2017/12/06

宝石の国でいま何が起こっているか

時間が無いので要点だけ書く。シリーズが終わったら改めて稿を起こすかもしれない。

端的に言うと、「宝石の国」は日本のアニメ史的に強烈なインパクトを持っていて、それは、ストーリーとか作品論とかそういう「小さな」レベルでは収まらないように見えるのだ。


ここから先はいつもの通り妄想だらけなので一応改ページ:


日本のアニメ史という話を持ち出すからには、その背景を整理しておく必要がある。大雑把に言って、日本のアニメは「少ない枚数でいかに動いているかのように見せるかをひたすら追求し続けた職人芸の世界」であったように思う。その頂点のひとつがスタジオジブリで、宮崎駿と高畑勲が最前線を退くにあたり制作部門を解体したのは周知の事実。そこで東宝が「君の名は。」を制作する際に、元ジブリのベテランアニメーターを数名「正社員として」迎え入れたという話を聞いた。単なる噂かもしれないが。



一方、「シン・ゴジラ」という大シリーズというか諏訪の御柱祭みたいな存在の映画(シャシン)を撮るにあたって、(詳しい話は知らないけど宮崎駿つながりで紹介されたという)庵野秀明を筆頭としたガチオタ連中が現場でどったんばったん大騒ぎしながら大仕事をやってのけたのは、皆さんご存知の通り。







それとこれは東宝ではなく東映の話で恐縮だが、「ポッピンQ」のあのダンスシーンは2016年時点のもので現在は制作環境・ワークフローごと一新されており、今のプリキュアシリーズEDなどはそれまでの何分の一くらいの工数と時間で作れるようになっているとのこと。





話を戻す。「君の名は。」と「シン・ゴジラ」が大ヒットして、東宝が得たものは興行成績だけであるはずが無いに決まっている。手元にあるのは潤沢な資金、日本アニメの何たるかを知る化け物クラスの腕利きアニメーター、庵野監督や樋口監督らがもたらした「欲しい映像のためなら現実すら歪曲させるのを躊躇しない」ストイックかつファナティックな姿勢と方法論、それを実際に作品として落とし込む基盤となる3DCG制作環境とワークフロー、「ここに投資すれば確実に儲かる」という経営判断、etc.…



「パラダイムシフト」「破壊的イノベーション」というのは、何の前触れもなくいきなりやってくる。だからシフトであり破壊的と言われる。

全てが揃ったら、こうなるに決まってるじゃないか。



「宝石の国」は、今までの手書き2Dアニメともフル3DCGアニメとも違う何かを、我々に現在進行形で見せてくれている。それはまだほとんどの方にとっては感覚的なものかもしれないが、かつて「夢のクレヨン王国」で「映像がピタリと止まって微動だにしない」アナログ手書きセル画からデジタルセル画への移行の衝撃をリアルタイムで目撃した身からすれば、こういう作品を見逃してはいけないと思う。個人的な予想だが、おそらく数年のうちにかなりの数の原画・動画マン、さらには古典的な制作フローしか持っていないアニメスタジオが淘汰されていくだろう。そういうわけでこの作品を見て最もショックを受けているのはおそらく、変化に対しての備えも多様性も無いアニメ業界関係者で、我らが京アニですらそれは例外ではなく、オレンジが次世代のスタジオジブリや京アニと呼ばれる日が来ないとも限らないのだ。



見てるこっちは眺めているだけで済むので無責任だけどね。


2017/12/07追記:こういうアニメが主流になってくると、現行のデジタルTVのフォーマットではスピードがもはや追いついていないようにワタシには見える。2010年代後半において本物のアニメを見たければ、映画館に通うかBlu-rayを買うかしかないだろう(ストリーミング放送は回線速度に左右されやすいので今回は除外)。