For short, " I. M. G. D. "
Established : 1997/12/07

Light up your room, and browse away from the monitor, please! :-)

2024/04/07

『「リズと青い鳥」は山田尚子監督と牛尾憲輔氏によるDJ・VJロングセットである』説の検証(途中で挫折)

2024/04/06の午前中にポストしたのが妙に反響が大きくて少々驚いております。


ワタシは「リズと青い鳥」のこのあたりの仕掛けを皆さんがとっくにご存知だと考えてたんですが、どうもワタシが平ハウス物語などで少数の方々にお話しただけなのにも関わらずだいたいの皆さん伝わったと思い込んでいたようで、いろいろと恐縮しております…以前は自覚してたつもりだったんですけどね。


さて今回はこのポストのバックグラウンドである

『「リズと青い鳥」は山田尚子監督と牛尾憲輔氏によるDJ・VJロングセットである』

という仮説の検証に用いた表を公開してみます。要は以下のポストっぽいことをやろうとして挫折したんですが…。



まあ勿体ぶってもしょうがないので、その表を先に公開しますね。できれば「リズと青い鳥」のディスクを再生して、プレイヤーで何とか再生時間を表示させながらご覧いただければと思います。





「リズと青い鳥」は大きく分けて、みぞれと希美が中心に描写される通称・実写パートと、リズと青い服の女の子=青い鳥が描かれる通称・童話パートがあり、それぞれに牛尾憲輔氏と松田彬人氏の劇伴が対応しています。そして劇中曲「リズと青い鳥」は卯田百合子=松田彬人氏の作曲です。

この映像と音楽の二重構造が時間ごとにどのような分布をしているのか追いかけてみたのが、こちらの表です。ただ、思いついたのは一瞬ですが、実際に始めてみると冒頭からたった20分を確認するのに数時間かかるくらいの重労働でして…ご覧の通り途中で諦めました。



さて本題。まず冒頭のポスト、「リズと青い鳥」のタイトル表示に相当する部分は開始から11分46秒あたりです。ここはみぞれと希美のふたりの演奏をエフェクトなど無しでそのまま使っています。通常の映画でもそうですが、劇伴、または劇中で演奏される音楽は、よほどのことがない限りオーケストラや吹奏楽の編成の位置そのままの方向から聴こえます。北宇治高校吹奏楽部では、客席から見てオーボエが指揮者の右側手前、フルートは中央手前に位置します。そしてここからが重要ですが、このシーンのオーボエとフルートの音は極めて接近していて、あのベン図のようにほぼ混ざり合っています。音響の良い映画館やオーディオ、ヘッドホン等で注意して聴かない限り、だいたいセンターで重なって鳴っているように調整されています。なので先のポストは正確には、「オーボエがほんのわずか右から、フルートがほんのわずか左から聴こえる」と表現したほうが良かったてしょうかね。

先ほど「劇伴または劇中で演奏される音楽は、よほどのことがない限りオーケストラや吹奏楽の編成の位置そのままの方向から聴こえます」と書きましたが、なぜそうなるのかは、単純に気持ち悪いからというのが理由だろうと考えています。北宇治高校吹奏楽部の演奏シーンは様々な方向から奏者が描かれますけど、それをいちいちその場所で聴こえるように音の位置関係を変えたら、見ている我々の頭が混乱するであろうことは、誰でも想像がつくと思います。逆に言えば、映画音楽において、または音楽映画において、見えている映像と聴こえてくる音には、あらかじめウソが混じっているということでもあります。

タイトル表示の話に戻ります。つまりここは、映画音楽または音楽映画の観点で言えば文法に正しく則っていると言えます。一方、映像は大胆にも主役であるふたりの奏者の背中側から描写して、さらに「リズと青い鳥」の文字を重ねることで、物語の「リズと青い鳥」がふたりのどちらに相当するのかを謎かけしています。「山田尚子監督は性格悪い」と思いませんか?もちろんこれは、高坂麗奈が黄前久美子に対して満面の笑顔で言い放った「やっぱり久美子は性格悪い」というセリフに則った、最大級の褒め言葉ですけども。



ただ、今回の話で重要なところは、実はタイトル表示のところではありません。開始19秒で異例なことに企業ロゴの途中でいきなり流れ始める劇伴や、7分35秒の"disjoint"の無音(ミュート)、18分37秒から18分42秒あたりの、童話パートから実写パートに切り替わるところ、松田彬人氏の劇伴から牛尾憲輔氏のそれへの繋がりの、ほんの数秒のずれなどです。この「微妙に繋げて止めてずらして重ねる手つき」が、極めてDJ的・VJ的だと感じませんかね?細かく追うのに挫折したので詳細は省きますけど、この90分の映画は、ずーっとこんな調子で、映像と音が時には寄り添い時には意図的にずれて、全体としては一本の線で繋がって完成しています。なので

『「リズと青い鳥」は山田尚子監督と牛尾憲輔氏によるDJ・VJロングセットである』

という、普通の人には言ってる意味が伝わらない仮説を唱えているわけです。


…という話を書いていたら2024/04/07 17:00という時間がもうすぐになってしまいました。やや不完全燃焼なので、後ほど追記するかもしれませんけど、しばらくはユーフォ3で頭がいっぱいになると思うので、



今はちょっと待っててください。
Pocket このエントリーをはてなブックマークに追加