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2013/11/04

ボカロP最弱セットMac版

「ボカロビギナーズ!vol.2」のお手伝いをしていたときに「次やるんならMacに関する情報も必要なんじゃね」と(例によって軽い思いつきで)話していて、似たようなことをずっとTwitterでも呟いてたんだが、藤本健さんによるPiapro StudioとGarageBandの解説記事とその反応を見て、自分なりにとりあえずまとめておくことにした。

「最弱」としたのは「ワタシみたいな楽器をロクに触ったことがない超初心者でも最低限これだけ揃えれば1台のMac内でとりあえず音が出せてボカロ曲がつくれるっぽいところまで辿り着ける環境を構築する」ことを目標と定めたためで、とどのつまりは初期費用を徹底的にケチりたいからである。ハードウェア・ソフトウェアに関するその後のステップアップは、実際に音を出して慣れてから各自で検討しても遅くないと思うし、結果的に財布の痛みも少ない。なお今回は自分がよく知らない分野へ言及しているため普段以上に加筆訂正等を行うはずなので、あらかじめご了承いただきたい。

さて本題。まずは必要なハードウェア:
Macは後述するGarageBand(=iLife '11)がプレインストールされているものであれば新品でも中古でもアウトレットでも何でもいいのだが、最新版のOSであるMarvericksにアップグレードすると同じく最新版のGarageBandが無料で入手できるので、結局は予算と他の用途を考慮して選ぶのがよかろう。現時点ではUSB 3.0ポートを搭載しているものであれば問題ないと思う。

内蔵メモリの量は他のスペックよりも強調しておきたい。経験的に言って、OS Xはメモリが多ければ多いほどよい。ワタシが使っているMac mini (Early 2009)EFI ファームウエア・アップデート 1.2以降で最大8GBを認識するので実際にそうしているが、動画制作など他の作業も考えると、もっと多くて損はしない。個人的には他の予算を削ってでも優先すべきだと思う。

ヘッドホンは「最低限」という括りなので悩みどころだが、Mac内蔵のスピーカーでは心許ないし大っぴらに音を出せない場合も考慮して、やはりそれなりの品質のものがほしい。超定番のソニーMDR-CD900STはステレオ標準プラグなので、MDR-7506などステレオミニプラグに対応したもののほうが、面倒が少なく他の用途にも気軽に使えていいかもしれない。なお、ワタシが使用しているMDR-V6は、Mac miniのヘッドホン出力ポートへ深く刺さらず、プラグ根元のネジ部分を金属ヤスリで削らなくてはならなかった。もちろんソニーにこだわる必要は全くなく、モニター用として定評のあるものを広く検討してほしい

その他のハード、例えば外部オーディオインターフェースやMIDIキーボード、モニタースピーカーなどは、あれば便利で品質の向上も見込めるが無くても何とかなるので、今回は触れない。ただし、MIDIキーボードがあると入力の手間が減るのは確かなので、余裕があればコルグのnanoシリーズやmicroシリーズXkeyなど、USBバスパワーで動作するものを探すといいだろう。

次に、必要なソフトウェア:
  • GarageBand(最新版を強く推奨)
Apple純正の、どちらかと言えばループシーケンサに近いと言われているDAW。iLifeという名称で他の純正ソフトウェア群とともにMacへプレインストールされていることが多い。前述した通り、MarvericksにアップグレードすることでLogic Pro Xに準じたUIになった最新版が無料で入手できるが、ドラムパターンを簡単な操作で自動生成できるDrummer機能が使えるという一点だけでも選ぶ価値があると思う。なおアプリ内課金でDrummerの種類を増やすことができる(2013年11月現在¥500)。



そして、用意するボカロエディタとライブラリは大きく分けて3つ:
上記は予算と使用したいライブラリで選ぶ。

「とにかくボカロ曲をつくれるっぽいところまで辿り着きたい」けど予算が無いならボカロではないがUTAU-Synthの一択UTAUライブラリは山ほどあるなかからライセンスに注意しつつ好みで選べばよろしい
(2013/11/24追記:UTAU音源探しはUtatopia * 音源検索所もオススメしたい)

Piapro Studioはバージョン1.1.0からGarageBand内でAudio Unit (AU)プラグインとして使用できるようになった。ミクV3とKAITO V3のパッケージにはStudio One Artist Piapro EditionやPreSonusソフト音源が同梱されているので、何かとお得ではある。現状では最も無難な選択かもしれない。ただし、発表されてから日が浅く頻繁にアップデートされているので、制作途中の定期的な保存と情報のこまめなチェックは常に心がけたい。また、2013年11月の時点ではミクV3とKAITO V3以外のライブラリには対応していないことに注意。



ボカキューNEOは、ミクとKAITOも含めたV3ボカロライブラリをMacで使いたいときのもうひとつの選択肢だが、必然的にMac版Cubase 7のどれかと組合せなくてはならない。また、使いたいライブラリがMacに対応している必要がある。それ以外の場合はBoot Campや仮想マシン等でWindows環境を用意するか、Windowsマシンを別途調達すべきだろう。もちろん後者へ進むに従って投資額が増える。ヤマハ純正のスタンドアロン版ボカロエディタがあれば選択の幅がさらに広がるので、引き続き期待したい。同様にCeVIOのMac対応も望まれるところである。





最後は、個人的にプラスアルファで揃えておいた方がいいと思うもの:
Audacityは汎用的な音の編集加工ソフトで、触っているだけでも何かと勉強になる。プラグイン等を追加することで様々な用途に使えるので、常備しておくとよい。

iOS版GarageBandはiCloud経由でMac版と連携できるが、各種のスマート楽器機能を使うことで打ち込みの手間をかなり軽減できる。こちらも条件つきで無料なので、iPhone・iPadを使っている方は導入することをオススメしたい。余談だが、iOS用音楽アプリには気の利いたものがたくさんあるので、時間があればいろいろ試すと楽しめると思う。

MainStage 3は本来の用途とは別に「GarageBandで使えるLogicと同等の音源が¥3,000で買える」のがポイント。当然、Drummer機能にも適用することができる。将来 GarageBand以外のDAWへステップアップした場合は無駄になるが、価格を考えると許容範囲内だろう。

各種参考書は実際に手に取って自分で選んでほしいところだが、自分の知っている限りでは冒頭の「ボカロビギナーズ!vol.2」か「UTAUパーフェクトマスター」のCHAPTER.05が手軽だと思う。前者はどちらかと言うとボカロ文化を背景にした同人音楽趣味の手引書、後者は思い切って超簡略化した作曲マニュアルである。これらに加えて、コード進行の参考書があるとさらに良いと思う。逆に、作詞の技術について書かれた本がほとんど見当たらないのは不思議としか言いようがないが、無いものはどうしようもないので各自で調べてほしい。

外付けハードディスクは、実際に制作を始めると忘れてしまいがちなのであえて書いておく。OS XにはTimeMachineという自動バックアップ機能があり、万が一の際でも外付けハードディスクのバックアップデータから丸ごと元に戻せるのだが、最低限、各種データだけでも定期的にバックアップしておいたほうがよい。失われて困るのは第一にデータ、次に作業環境である。なお、現時点ではUSB 3.0接続のものを選んでおくのが無難だと思う。NASはデータの大きさを考えると転送速度で不利だし、Thunderbolt接続のものは高すぎる。

端的に書くつもりがずいぶん長くなってしまった。投資額でまとめると以下の通り。
  • 最弱セット基本メニュー:USB 3.0ポートを搭載したMac + できるだけ多くの内蔵メモリ + モニター用途に適したヘッドホン( + USBバスパワー動作のMIDIキーボード)
  • 最弱セット松:Cubase 7の廉価版 + ボカキューNEO + Macに対応したV3ボカロライブラリ
  • 最弱セット竹:GarageBand最新版 + 初音ミクV3またはKAITO V3( + MainStage 3 + Drummer追加)
  • 最弱セット梅:GarageBand最新版 + UTAU-Synth( + MainStage 3)
予算的には、ハードウェアの費用プラス0〜数万円の範囲で納まる。あとは時間と情熱と根気だけである。もっとも、それがいちばんリソース不足に陥りやすいのが悩みどころなのだが。
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