2015/07/13

過剰で執拗で容赦のないアニメ〜響け!ユーフォニアム(7:楽器作画の謎)

日本のアニメにコンピューターグラフィックス(CG)が導入されてもうずいぶん経つ。当初はセル画の単純な置き換えだったものが、現在ではCGならではのエフェクトを加えたり2Dと3Dを絶妙にブレンドしたりして、海外とはまた違った映像表現を目指しているのは我々が日々目にしている通り。

それにしてもである。

「響け!ユーフォニアム」の楽器作画の、異様とも言えるほどの乱れの無さは何度見直しても謎としか言いようがない。吹奏楽部全員を俯瞰するモブシーンが3Dでモデリングされて作画に用いられているのはOP中の「音楽室後方からカメラがグルッと回って久美子の瞳にズームインするシーン」で明らかなのだが、どの演奏者がズームされたときでも、担当の楽器に歪みらしい歪みが見られないのだ。また、絵描きの人、フィギュアやドールを弄ったことがある人ならお分かりと思うが、小道具を人物にしっかり持たせるのは意外と難しい。重さが感じられなかったり脇が締まらなかったり…描画や撮影よりセッティングに時間を食われるのは日常茶飯事である。「ユーフォ」の場合は、どの演奏者も楽器を自然に持っている。こういう当たり前の絵面を当たり前に描いてしまうのが京アニのおそろしいところなのだが。

一方、同じ無機物でも道を往く3DCGの自動車は背景の一部と割り切っているせいなのか、どれもやや違和感が残る(これは京アニ制作のアニメに共通する、ちょっとした欠点のひとつ)。また、背景の建物などはほとんどが3DCGではなく手書きのイラストを使用しているようで、このあたりは制作側の割り切りというかポリシーなのかもしれない。

話を戻す。「ユーフォ」で京アニがフル3DCG作画にトライしたという話は聞こえてきていないし、画面を見る限りそういう風にも思えない。しかし描かれる楽器のパースはほとんど常に正確だし、ちょっとした破綻すら見られない。これはどういうことだろう?考えられる作画手法としては、1)実はモブシーンで分かる通り人物含めて全てフル3DCGで作画してました、2)2Dで描いた人物と3DCGの楽器をその都度合わせて微調整しました、3)複雑な楽器も2Dで完璧に描ける超絶原画マンとアニメーターを育てました、くらいなのだが、現実的なのはどう考えても2)である。つまり、各演奏シーンで演奏者がアップになっているときの楽器は、3DCGでモデリングしたものをキャラのポーズやパースに合わせ2Dに変換して、2Dと3Dの違和感が生じないよう注意しながらひとコマずつ置いていってるものと推察される。

いくらデジタルで省力化が可能だとは言え、これは特撮の手法に近い途方も無い手間と言える。

いや、いくらなんでもそれではTVアニメという枠に納められないほど効率が悪すぎる。あれだけ頻出する演奏シーンで馬鹿正直に3DCGの楽器をグルグル回しながら絵を決めていくなんてやっているはずがない。アニメの制作現場に限らずコンピューターのイノベーションは日進月歩である。「ユーフォ」においても、ワタシが想像つかないような革新的な作画環境が開発されているのかもしれず、きっとそれのおかげに違いない。久美子がやさしく抱えるユーフォニアムのやわらかな曲線ときらびやかな光沢を眺めながら、その謎が明かされる日のことを考えたりしている。