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2016/09/03

「響け!ユーフォニアム」深読み:舞台装置としての宇治(2)

(1)からのつづき

ここで、「響け!ユーフォニアム」の物語の地理的構造を整理しておく。架空の学校である北宇治高校は宇治市北部にある京阪電鉄六地蔵駅が最寄りと設定されていて、主人公の黄前久美子は京阪電鉄を使って通学しており、彼女の住まいは平等院(!)の南側にあるとされている。これを簡単な図にまとめると、以下のようになる。


久美子たちが必死に取り組んでいる部活も高校生の日常生活の一部と捉えることができるであろうが、ここでは場所と物語の関係を整理するために非日常とした。北宇治高校は、サンフェスや府大会といった非日常的なエピソードに足を踏み入れるための入口的な場所と言える。

一方、彼女たちが通学途中でダベったり買い食いしたり楽器の練習をしたりするのは、京阪宇治線沿いのパン屋さんやコンビニやファストフード店などを除けば、ほとんど宇治市街中心部、それも京阪電鉄宇治駅から宇治川に沿って久美子の家に至る場所に集中している。つまり、少なくとも久美子の日常空間は、この一帯であると言っていい。

(通称久美子ベンチは宇治川左岸の散策道・あじろぎの道沿いにある)

宇治川(正式には淀川本川中流部と呼ぶらしい)は、琵琶湖を源流とし宇治市内にある天ヶ瀬ダム(TV版サウンドトラックの背景に用いられた)を経由して、街のおよそ南側から北側へと流れる。その水量は豊かで速く、軽い気持ちで覗いた程度では底がみえないような川である。

(宇治橋の上から南=上流方向を撮影)

この宇治川によって文字通り二分された街を繋ぐのが、宇治橋(通称うまくなりたい橋)である。今年の夏に宇治へ行った際にこんな看板を見つけたが、この橋が宇治という街のシンボルだと広く認識されている事実を覚えておいてほしい。



ところで先の宇治川上流の写真の橋は朝霧橋と言って、朱に塗られたきれいな橋なのだが、これも劇中にはほんの一瞬しか出てきていない。日常生活ではあまり使われてなさそうな雰囲気とはいえ、前回の記事で述べたような思い切りの良いロケ地の扱いは、こうして現地を歩いてみればよく理解できる。

(朝霧橋の上から大吉山を望む)

さて今回の話をいったん整理しよう。「ユーフォ」の主人公である久美子の日常空間は、宇治川左右の川岸と、それを結ぶ宇治橋によって構成されていると断言していい。このシンプルなロケーションが「ユーフォ」の物語において非常に大きな意味を持っているのではないか、というのが「ある仮説」の正体である。

(3)へつづく
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