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2024/04/14

「響け!ユーフォニアム3」感想以上深読み未満:第一回 #ユーフォ3期

ワタシの(変な角度から眺めがちな)記事に期待していた皆さん、すみません。

1~2話特別上映イベントで見たとき呆然として1日ほど何も手をつけられなかったのと割と同じインパクトを『響け!ユーフォニアム3』(以下、記事タイトル以外ではユーフォ3と表記)のTV放送初回から受けてしまったし、その一方でワタシのTLに流れてくる皆さんの視点や考察の鋭いことといったら…TVが無くて配信でご覧になる方のことも考慮して、各種配信サービスで見られるようになる翌週水曜あたりに記事を公開しようかと思ってたけど、もはや周回遅れ感が拭えません。

というわけで逆に気楽に、ぼんやりと俯瞰しつつ細かなネタなど拾っていこうかなと考えとります。なおワタシは原作小説を既に読んでしまっているので、ネタバレになるようなことは深く突っ込まないことします。それから、感想投稿キャンペーンで「ダウンロードOKの画像を公開する」と述べているので、今までとは変えて放送の画面キャプチャは貼らず、ダウンロード可能画像とテキスト主体で行ってみます。引用元を明記すればよいとは思うけど、今回は個人的に思うところがありまして。




では本題。

「ユーフォ3を見てると文字通り息継ぎすることができない」と先行上映会の記事で書きましたけど、OP/EDとCM無し25分間、文字通りみっちり詰まった情報量に圧倒された方が多いんじゃないかと思います。劇中の時間は新学期開始からの数日くらいを描いてますけど、研ぎ澄まされたカットとセリフによる無駄のなさが、単に詰め込んだわけではない、ユーフォ3独特の視聴感覚に繋がってると思います。

順番に見ていきますね。

アバンというよりユーフォ3という物語のプロローグでしょうか、開始からの北宇治高校の風景と職員室と吹奏楽部の演奏、久美子の寝姿の全体をつつむ違和感、通称「ディスコ・キッドの謎」は、謎として置いといて深掘りしません。個人的に気になったところは「1カットめの机の上に置いてある"写真"に写っているのは誰か、撮ったのは誰か」という点でしょうか。カメラと写真は、ユーフォ3における重要アイテムのひとつなので。


それから先行上映会場でぎゃーと叫びそうになった「制服姿の久美子が膝歩きしてベッドを横切って姿見に向かう」カットは、もう惚れ惚れとするような見事さで…この、むちゃくちゃ難しいけど自然すぎて目の肥えたアニメファンじゃないと逆にスルーしてしまうアキュレイトな日常芝居の連続は、これも先の上映会の記事で書きましたけど「フェルンが息もつかせぬ勢いで繰り出す一般攻撃魔法ゾルトラーク」のようなもので、京都アニメーションがTVシリーズをやるとこういうのが怒涛のように現れるので情報が飽和して大変なことになるというのを、あらためて痛感しております。

…こんな調子で全てのカットに言及したら、いつまでも終わらないので思いっきり端折ります。

第一回で目立ったのは「前後の動きの描写が多い」ことです。アンコン編でも兆しはありましたけど、ユーフォ3は明らかに多用されています。それ自体の作画がむちゃくちゃ難しいと伝え聞いてるので印象深いわけですけど、いわゆる画面の右側・左側、舞台の上手・下手という作劇のセオリーから、第一人称的な見せ方・語り口への意識の切り替えがあったと推察されます。このユーフォ3という物語は、主人公たる黄前久美子から見た2017年度の風景である、とも言い換えられます(2017年度と断言する理由は後述)


それから回想として過去のシリーズや映画からカットその他が引用されるわけですが、そのなかにしれっと新規カットを入れてくるあたり京アニも性格わ…もといサービス精神旺盛っすね。なので、見ている側のこちらは、のべ9年の間に蓄積された過去の記憶に新しい情報が加えられることで、「自分が妄想していたことは既に映像化されていたのでは」的に困惑してしまう仕掛けです。やっぱり京アニは性格以下略。


あと研ぎ澄まされた、その一言が重大な意味を持つセリフの冴えには言及せねばなりません。かなピーこと久石奏のくねくねした楽器紹介は大爆笑しましたけど。アフレコ現場ではノリノリで収録されたんでしょうし、周りの皆さんは笑いを堪えるの必死だったんだろうなあ…(なおアフレコについては特別上映イベントで驚くべき話が暴露されたんですが、それは機会をあらためてお話します)


話が逸れました。ユーフォ3のセリフの冴えについて、特にこの2つは今後の展開を示唆するものとして記憶しておくべきでしょう。

黄前久美子「私の3年生は始まってしまった」

黒江真由「やっぱり!イメージどおりだ!」

久美子は部長という重責を担って悲願の全国大会金賞という目標に向かっていきますが、この時点ではまだ受動的な感覚が抜けきれていません。一方で吹奏楽の強豪校から転校してきた黒江真由嬢は、初対面の(かつて失言王と呼ばれた)久美子部長に己の主観を一方的にぶつけるという大失言をいきなりかまします。エピローグでいきなりこの不穏さで締めるあたり、久美子部長の胃が本気で心配になります。なお真由嬢のトラッドなセーラー服は、もちろん原作小説のアサダニッキさんが描かれた北宇治高校の制服が元ネタなんでしょうけど、かつてNHKで放送された少年ドラマシリーズの「なぞの転校生」へのリスペクトやオマージュとも取れます。そのまんまのオチやないかい、という関西弁のツッコミが飛んできそうですけど。


あとは個人的なネタを少々。この物語が2017年度であると断言した理由について。それは星野源「恋」が劇中曲として演奏されたからですね。


2016年から2017年にかけて大ヒットして「恋ダンス」が流行して…というのはうっすら知ってる程度なんですけど、重要なのは「恋」が2017年の選抜高校野球の開会式の入場行進曲として採用されたという事実です。ここでも出てくるNHKパワー。まあつまり、ユーフォ3は時空がねじれていない限りは2016年度以前の話では無いことが確定します。逆に、2018年度以降でも成立するじゃないかという指摘はもっともですが、2017年4月初旬のタイミングで「恋」を演奏するのは、「北宇治高校吹奏楽部の実力を(新入生に)見せつける」これ以上ない選曲であることは明白です。「恋」の吹奏楽アレンジの譜面がいつ頃入手可能になったのかは定かではありませんけど、短期間で安定した演奏を聴かせることができるほど北宇治高校吹奏楽部の技術はハイレベルであり、関西の強豪校の一角、(滝先生のお父さんの時代の)古豪復活と目されるようになった理由の一端がこうして推察できるわけです。



ここまで書いてきてまだまだ言いたいことは山ほどあるわけですけど、まだ第一回なのでセーブして、最後に。正味25分の第一回のなかに新規の吹奏楽曲が2つも出てくるなんて想像してなかったので大喜びしています。アンコン編から引き続き流れてくるムーンライトセレナーデを加えて3つ、実は4つめが少しだけ聴こえてきてますが…それは次回のお楽しみということで、我々は我々として「ユーフォシリーズは極めて優れた音楽映画である」ことを見守っていきましょう。





そして、次の曲が始まるのです。
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