドライブラリ制作各社がV4へのシフトを鮮明化するに至り、ユーザーとしても選択の幅の広さに悩まされることになった。今回の記事はここを中心に書く。

一方、Macは前の記事を書いてからハードが一通り世代交代し、OSがEl Capitanにアップデートしたが、極端に大きな進化はしていない。従って、今回の記事でも「USB3.0ポートが装備されたMacにできるだけたくさんメモリを積むのがオススメ」というスタンスに変化は無く、以降、Mac本体については触れない。

さて前回の記事のまとめに書いた
  • 最弱セット松:Cubase 7の廉価版 + ボカキューNEO + Macに対応したV3ボカロライブラリ
  • 最弱セット竹:GarageBand最新版 + 初音ミクV3またはKAITO V3( + MainStage 3 + Drummer追加)
  • 最弱セット梅:GarageBand最新版 + UTAU-Synth( + MainStage 3)
を見直していくことにしよう。

Cubaseは前回の記事から8.5にアップデートされたが、廉価版(あるいはオーディオインターフェース等のバンドル版)としてCubase Element 8がラインナップされているので、「最弱」としてはこれを軸に考える。注目すべきは体験版の存在で、じゃあこれにボカキューNEOとV3かV4のボカロライブラリの体験版が揃えば初期費用ゼロでボカロ作曲がとりあえず試せるんじゃね?…と思ったら、ちゃんと用意してくれていた。えらいぞヤマハ。というわけで、まずはこれを試してみるのを推奨。ボカロライブラリ体験版ならヤマハ以外の他社でも出ているはずなので、各自探してみてほしい(代表的なところでAHS社の体験版ラインナップへのリンクを貼っておく)。あ、ライブラリがちゃんとMacに対応してるかは確認してね。


と、ここで気になるのがPiapro Studioが使えるクリプトンボカロ。体験版が用意されているのは現時点でV3のMEIKOV4Xの巡音ルカ英語だけだがV3の初音ミクなので、好みで選ぶといいだろう(個人的には容量デカいけどV4Xの新機能が使えるルカさんオススメ)。いずれにせよ、これらの体験版とGarageBandを組合わせればやっぱり初期費用ゼロでボカロ作曲が試せる。なおPiapro Studioは他社製ライブラリも使えるので、Cubase/ボカキューNEOとGarageBand(≒Logic Pro X)/Piapro Studioを比較しながらあれこれ使い込んでみるのもいいかもしれない。


UTAU-Synthは現状維持ながら継続してリリースされているのが素晴らしい。前回の記事を書いた時期から比べるとUTAUライブラリの進歩と充実は目を見張るものがあるので、ニコ動などで音源を聴き比べて面白そうなものを使ってみるといいだろう。もちろんこれも基本的に初期費用ゼロ。それと上記の2つと違ってボーカルエディタが独立しているのでDAWが自由に選べるのは隠れたアドバンテージかもしれない。


さて…新しいアプローチで歌声合成業界(?)に参入してきたCeVIOだが、現時点ではMacでネイティブに動作するものは存在しない。従って、使いたければBoot CampかVMware fusionParallels Desktopか…ってもうこれ初心者向けじゃないので除外。素直にWindowsマシンを用意してください。残念…。


周辺機器については以前と同じ。しっかりとしたモニター用ヘッドホン、あると便利なUSBバスパワー動作のMIDIキーボード、バックアップ用外付けハードディスク、ほしい人はオーディオインターフェース…等々。特にヘッドホンは重要だと思うし長く使うものなのでじっくり選んでほしい。

さて、前回から特筆すべき事柄として、ビギナー向けボカロ作曲用参考書の決定版とも言えるアンメルツPの「ボカロビギナーズ」が一般書籍として発売されたことが挙げられる。とりあえず手元に置いといて損はないと思うので、作曲のお供にどうぞ。


ということで、年末年始休みの間にボカロ作曲を初期費用ゼロでやってみて、気に入ったらお年玉で買える範囲のプランを再考してみた。最弱セット松で数万、梅なら周辺機器関係の出費程度で抑えられる。「とにかく唄わせたい」という意思が先なら、DTM環境を整えるのは後からでも十分間に合うのだ。ご検討あれ。



追伸:クリプトン社は鏡音リン・レンV4Xの体験版を早急に用意すべきだと強調しておく。こういうときにこそオススメしたいのに…。

さらに追伸:2016/01/21にアップルはiOS向けアプリのGarageBandをアップデートし、同時にMusic Memosという「鼻歌作曲ソフト」をリリースした。前者には、強化されたLoop機能とMac版GarageBand / Logic Pro Xに搭載されているDrummer機能が追加され、DTM環境としてはこれひとつでかなりのところまで追い込めるようなところまで来た。また、Music Memosは先述の通り鼻歌などの音源を録音するとそれに見合ったコードを付与しギターとドラムの簡単な演奏までつけてくれるというもので、作曲やカバーの際に威力を発揮するだろう。というか、Music Memos / GarageBandとiOS版VOCALOIDエディタがあれば、とりあえずiPhone / iPadでボカロ作曲できてしまうので、既にiOS機器を持っている人にとっては実はダークホース的にオススメかもしれない(特にiPad)。

2015/12/19

トラックボールを変更

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ワタシのPC環境はずいぶん前からMac mini (Early 2009) を中心として構成されていて、入力デバイスからデータバックアップシステムまで数年単位で変更せず使ってきた。今回話題にする入力デバイスのひとつであるトラックボール(ロジクールM570)は、約3年前に腱鞘炎の悪化を予防するため知人のアドバイスで導入したもので、  少々手を入れて以降は快適に使うことができていた。

ところがここ数週間、どうにも調子がおかしくなってしまった。具体的には左クリックが確定されなかったり勝手にダブルクリックと認識されたり…いわゆるチャタリングの発生である。「M570 チャタリング」で検索すると同様の症状多数、自分で内部のスイッチを交換する猛者も見つかったりしたが、実はこの機種、3年無償保証(!)の対象らしく状況によっては新品交換になる場合もあるっぽいので、いつ買ったかははっきり覚えていないがとりあえずサポートへ連絡することにした。

で、結果どうなったかというと、電話と数回のメールのやりとりの後、自分の手元にはM570tという同製品のマイナーチェンジ版トラックボールが届けられた。製造番号の確認により購入3年以内であることが分かり、通常利用による不具合の範疇だと認められたわけである。代替品をさっさとよこして元々の品はルールに従って処分してくださいねというロジクールの太っ腹でスピーディかつ割り切ったサポート姿勢に感服しつつ…本題はこれから。

最近エレコムがトラックボールの新製品を立て続けに出して一部で話題になっているが、実はこの製品群の前モデルが存在していて、ワタシはモデルチェンジ直前の在庫処分時にちゃっかり1つキープしていたのだった。ていねいな対応をしてくれたロジクールには申し訳ないが、せっかくの機会なので今回はこちら、M-XT1URBKを棚の奥から引っ張り出して使ってみることにした。

さてこの機種、M570と比べて若干小ぶりで人差し指左側の「進む」「戻る」ボタンの位置が窮屈に感じるものの、全体的な感触はM570と大差なく、すぐ慣れることができた。トラックボールやチルトホイール、各ボタン類の感触はこちらのほうがいいので、通常利用なら甲乙つけがたいなあと思う。

しかし、細かな設定などをしていくと少々困った問題がひとつ。エレコム製品はマウスアシスタントと呼ばれる自社製ドライバをインストールして各ボタン類に機能(≒キーボード入力)を割り振ることができるのだが、tabキーが「任意キー」のメニュー内に無く、例えば「control+tab」といったキーコンビネーションが設定できないことが発覚!ブラウザ等のアプリケーションのタブ切り替え等にtabキーはよく使うし、そもそも「任意キー」以外のメニュー内にはtabキー入力がしっかり用意されている(=tabキーだけをボタンに割り振るのは問題なくできる)ので、何を考えてこんな仕様にしているのか正直意味不明である。これじゃあ画竜点睛を欠くなあと思い、エレコムのサポートへ要望を上げておいた。…が、ずいぶん前にエレコムのBluetoothマウスを買ったときも同じ問題に当たってぶん投げた記憶が…ハードウェアが良くてもソフトウェアがタコだと商品価値が下がるという現代のものづくりの難しさの一面とか、そういう話なのかもしれない。些細なことだけど。

ともかくこのトラックボール、上記の不満点を除けば今のところ問題なく快適に使えている。新型では左手用や人差し指操作タイプなどちょっと変わったモデルも積極的に展開している同社には、トラックボール愛用者として今後とも期待したい。入力がストレス無くできればそれに越したことはないので(特に人差し指操作タイプはすごく気になってる)。

2015/12/14

ボカロブーム8年とナユタン星人の登場に思う

誰も書かないなら早い者勝ちということで、ナユタン星人さん(以下敬称略)について思うところをつれづれと書く。端的に言って、2015年の夏にナユタン星人がニコ動に現れたのはひとつの事件であり、また、ボカロブームがもたらした必然だとわりと本気で考えてるのだが、本稿ではそれを何とか説明したい。ちょっと手に余りそうで自信がないが。

とある方がナユタン星人を評して、「正解しか選んでいない」と言ったのを覚えている。ここでの正解とはDTMの音源選びから作詞作曲動画制作のメソッド、ニコ動で伸びるためのスタイルの取り方やプロモーション手法など何から何までにあたる。つまりナユタン星人は2015/07/01の登場時から、誤りなく迷いなく突き進んできたように見える。異星人だから当然っちゃ当然だけど。

さてニコ動でのボカロ楽曲ブームは初音ミク登場から数えて8年を超えたわけだが、一種の熱狂から醒めた現在は、2010〜13年頃に持て囃された「いかにもボカロ曲っぽいスタイル」…高速で細かく刻むリズム構造、難解な漢字熟語を多用した内省的自傷的歌詞、四隅が黒っぽくてキネティックタイポグラフィ的なPV等…の氾濫が落ち着いて、制作者はわりと自由にやっているように感じる。その引き換えとして爆発的な再生数を稼ぐ作品は以前のようにはなかなか出てこなくなったのだが、今回はどちらがいいとかそういうレベルの話はしない。重要なのは、そのような状況下でナユタン星人が全く何もないところからじわじわと侵略話題を呼び、結局ほとんどの発表曲がヒットしたという事実である。

実際にナユタン星人の作品を視聴すると、どれも非常に洗練されていて、かつキャラが立っていることが分かる。それは前述した通り誤りの無さ迷いの無さゆえだが、このセンスはどこから出てきたものだろうか。当人が異星からやってきた存在なので全く想像の域を出ないが、音楽好きであるのはもちろん、かなりの確率で相当なニコ厨、それもぼからんを毎週チェックしたりVOCALOIDタグを全て聴き漁るようなボカロ廃であることが理由にあるように思う。その体験を異星人の頭脳はデータベースとして蓄積して分析して、どうすればヒットするかのノウハウとして自らの作品に適用しているのだろう。

ここでワタシが思い出すのは、かつてあったひとつの音楽ムーブメントである。古今東西のレコードを山ほど買い漁り、サンプリングと引用を駆使して新しい作品として発表する…渋谷系と呼ばれるそれは現在ではひとつのジャンルとして認識されているが、ここで強調したいのはいわゆる渋谷系の曲調ではなくて、バックグラウンドとなった巨大な音楽ライブラリの存在と、スタイリッシュなサンプリング・引用という手法である。ナユタン星人にとってのそれらはもしかすると、8年にわたってニコ動に蓄積された膨大なボカロ楽曲群と、性能・機能的に洗練されたDTMという編集ツールに相当するのかもしれない。おそろしいのは、渋谷系的なそのアプローチを2015年のニコ動でやっているのがたったひとり(確認されている限り)で他には誰も見当たらない感じというところだが、本人は異星人なので案外けろっとしてそうである。

最新作でありアルバム「ナユタン星からの物体X」のラストを飾る「ストラトステラ」の歌詞に一言こうある。

「だから、さよなら」


…そういえば「全ての言葉はさよなら」って曲があったなあ、とドキリとしながら、メロウで瑞々しい歌詞を噛み締める。ワタシにはもう遠くなってしまった場所の歌だが、異星人なら時間も距離も問題にさえしないだろう。そしてワタシは天体観測に戻る。異星人の放つ輝きを待つために。



追記:本当は「曲単体もアルバムも短くて潔いのが特徴のひとつ」とか「初音ミク成分が最初から限りなく抜け落ちてる」的なことなども書きたかったけど冗長になるので次の機会に

公開しました> #2015年ボカロ10選 +1

今年はたぶんやらないと言ったな、あれはウソだ。というわけでボカロリスナー年末恒例のボカロ10選をついやってしまった。今回は勢い余って1曲はみ出て合計11作品。

http://www.nicovideo.jp/mylist/54145167

2013年は年末にいろいろあって2014年はほとんどネットから離れていたから、こうやってまとめるのはたぶん3年ぶり。日常的に書いていた楽曲レビューもすっかりご無沙汰しているので思うようにアイディアが出てこず不満の残るリストとコメントになったが、現状ではこれが精一杯。もし期待されていた方がいたとしたら申し訳ない。

与太話はともかくリストを改めて眺めてみると、我ながら振り幅が大きいというか好みがハッキリしてるというか節操がないというか…。ニコ動のボカロ楽曲から大きなトレンドが失われたように見える現在、あえてその中をクロールするボカロリスナーが作品を選ぶとその趣味と嗜好が以前よりも色濃く反映されてしまうのだ、と、もっともらしい言い訳を述べておく。

総評としてはそんな感じで、選曲した各作品についてはマイリストのコメントを参照してください。それとナユタン星人さんについては章をあらためて書く。氏が2015年に現れたことこそが一連の行動の動機なので。



2015/12/25追記:廻転楕円体さんの「収斂する退化」が再投稿されたので「双頭の零」と入れ替え