2019/04/29

「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」レビュー:音楽編(超ネタバレあり)

「劇場版 響け!ユーフォニアム~誓いのフィナーレ~」レビューシリーズの最後は、総論作画編に続いて音楽編。これまでの記事ではいささかシビアな見方をしてきたが、音楽は、これまでと同様の上質さでもって我々を楽しませてくれたと思う。

「ユーフォ」シリーズは、極めてすぐれた音楽映画である。

「誓いのフィナーレ」のレビューを3本立てで書くと決めたのは、実は何は無くともこの話をしたかったからである。


今回は間違いなくネタバレするので例によって改行を多めに:






あのキラキラしたプロローグからオープニングで演奏される1曲めで大爆笑した方は、今すぐ友だちになろう。


PUFFYの「これが私の生きる道」。劇中では特に夏紀副部長のギターが聴きどころ。オーソドックスな吹奏楽曲が頻出する原作小説とは違って、こういう意表を突く、吹奏楽っぽくなくて物語の演出装置として深読みがいくらでも効く曲をドロップしたのは、やっぱり山田尚子監督のしわざだろう(なお本作では「チーフ演出」としてクレジットされている)。今回は歌詞を取り上げて解説はしないけど、興味のある方はぜひ一読をおすすめしておく。あ、「北宇治高校吹奏楽部の誰がこの曲を選んだのか」については、ちょっと分からない。原作小説はともかく、アニメでは滝先生が赴任する前から「暴れん坊将軍のテーマ」を選ぶくらいなので、こういう妙なノリが伝統なのかも。

以降、パンフレットの記述を元に、劇中曲について思うところを少々。



「ラジオ体操第一」。これ、どこで使われているか3回見ても分からなかったので、詳細はいずれ。

「Samba De Loves You」。今年のサンフェス曲。去年の「RYDEEN」と違って、オーソドックスで華やかなサンバを選んだのだろうと思ってたけど…



"チューバが目立つ曲を探している方には必聴です"

マジかよ、と思わず声が出た。サンフェスではチューバ担当の1年生である鈴木美玲(みっちゃん)が一悶着を起こす。つまり、この曲はそういう背景があるからこそ選ばれている。

さて今回のサンフェスでは、もうひとつ触れなくてはいけない曲がある。「Bolero」。ラヴェル作曲の有名な作品なので、誰でも一度は聴いたことがあるだろう。



鈴木美玲(みっちゃん)が突然、部を辞めると言い出して物陰に隠れてしまったとき、駆けつけた久美子(と奏)は部に戻るよう説得を試みて何とか成功するのだが、そのときに聴こえてくるのが、佐々木梓ちゃんが所属するマーチングの名門・立華高校の演奏による、この曲なのである。元々はバレエ曲で、かなり特殊な音楽なのでマーチングには不向きだろうと思ったのだが、Wikipediaに書いてあったあらすじで思いっきり腑に落ちた。
「セビリアのとある酒場。一人の踊り子が、舞台で足慣らしをしている。やがて興が乗ってきて、振りが大きくなってくる。最初はそっぽを向いていた客たちも、次第に踊りに目を向け、最後には一緒に踊り出す。」
まあ何と言うか…「誓いのフィナーレ」前半の山場であるこの一連のシーン、目と耳を総動員して鑑賞することをおすすめする。



次。『歌劇「トゥーランドット」より』と「主よ、人の望みの喜びよ」については、他校の演奏として聴こえてきた(?)くらいの記憶しかない。そもそもこのへんのジャンルをワタシはほぼ全く知らんからな。というわけで、こちらも次回以降の宿題にしておく。

「愉快なチューバ」は、TV版1期に登場した架空の川島姉妹・ルビー川島とプラチナダイヤモンド川島が演奏していたもの。それを葉月が吹いて「初見で行けた!」と言ってるのが、健気というか良い子すぎてねえ…

「北宇治四重奏 第4番 トランペットより」は、あがた祭の夜に高坂麗奈が大吉山の展望台で(まるで久美子を呼び寄せるように)吹いていたもの。曲はともかく、なんで麗奈はあんなにドレスアップしてたの?何かのイベントの帰り?「誓いのフィナーレ」では尺のせいか何なのか分からないけど、こういった謎めいたコスチュームが説明不足のままであちこちに放置されている。やたらとカーディガン姿が目立つ1年生も然り、サンフェスのヘソ出し衣装も然り。このへんは考え始めるとキリがないので、ワタシは「アニメならではの演出」として放り出しておく。



さて皆さんお待ちかねの、今年(=2016年度)の北宇治高校吹奏楽部のコンクール楽曲について。課題曲は「マーチ・スカイブルー・ドリーム」、自由曲はもちろん「リズと青い鳥」である。ここのエピソードの切り替わり、サンフェス後の青空を2羽の鳥が羽ばたいていくところから、2つの映画が "joint" してくるのは、説明不要だよね?とりあえず、まずは課題曲について。



曲名こそ「リズと青い鳥」と繋がりがありそうに思えるけど、こちらは簡潔で明るいトーンが一貫している。それと印象的なのが、金管楽器が目立ちそうなところ。

これは原作小説を読んだ時から疑問に思っていたのだが、滝先生はなぜ「リズと青い鳥」で希美とみぞれに勝負を託したのだろう。前3年生が卒業したあと、北宇治高校吹奏楽部のエース級プレイヤーとして筆頭に上がるのは、その2人と麗奈とサファイア川島くらいなのは物語を追っていれば理解できるけれど、全国大会で金賞を取るためには、いまの麗奈の実力では、まだ足りないと判断されたのかもしれない。そのバランスを取るためにこの課題曲が選ばれたとしたら、麗奈はものすごい気迫でもってこれを吹くだろう。

そして自由曲「リズと青い鳥」。「誓いのフィナーレ」では、麗奈が久美子のリクエストに応えて、大吉山から宇治の街を見下ろしながら吹く第三楽章のソロが聴ける。

映画「リズと青い鳥」では、あがた祭の頃のみぞれはまだ葛藤のさなかだったはずで、その一方で麗奈は既に堂々としたソロを吹くことができている。2つの映画を見て、滝先生はこの年度の北宇治高校吹奏楽部に高度な要求をし過ぎたのかも、賭けに失敗したのかもとか、そんなことを思った。実際、映画「リズと青い鳥」でお分かりの通り、本来は必須でないはずの全四楽章の楽譜を渡して練習させていたりするしな。いやそれ以前に、この年度はセンシティブでめんどくさい事件が部内で多発し過ぎて、完成度を追求する時間が短すぎたのかもしれない。



そうは言っても、「誓いのフィナーレ」で北宇治高校吹奏楽部がコンクールで演奏した吹奏楽アレンジ版「リズと青い鳥」は、やはり見る者聴く者の胸を打つ。あの臨場感あふれるシーンはぜひ映画館で堪能していただきたい。京都アニメーションのステータス全振りみたいな作画と相まって、「アニメはつまるところ動く絵と音でできている」というワタシの主張が、少しでも実感いただけるかと思う。個人的にはティンパニとハープ、もちろんこのアレンジの主役であるみぞれのオーボエと、それを全力で支える希美のフルート、そして久美子と麗奈が交互に映し出されるところで、身を切られるような思いになる。



やたらと長くなってしまった。松田彬人氏による相変わらず端正な劇伴やメリハリの効いた音響などについても触れたかったけど、それはまたの機会に。

最後。「響け!ユーフォニアム」について。「誓いのフィナーレ」は、あすか先輩から受け継いだこの美しい曲を久美子が校舎内で吹くシーンで始まり、そして終わる。「始まりは終わり、終わりは始まり」というこのシリーズの通奏低音はしっかりと受け継がれ、そして続いていくだろう。





というか続けてくださいお願いします、ワタシが見たいんです!