2015/08/05

過剰で執拗で容赦のないアニメ〜響け!ユーフォニアム(11:宇治へ行ってちょっと考えた)

劇中で麗奈が18きっぷでどこかへ行きたくなる衝動を語っていたが、似たような気分にあてられて、7月の終わりに京都府宇治市へ行ってきた。今回は、いわゆる「聖地巡礼」とも呼ばれるアニメ等の舞台となった土地での見聞とそのつれづれを、結局長くなってしまった連載のまとめとしてお送りしたい。なお撮って出しの写真はこちらのツイート群をご覧ください(iPhone 5Sのレンズが汚れたまま撮ったのもあるので最後の方ほど見苦しくて恐縮だが)。


いきなり白状すると、長いことアニメファンを自認してきたワタシが「聖地」へ赴くのは初めてだったりする。近年は特に「ガルパン」での大洗町が有名になったが、その気になれば行ける距離にある場所が多数あったにも関わらず、そこまでしようと思わなかったのが正直なところだった。

じゃあなぜ今になってということなんだが、「ユーフォ」における宇治市の背景描写があまりにも「執拗」なので、そのディテールを直接この目で確認したくなったのがひとつ、そして、このアニメがだいたい2015年4月から8月くらいという現実の時間軸に沿って進行していくので、その時期のうちにリアルの宇治へ行けば、劇中で描かれているものごとの理解が深まるのではないかという当てずっぽうな期待がもうひとつ。で、徒歩で移動するのに都合がよい晴天が予想でき、かつ、昼が長く写真を撮れる時間が多くなる季節、そして「屋外で活動してたらうっかり鼻血が出る暑さ」を体験できそうなタイミングを選んだら、梅雨明け後の7月下旬が狙い目という結論になった。原作小説も考慮して、あがた祭や花火大会といった地元のイベントに合わせる手も考えたのだけど。

旅程は、リソース節約のため首都圏から京都への長距離移動に夜行バスを使い、京都市内から宇治、宇治市内の移動はせっかくなので京阪電車の1日フリーきっぷを利用した。夜行バスに関しては道中で充分に眠れるなら快適という経験則に沿っているが、正直あまりオススメしない。逆に、上記の1日フリーきっぷは劇中の各ロケーションを見て回るなら必須だと思った。主人公の久美子をはじめとした登場人物が京阪電車を使う場面がたくさん出てくるので電車移動は合理的ではあるんだが、他の「聖地」がどうかはともかく宇治市内はクルマでは小回りが効かず自転車でもちょっと距離と高低差があって苦労しそうな気がする。あのへんを楽器持って自転車通学するなんて吹奏楽部員は相当な健脚揃いだよなあなんて後で何となく思ったりした。


現地へ着いてから思い出したのだが、宇治は本来、自然があふれ、歴史やお茶や鵜飼いといった観光資源に恵まれた街である。と同時に、宇治市は京阪都市圏のベッドタウンとして機能しているらしい。「ユーフォ」では前者にはほとんど脚光が当てられず、どちらかというと後者の、ありふれた日常生活空間としての宇治が描かれる。が、そのディテールが異様に細かいのは繰り返し述べてきた通り。その理由を考えたが、最終的には「京都アニメーションがある街だから」という他愛のないものに落ち着いた。街を歩いていても「アニメーションでまちおこし」的な看板が立ってるわけでもなく、道ゆく人たちがそれを意識しているわけでもなく、普通に地元産業のひとつとして京アニがある、そんなふうに感じた。そして、京アニの中の人が今まさに生活しているそのような街を自らが手がけるアニメの舞台に据えたら、そりゃあ解像度は上がりまくるけど見せたくないものは描かなかったりボカしたりするでしょ、とも思った。あの背景描写の細かさと被写界深度の浅さは演出手法のひとつではあるが、きっと一種のプライドのあらわれと照れ隠しでもあるのだろう。


さてそのディテールは、劇中その他の情報を参考にしながら宇治の街をくまなく歩くことで本当に多くの風景として発見できた。帰宅してから録画を見直して「ここ通った!」と気づく場所も多く、事前に下調べをあまりしなかったことが逆にクエストっぽい感覚を覚えさせてくれたことはうれしい誤算だった(大きな鳥が飛んでるだけでOPで見たと感激するレベル)。ただ、夏の盛りにいい歳こいたおっさんが汗だくで街をとぼとぼと放浪している構図はいかにも怪しく、そういう意味では地元民に偽装するか観光と割り切ってしっかり準備してピンポイントで行ったほうがよいようにも思う。とにかく「聖地」と呼ぶには日常的すぎる場所が劇中のロケーションとして広範囲に使われており、そこをわざわざ見に行くのは時間もかかるし地元の方々からすれば変としか言いようがないからである(まあ後者は作品の認知度が上がれば自然と解消するだろうが)。それと宇治は山坂が多くて歩くと想像以上に疲れるのは強調しておきたい。例えば大吉山は市街地からびっくりするくらい身近な場所にあるけど、いざ登ってみると長くて急なつづれ折りで足を取られそうになる。誰かさんみたいにハイヒール的な靴では確かに怪我しそうなのは間違いないと釘を刺しておこう。

街を巡る道中の昼下がり、半分ぼーっとしながら郊外を歩いていると、部活か何かから帰る途中らしい制服の高校生集団とすれ違った。現実とアニメが割とごっちゃになって現実の彼ら彼女たちがアニメに引っ張られて妙に子供っぽく見えたが、暑さと疲労で自分の体力もついに尽きたか、それとも夢見心地のままこの街に埋もれてしまうか、こういうとき久美子なら死んでしまってもいいと表現するかもな、などとぼんやり思った。

宇治にはまた行くことにする。見ていないところ、知りたいことがまだまだたくさんあるので。