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2024/06/06

「響け!ユーフォニアム3」感想以上深読み未満:第九回 #ユーフォ3期

2024年6月2日、宇治文化センター大ホールでの公式イベントが行われて、その会場でNHKでご覧になっている皆さんとほぼ同じ時間でこの回を見るという、冷静に考えてみればウルトラレアな体験をしました。

「九」というのは「序破急」の"きゅう"とダブルミーニングなのかもしれん

と、「響け!ユーフォニアム」というアニメシリーズの終わりではないか、と、漠然と思いました。

これは今回のタイトルにある「ちぐはぐ」どころではなく
「北宇治高校吹奏楽部史上最大の危機」を見せられている

そんなふうにも感じました。

その後のキャストの皆さんの始終明るげで軽妙なトークや大爆笑のゲームコーナー、その爆笑ネタをアドリブでぶっこんだであろう朗読劇、やや拍子抜けだった各種発表を経て大ホールを出たところで、当日の天気がコロコロ変わって一時はどしゃ降りになった宇治の山並みに沈む夕陽が、今まで見たことのないくらい真っ赤だったのは、今どきのスマートフォンのカメラによる誇張だけではなかったように思います。






そんなシリアス極まる今回のエピソードを成立させているのは、ひとえに黄前久美子を演じる黒沢ともよ嬢の大熱演にあると断言してもいいでしょう。大きな感情の揺れをたった30分弱でこれだけの声の芝居で表現し切ったのを見せつけられたあと、あのステージで笑い転げて戸松遥さんや雨宮天さんですら置いてかれるようなギャップの激しさはいつも通りというか相変わらずというか…実はファンクラブ限定のバースデーライブを2回見て彼女の役者としての底知れなさを目の当たりにして「この人は超おっかねえ」と思ってたんですけど、あの恐ろしさが黄前久美子というアニメのキャラクターを通じてリアルな体験として皆さんに伝わったんじゃないかと思います。



余談はさておき、今回のエピソードを冷静に見ていきますね(内容的には重くて数回しか見られませんでしたが)。合宿中のオーディションの結果は、ユーフォニアムとチューバの変更だけではなかったことが、パートリーダー会議での発言から判明します(少なくともホルンとサックスに変更があったのは確実)前回述べた通り、府大会から関西大会まで数週間しかないわけですが、ソリ落選の久美子含めてA編成55名のうち1割近くを入れ替えたことになります。この短期間に急成長できるのは(周囲の"ノイズ"を一切気にせず爆進しそうな)釜屋すずめちゃんくらいなもので、いくらなんでも変え過ぎだというのは一理あります。ただ、そこに疑問を挟むのは「全国で金を取るために毎回オーディションを実施して、そのときのベストメンバーで望む」「オーディションによるメンバーの決定は滝先生(と指導者の方々)に一任する」という部全体の方針には明確に反します。結果、1年からコンクールメンバーであった3年の実力者などと、「チームもなか」からようやくコンクール出場を勝ち取った葉月や釜屋つばめちゃんなどとの間に、滝先生(ほか指導者全体)への信任・不信という形で明確な亀裂が生じます。橋本先生の寒いギャグは滑った以上に今どきそれ絶対言わんだろというくらい外れていてフォロー不可能ですし、それまでじゃれあってたくらいの麗奈と久美子が滝先生の決定を巡ってケンカしたのが、ともに象徴的でしょう。こういうときなぜ幹部3人体制になってるのかに思い至らず、ふて腐れてばかりの秀一のボンクラ具合が最もどうしようもないですが。ちかお蹴っ飛ばして喝入れてやれや求とふたり掛かりでもいいぞマジで信じられんあいつ。






…とまあ、冒頭に述べた通り「北宇治高校吹奏楽部史上最大の危機」は、滝先生の決定を部長という立場とソリ落選という事実から肯定し切れない久美子、己の信念と滝先生への思慕により全肯定の麗奈、おそらく実力主義をさんざん経験してきたので言わんこっちゃないと諦めてもいそうな真由の3人が、滝先生の真意を知ってどのように変化するか、というのが、すっかり吹奏楽の音色が響かなくなってしまった北宇治高校の危機の真相であり、これからの主題になるわけですが…





ここでちょっと横道にそれます。「ユーフォ3」が始まったとき、久美子部長が「全国で金を取る」という目標に「部員の誰一人欠けることなく」という、さらに高い目標を勝手に付け加えたのを、覚えているでしょうか?それは(誰かが辞めることで部全体のパフォーマンスに大きな影響が出るのを過去にさんざん体験してきたとはいえ)いくらなんでも意識高過ぎねえか、と思ったのは確かです。

そんななか、第八回を見終えて悶々としてた時期でしょうか、全く関係ない以下の記事を偶然読みました。長いですけどぜひ最後まで読んでみてください。

《51戦連続不敗》欧州サッカー異常な大記録を「常勝でもないクラブ」が達成のナゼ…シャビ・アロンソ42歳とレバークーゼン革命の内実 - ブンデスリーガ - Number Web

最近はサッカーを熱心に追わなくなっていたので、今シーズンのブンデスリーガでこのような異様な出来事が起こっていたことがまず驚きだったんですけど、名プレイヤーとしても記憶に新しい、若き指導者であるシャビ・アロンソ監督が、チームの意識改革にあたって掲げたのが

みんなで成長して、優勝を目指す

というスタイルだったという話なんです。ユーフォの原作小説やアニメと、2023〜2024年シーズンのレバークーゼンというサッカーチームに共通項は一切無いわけで単なる偶然なんですが、この、「全員で成長してひとつの目標を達成する」というアプローチがマネージメントやコーチングにおける2020年代最新のトレンドだとしたら、久美子部長はリーダーとして直感的・本能的に、いち早く鋭い選択をしたことになります。



そしてこの記事の冒頭で「史上最大の危機」と書きましたけど、「史上最大」というフレーズには、もちろん元ネタがあります。いにしえの映画好きやオタクならピンときたことでしょう。


これからの展開の中心に滝先生がいるのは間違いないですが、「史上最大」が総力戦を描く宿命にある以上、北宇治高校吹奏楽部に関わる全員が、この難局にそれぞれの決意をもって臨むことは明白です。そして個人的には、線香花火の散る間際の火花を見て

「ここから、ここから」

と皆へ言い聞かせるようにつぶやく釜屋つばめちゃんが、大きな鍵を握っている気がして仕方ないのです。なぜなら彼女は、

みんなで成長して、勝利を目指す

という、黄前久美子という新しいリーダーが掲げた理想の、体現者そのものなのですから。




そして、次の曲が始まるのです。
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