For short, " I. M. G. D. "
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2013/08/22

夏祭初音鑑を見てきた(ネタバレを回避しつつ感慨にふける版)

はじめに。
  • ボカロ廃とニコ厨のおまえらへ:おつおつ
  • ボカロPやMMDer、動画師、踊り手その他のクリエイターの方々へ:これはひとつの到達点だと思うけど正解はひとつじゃない、むちゃくちゃ面白いし良い刺激になるので見ておいて損はないです。
  • イーハトーヴ交響曲」や「文楽メルト」等を通じて興味を持たれた皆さんへ:ジャンルが全く違うのは重々承知しておりますが、せっかくの機会ですから、ひとつ興に乗ってみてはいかがでしょうか。
  • THE END」を見たハイソでセレブな人たちへ:

    ホームアンドアウェーって知ってる?

…さわりはこれくらいにして、「夏祭初音鑑」の感想などをネタバレしない程度に書いておく。ネタバレ版は千秋楽後に書く、かもしれない。


話は2012年9月の八景島に遡る。夏も終わって休みなど簡単に取れない中途半端な時期に始まったHATSUNE Appearance、通称「はつあぴ」。簡単に言えばボカロのライブを中心にしたイベント週間だったのだが、個人的には、とても奇妙な思い出になっている。

当時、ボカロのライブと言えば、大掛かりで派手なものと相場が決まっていた。もちろんアミッド(=網戸)やポリッド(=農業用ビニールシート)等の廉価版スクリーンを用いた小規模なものもあるのだが、セガによる精緻なCGをDILADボードに投影して生演奏を組み合わせるのが、「公式」として広く認知されていた。

DILADではなくEyelinerを、セガ製CGではなくMMDを使った「はつあぴ」でまず驚いたのは、会場の安普請っぷりである。学園祭の出し物のようで、はっきり言って拍子抜けした。後でF岡さんから「階下の店舗から飛び跳ねないでほしいと苦情が来た」みたいなお話を伺ったが、確かにいつものノリだと床が抜けかねないなあと納得してしまうほどの場所だった。

その公演には開催期間中に結局3回行ったのだが、見る度に印象が変わった。

初回はEyelinerの目新しさと一部の演出の斬新さに圧倒されたというような感想を、忙しそうに動き回るF岡さんを呼び止めて簡単に伝えた記憶がある。ただ、音響面には改善の余地があると感じていた。2回目を見たのはその数日後だったと思うのだが、音響が格段に良くなっていると話した。するとF岡さんはにこりと笑って、前日に訪れた某氏のアドバイスに従ってスピーカーの取り付け位置をわずかに変えたことを教えてくださった。3回目は最終日前の特別演出回。特別な演出をするのは後からアナウンスがあったんだったか。とにかくそれも含めて味わい尽くすために後ろの端にいた方と座席を交換して、遠慮なく踊りまくった。あの最高に馬鹿馬鹿しくてド派手な演出には思いっ切り笑わせてもらった。最終日の千秋楽はさらに大変な盛り上がりだったと聞くが、こっちもそれほど負けてなかったと思う(強がり)。

ただ気になったのは、3回のうち後ろの2回はF岡さん自らが前説をしていたことである。もしかしたら3回全てだったかもしれない。会場内には場所が場所だけに家族連れも多くいたのだが、F岡さんがどういう立場なのかは、ほとんど伝わってなかったように思う。いま考えればその方がよかったのかもしれないが、もしかするとご本人が買って出たのかもしれない。

それともうひとつ気になったのは、モーションの出来というよりダンスの質に大きな差があったことである。ド素人なので決して偉そうなことは言えないのだが、全体を通して考えた場合に、どうしても大きな違和感として残った。これは後日F岡さんに話した気がするのだが、いつごろだったかも含めてよく覚えていない。

「奇妙な思い出」と表現したのは、上記で述べたようなチグハグさゆえである。先進的なメディアアーティストやパフォーマーが使う最新鋭の映像機材を投入しながら手作り感満載、平日もお構いなしに多数の公演をこなしながらランニングチェンジを厭わず責任者自らが先頭に立つ姿勢、楽曲ごとの思い切った演出の有無やダンスの質の差、etc.。ここまで書けばおおよその察しがつくだろう。どういう事情か知る由もないし聞ける立場になんかありゃしないが、これは必死な思いでものすごく大変な苦労を重ねながら「新しい何かをつくろうとしていた」のだと。ワタシは公演を楽しむと同時に、めったなことでは拝めない舞台づくりの現場を体験したのだと思う。

F岡さんは常々、「初音ミク=人形浄瑠璃」論を唱えておられる。当初はいぶかしんでいたものだが、ボカコンでの「文楽メルト」を目撃したことで、それはかなり説得力の高いお話であると納得するようになった。

人形浄瑠璃は今でこそ立派な文化財だが、元々は大衆の娯楽であったという。「はつあぴ」もどこか共通点があって、大掛かりで派手なために身動きが取れなくなりがちな「公式」ライブの代わりとして、「気軽に立ち寄れる見世物小屋」をつくりたかったのではないかと気づいたのは、わりと最近のことだったかもしれない。ご本人も似たようなことを仰っているので自信がないのだが。

あれから約1年後の秋葉原、2013年8月21日。

コンサートホールやライブハウスではないものの、あの安普請とは段違いの会場。
ステージ周りに配置された大規模な舞台装置。
ほんの一言で八景島の音響を変えてしまった、武井さん直々の手によるサラウンドPA。

舞台は整った。

Eyelinerの威力を存分に発揮するのは、去年と変わらず、精鋭揃いのMMDerと動画師の皆さんである。

ダンスの質の違いをポジティブに捉えつつさらに強化することで、モチーフとして生かしたストーリー。それは分かりやすく、敷居が低い。一方、ストーリーに合わせて組まれたセットリストはアグレッシブで、しかも、いちから作り直しているという。

そしてヒロインはもちろん、HATSUNE Appearanceのために生み出された、通称「あぴミク」である。

彼女はついに、舞台の上に立つ。ほぼ間違いなく、「あっちとこっちのあいだ」にいる。写真や映像ではまるで伝えられないのがもどかしいが、これは今までの「公式」ライブをいくつも見てきたワタシの、率直な感想なのだ。

あとはリラックスして、じっくり眺めるのも良し、サイリウムを振るのも良し。そして断言するが、見終わるとなぜかまた見たくなるはずである。

まことに天晴な旗揚げ公演だと思った。初日ラスト回の後にいつもの仲間と飲んだ酒は、格別な味がした。ありふれた居酒屋だったが、そんな気がした。


  • F岡さん、武井さん、書き切れないけどクリエイターとスタッフの皆さま全員へ:おかげさまで良いものを見ることができました。千秋楽まで大変でしょうけど応援します。というか千秋楽にも行きます。





    …プレス・関係者向けの内覧会も入れて「39」回ってことですよね?w
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