昨今の第n次アニメブーム、特に良質な深夜アニメの隆盛によってアニソン(=OP/EDと劇中挿入歌、キャラソン含む)の数は1クールにつきもしかしたら合計3桁近くに届く勢いとなっており、しかも各々がパッと聴きでもよく出来ているのにそのうち数曲は必ず強力なフックを持った良曲が飛び出してくるのがまず驚き。最近はMONACAの仕事ぶりが目立つが、ネットレーベル/ボカロ系アーティストも活躍されているのが喜ばしいところ。
これに劇伴(=物語に付随したBGM)がつくのだから、インストも守備範囲としている音楽ファンには毎クールたまらないものがあるだろう。
(何度でも強調するけど「鏡には〜」からの舐め回すような長回しのカットが絶品!)
(これはBPMを半分にして小林幸子か石川さゆりあたりに歌ってもらったら完璧になると思う)
数年前にアニメをがっちり視聴する趣味から離れてしまっているので強いことは言えないんだが、実はTVシリーズの枠内で音楽的にリッチなことをやってしまった例は枚挙に暇がない。近年のOP/EDで記憶に残っているのはシャフトと組み始めた頃の新房昭之監督作品で、例えば「月詠」のOPと「ぱにぽにだっしゅ!」のOP/EDは最近の電波ソングあるいは萌えアニメ系のアッパーなアニソンの源流と言ってもいいかもしれない。思いつきだけど。
ただ、OP/EDと劇伴の両方とも振り切れちゃってる例というのはあまり思い浮かばない。「エヴァ」のフルオーケストラめいた壮大な劇伴は鷺巣詩郎によるものだが、あれはまあ過去の映画やTVシリーズの特撮もののオマージュだったんだろうと今になって思う。「カウボーイビバップ」はOP以外は案外コンサバだし、あの「エウレカセブン」でさえ全編テクノというわけにはいかなかったわけだし。「攻殻機動隊」はどうだったっけ。「まどマギ」はかなり演劇的だったけど全体で見たらOPが浮いてた記憶があるが演出の一部と言われたらそれまでだしなあ。
(これを見た後にDimitri From Parisを知った、お恥ずかしい限り)
(「ぱにぽにだっしゅ!」は新房監督×シャフトの原点っぽいノリなので超オススメ)
しかし何でも例外というのがある。「サムライチャンプルー」は今でも時々無性に見たくなってサントラを引っ張り出しては聴いてる作品。例えば真夏のクソ暑い夜にビールなどあおりつつグデングデンに酔っぱらいながら見て途中で寝落ちしちゃうのがこれほど似合う作品もなかろう。発表時期を考えるとゼロ年代のオタク vs サブカル論戦に引っ張りだされそうな雰囲気もするが、結果的には内容が良い意味でいい加減かつハイカルチャー過ぎてどちらからも敬遠された気配すらある。その点ではとても幸せで不幸な作品だと思う。
話は戻って最近の深夜アニメ量産体制が作画に加えて劇伴の制作もどれくらい間に合ってるのか、少々心配ではある。アニメ視聴趣味のリハビリが進まず細かく視聴していないためにおそらく見落としがたくさんあるのを百も承知で言うが、企画側の趣味全開で作曲にじっくり時間をかけた、変なものキメてイッちゃってる感じのデロンデロンな音楽が劇中でひたすら流れてる新作シリーズを久しぶりに見たい。あとでこっそり教えてくれちゃってもいいのよ
(この作品の音楽的なキーマンであるNujabes氏は2010年に亡くなったそうである。合掌)
そういう意味でも「ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン」にはものすごく期待している。最初からアタマがフルスロットルでイカレてブッ飛んでるくらいの劇伴にしてほしい。いや別に作画とか崩壊してもこれだったら気にならんから。