特別上映イベントのチケットが当選したときも嬉しさがこみあげた。
だが2024/03/16のイベント当日、開演時刻が近づくにつれてあまり経験したことがない緊張感に襲われて、ほぼ予定時間きっかりに前触れなく唐突に始まった1~2話は誰が何と言おうと「ユーフォ」そのものだったのだが…
見終わって舞台挨拶終了後に呆然としたまま語る言葉がまとまらず24時間ほど経過して、ようやくこうして感想めいたテキストをしたためる気力が戻ってきた。
今回のユーフォ3はいよいよヤバい
端的に言えばそういうことである。
以下、上映後の舞台挨拶で黒沢ともよ嬢ほかの皆さんからネタバレ厳禁のお達しがあったので粛々と従いながら、現時点で思うところをいくつかメモ書きしておく。
ワタシは原作小説を全て読んでいるので物語の結末まで知っているんだが、じゃあその「決意の最終楽章」が単純にアニメ化されたというなら、別にここまで考え込むことは無かったと思う。
また、(現時点では1クールでやるということなので)原作小説のボリュームを描き切るなら最初の1〜2回は「ユーフォ2」の第一回のように特別編成でもして連続1時間でやるんかな、などとも思っていた。
だがOP/EDを除いた本編が時間的には行儀良く正味23分程度×2で終わったところで我に返って、自分がアンコン編の釜屋つばめちゃんみたいな状態になってたことに気づいた。
「ユーフォ3」を見てると文字通り息継ぎすることができない。
その理由はいくらでも挙げられるけどネタバレになるので今は控える。最近の流行りのアニメみたいに異能力バトルが勃発してド派手で立体的なアクションシーンがあるわけはなく、モチーフ的にはむしろ淡々としてるはずなんだが…むしろ息継ぎどころか、ごくりと息を呑むことさえ度々あった。
思えば久美子1年生編のはじまり、TVシリーズの1期とその総集編映画「北宇治高校吹奏楽部へようこそ」は、初々しさや楽天主義から始まって、ほんの少しのほろ苦さと特別な高揚感を伴って、まっすぐ駆け抜ける爽やかさがあった。
1年生編後半、TVシリーズ2期「ユーフォ2」と「届けたいメロディ」は、エピソードの主人公がときに入れ替わりながら、黄前久美子というひとりのユーフォニアム奏者が誕生するさまが描かれたと言っていい。
久美子2年生編、今回は「誓いのフィナーレ」とアンコン編を本編として「リズと青い鳥」はスピンオフと位置づけるけれども…いわば中間管理職的な役回りの久美子が、めんどくさい上級生&下級生に囲まれて奔走する群像劇と捉えることが可能だろう。
では今回の「ユーフォ3」はというと、部長になった久美子と副部長の秀一、ドラムメジャーの麗奈によるトロイカ体制(って若い人には通じんかもしれんねごめん)で、北宇治高校吹奏楽部が悲願の全国大会金賞を目指す話なのは、ネタバレでも何でもなくその通りである。
1年生時代に無名校が全国へいきなり出場という快挙を成し遂げ、2年生時代こそ関西大会金賞止まりだったが北宇治が演奏した「リズと青い鳥」は関係者の間で語り草となり…(というのは個人的な妄想だけれども)
そんな状況なので当然、「結果」を期待される部をまとめるリーダーにかかる重圧とそのめんどくささを正面から描いたら、ああいう息が詰まるような緊張感になるんだろう。
さらにはアンコン編のエピローグで現れた黒江真由嬢の存在が、部長という立場とは別の久美子の(以下ネタバレしそうになったのでばっさり削除)
息継ぎ可能というかホッとするのは秀一と麗奈との会話シーンが多いことだろうか。ここは最初から追いかけている方なら感無量になること請け合いだし、今から追いかける方は(もちろん今まで追いかけてきた皆さんも)ぜひ、これはもう本当にお願いしますけれども、これまでアニメ化されてきたTVシリーズと劇場版とリズと青い鳥とせっかくなのでオーディオドラマの「きらめきパッセージ」を全て味わってから見てほしい。なぜここでこんなことを言うのか、こんな行動をするのか、という引用めいたセリフやカットが、これでもかと詰め込まれているので。さらに実はおっかねえことに(以下ネタバレにつき削除)
やや傍にそれるかもしれないが、その引用めいたセリフやカットは過去のシリーズから単純に持ってきているものもあれば、「あのときはおそらくこうだったはず」的なものもさりげなく含まれるようである。自然な日常描写は京都アニメーションの真骨頂だが、難しいカットを飄々と繰り出してくるさまは、「ユーフォ3」の見どころのひとつと断言できるし、昨今のアニメ製作環境において多くの現場から伝え聞こえてくる基礎技術の不在/喪失に対する、京アニからの160km/h超え豪速球というかずしりと重いパンチの連続というかフェルンが息もつかせぬ勢いで繰り出す一般攻撃魔法というか…これはもう実際に見てもらうしかなかろう。アニメを解像度高く見てる人ほどショックは大きいと想像する。
いま書ける内容としてはこのくらいだと思う。黒沢ともよ嬢をはじめ舞台挨拶に立たれた声優の皆さんが口々にアフレコ現場のぜいたくさを語っていたが、それは京アニ、「『響け!』製作委員会2024」がこの作品に対して並々ならぬリソースを注いでいる証拠である。2024年春アニメは話題作が目白押しのなか、いろいろあったけど結局9年続いた「高校の吹奏楽部という部活の努力と友情と勝利と挫折と感情の物語」の続編を皆さんがどのように受け止めるのか、2024/04/07のその日を待つことにする。
ちなみに舞台挨拶で述べられた通り、偶然にも9年前の4月7日にTVシリーズ1期第一回が放映されたそうなので、縁は奇なもの、思えば遠くへ来たもんだ、などと考えたりもしている。
そして、次の曲が始まるのです。