この季節にふさわしい、せつなくもあざやかな高揚感につつまれてみよう。そして、なぜかを探ってみよう−こんな調子で語り始めると1年が過ぎてしまうので、できるだけ端的にまとめてみたい。
まず、たった11秒、ピアノとベース、ドラムだけのイントロの豊かさに目を瞠る。そこからミクの声とフルートのような音色が加わって、ひらひらと舞い踊る。35秒あたりからは弦楽器のピチカートを交えつつタメをつくり、46秒からのサビで喜びを爆発させて、2番に続く間奏からは一気に畳み掛ける。
このスピーディでトリッキーな構成に、いかにも春らしいキーワードを散りばめた歌詞が花を添える。曲を聴きながらじっくりと確かめて、メロディと言葉が織りなす響きとリズムを堪能してほしい。
そしてやや後ろから描かれたミクのイラストは、翼のように両手を広げ彼方に翔んでいってしまいそうな彼女の一瞬を切り取っている。
ざっと見渡しただけで、この密度である。まるでポップソングのお手本なのだが、おそらく楽曲制作や楽器演奏の経験があるほど驚きが増すだろう。これを聴いて自分も何かやってみようとそわそわし始めた方が、決して少なくないと想像するのだ。
3分57秒。この余韻は、なにものにもかえられないきらめきである。
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music:ちえ
words:リョータイ
illust:はらの
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