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2013/03/30

総当たり的ボカロ聴き専マニュアル:取捨選択編

前回は「総当たり的アプローチでもボカロ曲の全てを観測することはできないので何かを切り捨てなければならず、そのため一種の諦念と覚悟が必要である」というようなことを書きました。ではさっそく、切り捨て対象となる要素を実際に挙げて話を進めていきます。

切り捨てとは、設定された基準を満たさないものは取り上げないということです。つまり、どのように基準を設定するかが重要となります。一方、ボカロ曲を構成する要素は多岐にわたります。例えば以下のようなものです。
  • 発表日時
  • 種類
    (オリジナル、カバー、その他)
  • 再生時間
  • 発表者・制作者
    (作曲、作詞、編曲、演奏、マスタリング、イラスト、動画制作、その他)
  • ボーカロイドライブラリ
    (UTAUや人力ボーカロイド、その他も含む)
  • ジャンルとタグ
  • 作品の構成要素
    (曲、詞、アレンジ、音質、動画、歌いやすさ、その他)
  • 数字
    (再生・コメント・マイリスト数、Twitterのリツイート・fav数、その他)
  • 派生作品
    (歌ってみた、踊ってみた、MMD、その他)
  • 情報源
    (友人や知り合い、いわゆるキュレーター、レコメンデーションサービスその他)
ワタシが言う総当たり的アプローチとは、上記のような各要素のどこかを切り崩していって最終的に残った部分を基準として、ボカロ曲を定点観測し続けるという意味です。切り崩し方は可処分時間や自分の感覚と相談して自由に決めてください。また、(特に精神的な)負担が生じるのを避けるため、状況に応じてフレキシブルに変更してください。

さて各要素を順に見ていきます。
  • 発表日時
    基本的かつ厳密な意味での総当たり的アプローチに大きく関係します。ある時点からの新着ボカロ曲を毎日、あるいは一定の期間内に投稿された作品を片っ端からチェックしていくだけなので、誰でも今すぐに始めることができます。しかし前回述べた通り、事実上不可能です…と言いながら、それを敢行している方がTwitterを眺めただけでも5人くらいは存在します。そのような鉄人めいた方々はさておき、とりあえずは、平日の21〜23時までとか休日だけといった短い範囲の新着ボカロ曲を対象とするのが無難です。余談ですが、日刊VOCALOID系動画カタログが更新されなくなったのは本当に残念です。それと、ワタシはニコ動での新着ボカロ曲を以下のようなキーワードで検索しており、時間的な余裕があったときは検索結果をほとんど全てチェックしていました。
    VOCALOID OR UTAU オリジナル -歌っ -踊っ -カバー -ランキング -東方 -NNI -ニコカラ
  • 種類
    端的にいえば、ボカロオリジナル曲だけにするか、各種のカバー曲やRemixも含めるかということです。ワタシは上記の通り基本的にカバー曲を除外していますが、Remixは大好物なので除外していません。
  • 再生時間
    これは作品そのものの長さを基準にするのではなく、「聴き始めた曲は最後まで再生する」か「ピンと来なければ次に進む」のどちらを選択するかという意味です。裏返せば、数と内容のどちらを諦めるか、です。制作者が作品の全てを鑑賞してほしいと思っているのは当然ですので悩ましい問題ですが、ワタシはチェック数を少しでも増やすため「ピンと来なければ先に進む」メソッドを選択していて、ひどいときには開始10秒で聴くのを止めることさえしています。
  • 発表者・制作者
    これは一般的なライトユーザーの鑑賞スタイルでしょう。誰それが関わった作品は全てチェックするという基準です。しかし個人が手がける作品の数はたかが知れているので、総当たりとは呼べません。あくまでも他の基準の補正とすべきでしょう。
  • ボーカロイドライブラリ
    これも総当たりとは呼びづらいと思われますが、ひとつのライブラリを追い続けるのは基準として有りだと考えています。これにより、ライブラリの個性、具体的には作品や制作者、ファンの傾向が見えてくるからです。ひとつではなく複数のライブラリを対象とするのもいいでしょう。ただ、ミクが突出している現状ではミクかそれ以外かの二択に陥りがちになるという問題は残るので、他の基準を設けて補正するのがオススメです。ちなみにワタシは特定のライブラリを追いかけることはしていません。
  • ジャンルとタグ
    音楽のジャンルは非常に多いのですが、ボカロ曲も同様の状態にあって古今東西あらゆるジャンルが混在しています。その中から特定のジャンルを取り出すのは、一般的な捉え方として総当たりとは呼びづらくなりますので、他の基準の補正にとどめておくのがいいでしょう。一方、ジャンルとは呼べないユニークなタグを追いかけるのは、あるテーマに沿った評価につながるので面白いアプローチと言えます。個人的には「ボーカロイド食堂入りタグにハズレなし」説を提唱しているのですが、その度に苦笑いされます。
  • 作品の構成要素
    ここは、個人的に重要な基準のひとつと考えています。ボカロ曲が、初心者からプロまでの各層に属する制作者によって自由に公開されることを考慮すれば、既存の音楽産業によって育まれた自分の価値観を見直す必要が出てきます。ワタシはいままでの好みをいったん捨てて、メロディだけを注目するようにしました。明らかにプアな音質でもメロディが気に入れば評価しますし、逆に、詞や演奏やアレンジや音質や動画がどんなに良くても、メロディが退屈であれば「ピンと来なければ先に進む」メソッドを発動します。つまり、ワタシの総当たり的アプローチの基準はメロディで、極端な話、それ以外の要素はほとんど切り捨てているのが現状です。
  • 数字
    最も分かりやすい基準は各種の数字です。これを用いる場合、簡単にいえば○○以上●●未満というデジタルな境界が発生するので、慎重に吟味しないといけません。楽な方法だと他人に基準設定を任せてしまう、例えば、週刊日刊のVOCALOIDランキングを追い続けることです。安易に思われるかもしれませんが、継続すればするほど総当たり的なアプローチに近づきます。他にも様々なランキングやサービスが存在しますし、自分の責任で決めてしまってもいいでしょう。ちなみに、現在ワタシは主に時間的な都合で、観測時にマイリスト数が一定数未満の作品は聴くのを控えています。
  • 派生作品
    説明が難しいのですが、例えば、歌ってみたで人気のある曲を全て聴く、MMD杯で使われた曲を全て聴く、といった、ボカロ曲から派生した作品を遡る方法です。もちろんこれだけでは偏りが出るのですが、他の基準の補正方法としては思ったよりも機能するんじゃないかと予想しています。
  • 情報源
    これはレコメンドやキュレーションとも呼ばれるようですが、簡単にいえば、友人その他を含めた誰かが提供してくれた情報をひたすら追いかけるという基準です。Twitterにある各種の新曲botや、厳密な意味での総当たり的アプローチを敢行している方々のツイートを全て拾う等の方法も考えられますが、できれば複数の情報源を確保したほうがいいでしょう。ワタシは以前2chのボカロ本スレに常駐していたので、要約たんにはずいぶんお世話になりました。現在はボカロノビスbotツイートをRSSで購読していますが、どちらもかなり強力なレコメンド性能を備えているのでオススメです。あ、ONETOPIDAIMもよろしくお願いします。
基準となる要素は他にもあると思いますが、長くなりましたので省略します。ご参考までに、上記にそって自分の基準をまとめておきます。大まかに言うと、新作のうち観測時点で一定数のマイリスト数以上のものを対象に、「ピンと来なければ先に進む」メソッドを用いて聴き進めています。状況によりますが、だいたい2〜3時間程度で収まるかもしれません。
  • 発表日時
    基本的に毎日の新作チェックを継続中
  • 種類
    オリジナル曲中心でRemixも、カバー曲は基本的に除外
  • 再生時間
    「ピンと来なければ先に進む」メソッドを採用
  • 発表者・制作者
    特に制限は設けていないが、何名かの制作者の作品は必ずチェック
  • ボーカロイドライブラリ
    特に制限せず
  • ジャンルとタグ
    特に制限せず
  • 作品の構成要素
    メロディ優先(ワタシの最も重要な判断基準で、最近は当たり判定を厳しくしている)
  • 数字
    観測時点でマイリストが一定数未満の作品は聴くのを控えている
  • 派生作品
    特に制限せず、話題になったものを聴く程度
  • 情報源
    以前はTwitterのTLで見かけたものを全てチェックしていたが、最近はボカロノビスbotとボーカロイド楽曲紹介ONETOPIで補正する程度
次回は、総当り的アプローチの結果をどのように記録するかについて話をする予定です。
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