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2016/10/08

「響け!ユーフォニアム2」深読み:第一回

ついに放映が始まった「響け!ユーフォニアム2」(以降、今後の一連の記事ではユーフォ2または2期と呼称)。その第一回、9月の先行上映会で見たはずのワタシのような人間でさえ鈍器でぶん殴られたような衝撃を受けて全身の毛穴が開いてアドレナリンがダーって出てる感じがずっと続いてしまうのはさすがに体力が続かないので、思うところを順次ここへ放出していくことにする。何をどう工夫してもネタバレは避けられないし、そもそも自分が考えてることは明らかに他の皆さんと違っちゃってるようなので、まだ見てない人はもちろん既に見た人も含め、作品を素直に楽しみたい方は、この記事の存在を忘れてください。ただの感想文とか楽しい感じには絶対にならないので、そういうのを期待してる人は読まないでください。たぶん後悔するので。

これだけ警告しておけばいいかな。あとは好き勝手に書く。






本題。「第一回 まなつのファンファーレ」について。猛烈に長くなるので覚悟してほしい。

9月の先行上映会の観賞後に「これは事件だ」と思ったのは既に書いた。これを正確に表現すると、

『京都アニメーションは2期で「TVアニメを映画にする」つもりだ』

と感じた。上映会の数時間前に第一回の尺が1時間であることを知り、その正体を映画館で体感したとき、それは確信に近いものとなった。2期PV第1弾の画角で予告されていたことではあるんだが…。

上映後、真っ先に思い浮かんだのが「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」である、元々はTVドラマシリーズのひとつとして作られた映像作品が、その瑞々しいクオリティゆえに映画館で上映されるまでになった、岩井俊二監督の出世作である。そのあらすじはさておき、「夏休み」「打ち上げ花火を違った角度で見る」というプロットが共通していることを覚えておいてくれればOK。



もうひとつ。昨今のTVアニメのn期化におけるタイトルのお約束…例えば「2nd season」を付け加えるとか「!」を「!!」にする等々のフォーマットに対して、2期はなぜ後ろに「2」をくっつけただけのシンプルなものにしたのかという疑問。これはいろいろ考えて「エイリアン2」なんだなと思い至った。超A級SFホラーである前作の舞台装置を使ってジェームズ・キャメロン監督が超娯楽SFバトルアクションに話を丸ごと作り替えてしまった、これまた名作中の名作である。「今度は戦争だ!」というキャッチコピーが見事にハマり過ぎて惚れ惚れするほどに。



適当な思いつきで挙げた上記2つの映画が、「色調の調整などを使ってフィルムらしく見せる」「低解像度のビデオ画像を使用することでリアリティを演出している」みたいなことをやってたのは全くの偶然だけど、ユーフォ2の第一回は例えばそういうのを念頭に作ってて、「アニメのTVシリーズの2期の1話目」ではなく「1本のアニメ映画がたまたまTVシリーズの1回目に来ちゃってる」、そう理解した方が早い。ご覧になった方なら分かるだろうけど、今回の時点でもう1期と比べても異常にインフレしたクオリティの一方で通称ダメレンズ描写が激減して劇伴がより重厚かつシリアスになってて、要するに1期のTVシリーズ「響け!ユーフォニアム」とその総集編的映画である「劇場版 響け!ユーフォニアム」の「同じ舞台とキャラなのに全く違う続編映画」と呼んでしまっていい状態なのである。これがTVなり動画配信サービスなりで流されるという事実は、どう考えてもやっぱり事件だと思う。


ここからは、第一回の話の流れに沿って思うところをつらつらと。引き返すなら今のうち。もう責任取らないからな。





「モノクロ」で手描きされたタイトルと「冬服」のプロローグ、実は先行上映会では流されなかった(その代わりに南中のバスのシーンが冒頭に来てた)。OPとEDとCM明けのアイキャッチが無かったのは理解するけど、こんな隠し球を用意してたなんて全くの想定外だったので、「先行上映会を見た人でも衝撃を受けた」というのはそういうこと。もしかしたら劇中のシーンにも上映後に手を加えてるかもしれない。



その先行上映会では流されなかったOPが、とんでもない情報量で…ここは細かく見ていく。まず主役が誰なのかが全然分からない。そして前半の「モノクロ」に「青枠」の場面。1期では「誰かが想像している場面」という記号であった「青枠」が、少なくとも2期第一回の本編では使われていなかった。ほぼ全て「夏服」のカットが連続するこれが示唆するのは、

「描かれている風景が誰かの色あせた過去の記憶である」

ということ。北宇治高校吹奏楽部員の明るく楽しげな振る舞いとものすごくポジティブでポップな音楽とは裏腹の、その残酷さにただ涙を流す。





色が戻ってくる見せ場の演奏シーンは妥協が一切ない。バスドラムの皮が鳴動するさままで描き込む執念のすさまじさに言葉を失うけど、ここでは主役級であるはずのキャラがほとんど出てこないことに注意。お楽しみはまだまだ見せませんよってことらしい。そしてこれを見て、もしかしたらOP映像を放映途中でどんどん変えてくるかもとも思った。



んで新しい舞台。「中二病でも恋がしたい!」で多用された構図にそっくりな方はおそらく宇治市内だけど、もうひとつはたぶん京都。ワタシが妄想してる「京都アニメーションが編纂する京都偽史」が、また強化されてしまった。それと、みんなが気になってるはずの4人の真相はいずれ明かされるだろう。





本編。1期とほぼ唯一の共通項は各回のタイトル。ちょっとだけホッとする。


通称ダメレンズ描写が激減してるのは前述の通り。おそらく山田尚子監督が映画を撮るのに持ってっちゃったんだと思う。そのため、背景の異様な描き込みが浮き彫りになってる。



スケジュール表。日付は2015年度のもの。そして第一回が8/5〜10の話であることが分かる。


Blu-rayまたはDVDを最後まで見た人じゃなければ唐突すぎると感じるはずの「チームもなか」が演奏する曲は、「学園天国」である。




この選曲は、先行上映会で石原立也監督が『「ダッタン人の踊り」は山田尚子さんの選曲です』と仰っていたので、同じく山田セレクトだろう。これには4つの意味があると思う。

ひとつめ。演奏している「チームもなか」の心情をストレートに表したもの。Congratulation!!

ふたつめ。1期第一回との呼応。「地獄のオルフェ」に対する「学園天国」。



みっつめ。歌詞。今回は吹奏楽バージョンなので調べないと分からないけど。
あーみんなライバルさ
あーいのちがけだよ Oh yeah yeah yeah
運命の女神さまよ
このぼくにほほえんで
一度だけでも
よっつめ。フィンガー5の元ネタであるところのジャクソン5。ソウル、ファンク、ブラックミュージックへの導線。この真意はいずれ明らかになるはず。



余談だが、『感極まって泣いてる晴香部長の「それ私の!」は、アドリブまたは先行上映会後に付け加えた』説を支持する。あんなに面白いのになぜか記憶に無いんだよ…(追記:先行上映でもあったという証言が得られたのでワタシのアタマがボケてた)。

さて次。2期が明らかに1期と異なっているのが一発で分かるカット。



学校帰りの久美子と麗奈。麗奈がこんな顔つきをするなんて想像もしてなかった。1期第五回の梓ちゃんとそっくり。久美子に向き合う人は、早かれ遅かれ素が出ちゃうということらしい。


「黄前さんらしいね」って言ってた場所で、麗奈はこういう柔和な表情をしてああいうことを言うようになったのが感慨深い。1期でいちばん成長したのは、実は彼女かもしれない。


一方、香織先輩を追っかけてたはずが逆に目立っちゃってる優子先輩マジエンジェル。



これも余談だけど、優子先輩の鼻歌もアドリブだと思うんだがどうか。

本題に戻る。1期の特徴のひとつだった「足の芝居」が2期では激減して、その代わり「手の芝居」が大変なことになってる。足を拾えたのはこのくらい。手は拾い切れるわけがない。



2期のキーパーソンである、みぞれ先輩と希美先輩。彼女たちの危うさや脆さがそのまま描かれている。



ちなみに、「ダッタン人の踊り」が選ばれた理由はオーボエとフルートのソロがあるから、と石原監督が仰っていた(もちろん山田セレクトなのは前述した通り)。すなわち、この曲が流れている限り、話は彼女たちを中心に回っていくことになるだろう。そして、これと「学園天国」と久美子んちのリビングのTVで流れてた曲を合わせて計3つが、2期第一回で出てきた新しい吹奏楽曲となる。この勢いだと、今後も続々と新曲が演奏されそうな予感がする。



彼女たちのつらく悲しい回想シーンの冒頭。「走ってるクルマのホイールが逆回転してるようにも見える」のを、そのままアニメにするとこうなる。これ、3DCGじゃないよな…?


そして、南中出身の彼女たちと北中出身の久美子たちが過去に同じ時間と空間を共有していたということが明かされる。梓ちゃんもいずれ2期に登場するだろう。なお、正式な校名を見ればお分かりの通り、方角の単純な対比ではないことに注意。北宇治高校が実在しないのと同様に、このへんは深掘りしないほうが良さげ。



宇治橋西詰から望む、宇治橋と大吉山。宇治川の水面の描写がとんでもないことになってるけど、この作品が結果的にアツい宇治プロモーションアニメになっちゃったので、絵面を盛るのは当然のこと。よく分からんけど、でっかい鳥があのへんに飛んでるんだよマジで。




んで、宇治川のあの一帯には宇治橋の他に4つの橋が架かってる。知ってた?画面ではまだ描かれてないものもあると思うけど。





花火見物の久美子と麗奈がなんであんなアクロバティックなところにいるんだというのは、「小さい頃からの久美子の遊び場がこの一帯だったから」だと思う。身体は成長しても精神的にはまだ発育途上である久美子のとっておきの場所なんだよたぶん。そして過去を遡ると、秀一がトロンボーンに変えた理由も分かる。彼の初恋の相手は、おそらく久美子じゃないんだ…。



1期の重要人物のひとりだった葵ちゃんは、もう出てこないかもしれない。打ち上げ花火に背を向けて歩いているから。



「打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?」。石原監督がこだわったという「宇治独特の音響」で再現される「現実では行われなかった打ち上げ花火」を、みんなと違う場所でひとり見上げてる彼女の正体は、もうバレバレだよね?





EDまで大変なことになってて書かれてる内容…作画監督が3人とか原画と背景担当者の多さとかにも驚くけど、山田尚子さんの名前がシリーズ演出以外にはどこにも見当たらなくて、1期第八回を手がけた藤田春香さんが第一回の演出とEDの絵コンテ・演出の担当になってることが特記事項。次の才能は順調に育っているようである。






2期になってようやく「宇治市」が正式にクレジットされた。1期では課が関わってただけなのに。誠に慶賀の至りである。比較用に1期の画像も載せておく。本気を出していいぞ。



…とまあ、軽く流そうにも流しようがないクオリティと密度が見る者を圧倒する。1期のシーンや舞台を適度に引用して橋渡ししながら新しい物語へきれいに繋ぐ腕前に唸ると同時に、新しいことをやるぞという強烈な意気込みがほとばしるのを感じる。このハイテンションな試みがいったいどこまで続くのか、それとも破綻してしまうのか、見届けたいと思う。





最後。1期第十三回で、久美子と麗奈に向かって葉月が口にした、

「ふたり、色違いでお揃いだから」

という言葉の真意が描かれた。彼女たちが纏う黄と青は反対色で、この物語の主役がそういうふたりなのは、実は既にタイトルの時点で明かされていたのである。







そして、次の曲が始まるのです。
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