2015年に入りDTM環境は一層の多様化を見せ、また、ボーカロイドライブラリ制作各社がV4へのシフトを鮮明化するに至り、ユーザーとしても選択の幅の広さに悩まされることになった。今回の記事はここを中心に書く。
一方、Macは前の記事を書いてからハードが一通り世代交代し、OSがEl Capitanにアップデートしたが、極端に大きな進化はしていない。従って、今回の記事でも「USB3.0ポートが装備されたMacにできるだけたくさんメモリを積むのがオススメ」というスタンスに変化は無く、以降、Mac本体については触れない。
さて前回の記事のまとめに書いた
- 最弱セット松:Cubase 7の廉価版 + ボカキューNEO + Macに対応したV3ボカロライブラリ
- 最弱セット竹:GarageBand最新版 + 初音ミクV3またはKAITO V3( + MainStage 3 + Drummer追加)
- 最弱セット梅:GarageBand最新版 + UTAU-Synth( + MainStage 3)
Cubaseは前回の記事から8.5にアップデートされたが、廉価版(あるいはオーディオインターフェース等のバンドル版)としてCubase Element 8がラインナップされているので、「最弱」としてはこれを軸に考える。注目すべきは体験版の存在で、じゃあこれにボカキューNEOとV3かV4のボカロライブラリの体験版が揃えば初期費用ゼロでボカロ作曲がとりあえず試せるんじゃね?…と思ったら、ちゃんと用意してくれていた。えらいぞヤマハ。というわけで、まずはこれを試してみるのを推奨。ボカロライブラリ体験版ならヤマハ以外の他社でも出ているはずなので、各自探してみてほしい(代表的なところでAHS社の体験版ラインナップへのリンクを貼っておく)。あ、ライブラリがちゃんとMacに対応してるかは確認してね。
と、ここで気になるのがPiapro Studioが使えるクリプトンボカロ。体験版が用意されているのは現時点でV3のMEIKOとV4Xの巡音ルカ、英語だけだがV3の初音ミクなので、好みで選ぶといいだろう(個人的には容量デカいけどV4Xの新機能が使えるルカさんオススメ)。いずれにせよ、これらの体験版とGarageBandを組合わせればやっぱり初期費用ゼロでボカロ作曲が試せる。なおPiapro Studioは他社製ライブラリも使えるので、Cubase/ボカキューNEOとGarageBand(≒Logic Pro X)/Piapro Studioを比較しながらあれこれ使い込んでみるのもいいかもしれない。
UTAU-Synthは現状維持ながら継続してリリースされているのが素晴らしい。前回の記事を書いた時期から比べるとUTAUライブラリの進歩と充実は目を見張るものがあるので、ニコ動などで音源を聴き比べて面白そうなものを使ってみるといいだろう。もちろんこれも基本的に初期費用ゼロ。それと上記の2つと違ってボーカルエディタが独立しているのでDAWが自由に選べるのは隠れたアドバンテージかもしれない。
さて…新しいアプローチで歌声合成業界(?)に参入してきたCeVIOだが、現時点ではMacでネイティブに動作するものは存在しない。従って、使いたければBoot CampかVMware fusionかParallels Desktopか…ってもうこれ初心者向けじゃないので除外。素直にWindowsマシンを用意してください。残念…。
周辺機器については以前と同じ。しっかりとしたモニター用ヘッドホン、あると便利なUSBバスパワー動作のMIDIキーボード、バックアップ用外付けハードディスク、ほしい人はオーディオインターフェース…等々。特にヘッドホンは重要だと思うし長く使うものなのでじっくり選んでほしい。
さて、前回から特筆すべき事柄として、ビギナー向けボカロ作曲用参考書の決定版とも言えるアンメルツPの「ボカロビギナーズ」が一般書籍として発売されたことが挙げられる。とりあえず手元に置いといて損はないと思うので、作曲のお供にどうぞ。
ということで、年末年始休みの間にボカロ作曲を初期費用ゼロでやってみて、気に入ったらお年玉で買える範囲のプランを再考してみた。最弱セット松で数万、梅なら周辺機器関係の出費程度で抑えられる。「とにかく唄わせたい」という意思が先なら、DTM環境を整えるのは後からでも十分間に合うのだ。ご検討あれ。
追伸:クリプトン社は鏡音リン・レンV4Xの体験版を早急に用意すべきだと強調しておく。こういうときにこそオススメしたいのに…。
さらに追伸:2016/01/21にアップルはiOS向けアプリのGarageBandをアップデートし、同時にMusic Memosという「鼻歌作曲ソフト」をリリースした。前者には、強化されたLoop機能とMac版GarageBand / Logic Pro Xに搭載されているDrummer機能が追加され、DTM環境としてはこれひとつでかなりのところまで追い込めるようなところまで来た。また、Music Memosは先述の通り鼻歌などの音源を録音するとそれに見合ったコードを付与しギターとドラムの簡単な演奏までつけてくれるというもので、作曲やカバーの際に威力を発揮するだろう。というか、Music Memos / GarageBandとiOS版VOCALOIDエディタがあれば、とりあえずiPhone / iPadでボカロ作曲できてしまうので、既にiOS機器を持っている人にとっては実はダークホース的にオススメかもしれない(特にiPad)。