For short, " I. M. G. D. "
Established : 1997/12/07

Light up your room, and browse away from the monitor, please! :-)

2016/10/30

「響け!ユーフォニアム2」深読み:第四回

いつもの前置き:何をどう工夫してもネタバレは避けられないし、そもそも自分が考えてることは明らかに他の皆さんと違っちゃってるようなので、まだ見てない人はもちろん既に見た人も含め、作品を素直に楽しみたい方は、この記事の存在を忘れてください。ただの感想文とか楽しい感じには絶対にならないので、そういうのを期待してる人は読まないでください。

警告おしまい。あとは好き勝手に書く…とは言うものの、今回はほとんど記録映像のように剥き出しの感情が画面に焼き付けられているので、深読みも何もあったもんじゃない。意味深なカットは例えばこことか、ほんのわずかだけだし。



2016/10/23

「響け!ユーフォニアム2」深読み:第三回

いつもの前置き:何をどう工夫してもネタバレは避けられないし、そもそも自分が考えてることは明らかに他の皆さんと違っちゃってるようなので、まだ見てない人はもちろん既に見た人も含め、作品を素直に楽しみたい方は、この記事の存在を忘れてください。ただの感想文とか楽しい感じには絶対にならないので、そういうのを期待してる人は読まないでください。

警告おしまい。あとは好き勝手に書く。先日ガルパン劇場版LIVE ZOUND上映を見たら3DCGによる動く背景もパノラマ写真的な背景も当たり前の手法なのが分かって自分の視野の狭さを思い知ってショックを受けてるのと、2期の情報量に頭がついていかなくなってるのとで、もはや深読みでも何でもなくなっちゃってる感じだけどな。

2016/10/17

「響け!ユーフォニアム2」深読み:第二回

前置き:何をどう工夫してもネタバレは避けられないし、そもそも自分が考えてることは明らかに他の皆さんと違っちゃってるようなので、まだ見てない人はもちろん既に見た人も含め、作品を素直に楽しみたい方は、この記事の存在を忘れてください。ただの感想文とか楽しい感じには絶対にならないので、そういうのを期待してる人は読まないでください。

警告おしまい。あとは好き勝手に書く。レッツプール!!


2016/10/13

「響け!ユーフォニアム2」深読み番外編その1:オープニングの「ステディカム的映像表現」について

まだ始まったばかりなのにいきなり番外編。ネタバレなしだから安心してください。

第一回を取り憑かれたように繰り返し見ていて、オープニング(OP)のモノクロ映像に涙しながら、突然こんな顔になった。


「これって」
「背景や」
「机が」
「動いちゃってる〜?!」

このモノクロ映像部分、ほぼ全編にわたって背景と教室内の机や楽器が3DGCで描かれていて微妙に動いているのが分かったときは、さすがに我が目を疑った。百聞は一見に如かずなので、いちばん分かりやすいところを抜粋してみた。


夏希先輩が上半身を横倒しにするのに合わせて、背景や机が動いている…正確には、「この場面を教室内で撮影している手持ちカメラがわずかに動いたのでこういう映像が撮れた」ように見える。

この「あまり手ブレせずぬるりと動く映像」は、ステディカムで撮った雰囲気によく似ている。これも実物を見てもらった方が早い(3:59あたりから)。



お分かりの通り、こういった器具を実写で使えば素人でもそれっぽい映像が撮れてしまうんだけど、そういう今っぽい表現をアニメに持ち込むために、キャラクターの居る3DCG空間を丸ごと作り起こして、その空間内に擬似的なステディカムを配置して、カメラ位置をいかにもそれっぽく動かすことで、このシーンは出来ている。「実写なら簡単にできるけどアニメではとてもめんどくさい」というのが感覚的に分かると思う。

ユーフォ1期で目立った、もちろん他のアニメ作品でも多用されているカメラの手ブレ的な映像表現は、2次元の絵全体を上下左右に細かくランダムに動かすことで実写っぽく見せる手法である。これは乱暴に言えば「出来上がった絵をずらしてコマ撮りすればいいだけ」だから、コストパフォーマンスよく画面をリッチにできる手段だったはずなのである。その一歩先のリアリティを求めて今風の「ステディカム的映像表現」に向かうのは気持ちとしては分かるんだけど、それを目立たせることなく作り込んでOPに入れてくるあたりに、「2期は新しいカメラで撮る」、新しいアニメの表現を開拓するという異様なほどの意気込みを感じる。

さて、じゃあこのモノクロ画面は誰が撮ったんだということになるんだが…写真係の萩原笙子先輩やサファイア川島という線も考えられるけど、色が戻ってきた後半の演奏シーンでも微妙にそれっぽい部分が出てきたりするので、正体は不明。まあそういう誰かが偶然その場にいたってことにしておこう。

ちなみにOPはどのカットも捨てがたいけど、いちばん好きなのはここ。座奏してるのにダイナミックな動きがたまらない。喜多村&岡先輩のファゴットコンビが好きってのもあるけど(笑)。


そして、次の曲が始まるのです。

2016/10/08

「響け!ユーフォニアム2」深読み:第一回

ついに放映が始まった「響け!ユーフォニアム2」(以降、今後の一連の記事ではユーフォ2または2期と呼称)。その第一回、9月の先行上映会で見たはずのワタシのような人間でさえ鈍器でぶん殴られたような衝撃を受けて全身の毛穴が開いてアドレナリンがダーって出てる感じがずっと続いてしまうのはさすがに体力が続かないので、思うところを順次ここへ放出していくことにする。何をどう工夫してもネタバレは避けられないし、そもそも自分が考えてることは明らかに他の皆さんと違っちゃってるようなので、まだ見てない人はもちろん既に見た人も含め、作品を素直に楽しみたい方は、この記事の存在を忘れてください。ただの感想文とか楽しい感じには絶対にならないので、そういうのを期待してる人は読まないでください。たぶん後悔するので。

これだけ警告しておけばいいかな。あとは好き勝手に書く。

2016/10/01

DAIMお蔵出しこぼればなし

2016年春に活動を休止したネット音楽レビューサイト・DAIMで、自分が書いた楽曲レビューを思うところあって先ほどここで再公開した。

DAIMについてはもう忘れられてる頃だろうから、軽く説明しておく。現Stripelessレーベルのボス・しまさんとワタシが2012年8月下旬に共同設立した、「全ての音楽を掘りつくす勢いでやる」楽曲レビューサイトがDAIMであった。以降の約3年半、ボーカロイド楽曲寄りではあったが、我々を含めたチームメンバーがインディペンデントなネット音楽について何か感じたことをレビューに仕立てて発表する場として、少しは何かの役に立てたかもと現在は思っているところである。

DAIMの意味やなぜ誰でも参加できるようにしなかったのか等のネタばらしは別の機会に譲るが、このままDAIMのサイト(Tumblr版とWordpress版の2つあった)が消滅したままだと自分の書いた文章が闇に葬り去られるため、今回サルベージすることにした。また、DAIMの最盛期を知らない方から最近「DAIMが読めないのでどういうものだったのか分からない」というご意見をいただき、そうは言っても全レビューを自分の一存で再公開するわけにもいかないので、ワタシの責任が持てる範囲、すなわち自分が書いた文章をなるべくそのまま転載して、少しでも当時の雰囲気を味わってもらえるようにした。そのため、基本的には原稿を丸ごとコピーして貼り付けただけで、リンクがおかしかったり変な間が空いたり一部のコンテンツが消えたりしている。作者と曲名は正しいので、必要なら各自で検索するなりしてください。

さて各レビューのリストと、執筆時の意図などを軽く解説:
  • t.Komine(うたたP) / 鳥居羊 / “こちら、幸福安心委員会です。”
    DAIM設立時に「ここではメジャーな曲を積極的に扱っていこう」という個人的な方針を決め、そのとき最も気になっていた作品をピックアップしたもの。「プロパガンダ」という単語を導き出して動画の扇情的な絵と扇動的な歌詞、そして強烈なビートをかなり強引に結びつけた感じ。
  • ゴジマジP / “おちゃめ機能”
    「メジャーな曲を積極的に扱う」と決めた際に、これも書こうと真っ先に決めたもの。ニコ動ネイティブなボカロPの筆頭と個人的に思っているゴジマジP=ラマーズPを、なるべくフラットに評価しようという試みでもある。氏の腕前は最近ますます磨きがかかっていて舌を巻くばかり。
  • daniwell / “WHISPER MOMOKO”
    ネットミーム化した「Nyan Cat」の元曲の作者であるdaniwell氏のアイディアと、「Nyan Cat」を唄っている桃音モモの中の人である藤本萌々子さんの声素材が合わさって、インタラクティブアート的な雰囲気を醸し出した作品。「全ての音楽を掘りつくす勢いでやる」方針の個人的な具現化の一発目。
  • 名無しさん / “生演奏 ちんこ音頭 Jazz Ver.”
    CGM/UCGと呼ばれる行為がまるでニコ動やボカロ、ピアプロ等で始まったみたいな言説をぶち壊したくて書いたもの。掘れば似たような話がもっとあるはずで、そういう先例があるのを抜きにして議論を組み立てたくなかったので。このあたりはDAIMの仲間だったアンメルツPの知見にかなり影響されたりもしている。
  • 鼻そうめんP / “YOUTHFUL DAYS’ GRAFFITI”
    モストフェイバリットボカロPのひとりである鼻そうめんPの作品から最高に笑える作品をピックアップしたもの。最後の「R」が昭和軽薄体なのに気づいた読者が何人いたのか、ちょっと自信が持てない(笑)。
  • 委員長 / “台湾人が中国語で「いーあるふぁんくらぶ」を歌ってみた”
    2012年のミクパ香港・台湾ツアーにぶつけて書いたもの。原曲ではなく台湾の方が中国語に翻訳して歌ったこの作品を取り上げたのは、「歌ってみた」が原曲の強さに負けず、バリューを付加できることもあるのを強調したかったから。何度聴いても日本語で歌われるパートにグッときちゃうんだよなあ。
  • 曲者P / “10月の雨”
    選曲は完全に趣味。今までいろんなところで書き散らしてきたなかで、どうしても拾い上げたかったけどその機会に恵まれず、ついにここで書くことができて、当時は勝手に感無量になってた。
  • ぱきら / “Ribbon~脱・女のコ宣言”
    これも完全に趣味。ニコ動以外にも良曲が存在するのでケアしようよという呼びかけの意図もあった。あとQlairちゃんって言いたかっただけだと思う。
  • 島白(よだれP) / “初音ミクが「ほしのこもりうた」歌いやがった【リローデッド】”
    2008年8月31日が忘れられない日になったのはこういう良い作品群が同時多発的に投稿されたからというのと、ボカロ曲が新しいジャンルの音楽との出会いの導線になっているというのの両方を書いたつもり。作品が非公開になっているのがつくづく惜しまれる。
  • kz(livetune) / “Tell Your World”
    Google Chromeの例のCM公開1年後にぶつけて、その映像をテキストで表現しようと試みたもの。当時のニコ動で「初音ミクオリジナル曲」タグを検索して再生数順に並べた上位30曲からネタ(=その作品を連想させる言葉)を拾い集めて、「自動車ショー歌」のn番煎じに仕立て上げた。今となっては何故39曲にしなかったのか不思議でならない。
  • OSTER project / “【初音ミク】恋スルVOC@LOID -テイクゼロ-【おまけ】”
    初音ミクの代表曲の「虚構の別テイク」を紹介しながら、彼女のキャラクター形成がある意味で自覚的に行われていったという指摘をしたかったもの。これを書いた当時、「こんな曲があるなんて知らなかった」という反応が散見されたのが少々驚きではあった。
  • Treow(逆衝動P) / “Chaining Intention”
    趣味の選曲だけど、「これを聴いてボカロ曲にハマる若い奴が絶対いるだろうな」と当時思っていたのも確かで、それを素直に書いた。なお文中の「ワタシ自身のトリガー楽曲」とは、坂本龍一の「Riot in Lagos」です。
  • ちえ / “フライングスタート”
    これも趣味の選曲。聴いた当時はぽかんと口を開けて呆然としながら「世の中には得体の知れない天才めいた奴が少なくとも1人いる」という事実に戦慄していた。時を経てついにメジャーデビューするところまでいったのも、当然の帰結だと思う。
  • くちばしP / “EX-GIRL”
    さらに趣味の選曲。異様にポップなのに謎めいてる歌詞についてとにかく書いてみたかった。氏はある時期を境にぷつりと音沙汰が無くなったが、最近になって活動を再開しているようで何よりである。
  • ケフィアP / “VOCAL-ENGINE”
    これを書いた時点で既に忘れられようとしていた、クルマのサンプリング音とボカロによるラップで構成された画期的な作品をサルベージしようとしたもの。何度聴いてもカッコいい。
  • ZANEEDS / “ジャイアンリサイタル”
    モストフェイバリットボカロPのひとりであるZANEEDS最後の名曲。非常に思い入れがあるので書くのをためらっていたが、文中の動画がきっかけとなって扱うことに決めた。ざにおは現在では蒙古タンメンマンに転生したようだが…(笑)。
  • RUBY-CATMAN / “Computer Music Love”
    モストフェイバリットボカロPのひとりであるRUBY-CATMANさんの作品をどうしても取り上げたかったので書いた。公式ライブでルビーさんの曲をやるようになったら誰か教えてください。
  • Gun-SEKI / “『恋の2-4-11』フルバージョンでいっくよー★”
    書いた時点では「艦これ」を遠目で眺めるエア提督だったんだけど、いきなりこういう作品が出てきて非常に驚いたので勢いに任せて書いたもの。もはや「艦これ」も一大コンテンツに成長してしまって、いろいろと感慨深いものがある。
…こんなところかな。レビューの裏話を書くことなんてめったにないけど、今後似たようなことをやる誰かの参考に少しでもなってくれれば、それだけで満足。こうやって振り返ってみると、全然成長してねえなあと思うばかりだけど。

DAIMお蔵出し:Gun-SEKI / “『恋の2-4-11』フルバージョンでいっくよー★”

  1. 「恋の2-4-11」って何だか知ってる? 
    (」゚Д゚)」<教えてー!!!! 
    …申し訳ない、ワタシは「艦隊これくしょん」通称「艦これ」を遠巻きに眺めている「エア提督」なので(提督とは「艦これ」プレイヤーの俗称)、何かを教える立場にない。「艦これ」そのものについては他の解説記事および各種書籍を参照してほしい。
    さてこの作品は、上記の「艦これ」書籍のひとつに収録されたキャラクターのイラストを元に、プレイヤー…いや提督の皆さんの間で生まれたお約束を踏まえて、まずショート版が制作され、そしてフルバージョンが公開された。ポップでキャッチーで能天気なサウンドは、提督諸氏以外にも魅力的に聴こえるだろう。念を押しておくが、これは公式なものではない。あくまでも提督のひとりが勝手に作ったイメージソングである(現時点では)。
    少数のイラストや約束事といったわずかな手がかりからキャラクターを独自に造形して歌詞に落とし込むこと、ショート版からフルバージョンにアップデートしてクオリティを高めること、ギャグなどを織り交ぜてメリハリをつけること、電波ソングまたは音ゲー的なアレンジに振ること等は、ニコ動のサービスイン以前から続く同人音楽制作手法の主流のひとつと言える。この曲に一種の安心感や懐かしさを覚えるのは、そのあたりが原因だろう。
    また、いまや戦国時代と呼ばれる現在の女性アイドル界を強く意識していることも見逃せない。3次元どころか2次元にも溢れ出した彼女たちのライブは壮観の一言である。彼女たちの持ち歌はその「現場」のために最適化され続けているが、この作品もまた、愚直なまでにアイドルポップスのフォーマットを踏襲している。
    彼女たちアイドルがそういう「現場に最適化された曲」を歌い踊るとき、ステージの上下または画面の向こうとこちらで、ある種のインタラクションが自然発生する。
    3次元なら一斉に振られるサイリウムや統制のとれた掛け声だが、ニコ動の場合は色とりどりのコメントの山として眼前に現れる。その賑わいっぷりこそが、最新型のバーチャルアイドルへと捧げられたこの作品の真骨頂である。
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    ■music&lyrics:Gun-SEKI
    ■illust:きんのたま▼
    (※MMDモデルについては動画をご参照ください)
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    Info

DAIMお蔵出し:RUBY-CATMAN / “Computer Music Love”

  1. 「初音ミク現象」を語るときに決して忘れてはならないものがある。
    CGMやUCGといった、難しい言葉は要らない。
    今こそ叫ぼうではないか。
    コンピューターと音楽への愛を。
    この作品のモチーフとして描かれるコンピューターは、1980年代のスタンドアローンなものではなく、90年代から現在まで続く、インターネットに接続された端末群をイメージさせる。
    人と人を繋ぐそれは、常に持ち歩けるまでになった。手のひらから発したメッセージは、リアルタイムで世界の向こうの誰かにまで届く。
    例えば、海に放ったガラスの小瓶。かわいらしくしたためた封筒と便箋。到達時間を無視すれば、あなたの目の前のスマートフォンは、実はそれらの代わりに過ぎない。ただし、ひとつだけ違いがある。
    文字と一緒にいろんなものが送れること。
    スタンプや写真、動画、そして、音楽。
    ニコ動やYouTubeで見つけた作品のURLを友人や仲間に送って、すぐにシェアして楽しむ。かつての我々のように、レコードショップで音源を発掘しなくても、音楽雑誌を隅々まで読み込まなくても、元ネタを知らなくても、もう構わない。
    そういう重力を振り切ってしまおう。
    初音ミクが発売されて、もうすぐ6年を迎える。一方、作者のRUBY-CATMANさんは、この作品を2012年12月25日にニコ動で発表した。音楽の長い歴史からすればほんの一瞬に過ぎないが、この幸運な出会いを喜びたいと思う。
    これは、6年前に届いていたミクさんからの手紙を開いたら、きれいな押し花がはらりと舞い落ちてきた、そんな曲である。
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    ■music&lyrics RUBY-CATMAN
    ■illust ラグ
    ■movie 千音子
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    Info

DAIMお蔵出し:ZANEEDS / “ジャイアンリサイタル”

  1. 2012年末で事実上解散した、ざにお氏率いるZANEEDSのラストシングル。この曲をレビューする気になれるほど哀しみは癒えていなかったのだが、今回とある理由により取り上げてみることにした。
    ご存知の通り、ZANEEDSはボカロシーン(と敢えて記すが)に対して、思いっきり斜に構えていた。ネットで拾ってきたようなネタに走り、笑わせ、泣かせ、挑発して、困惑させた。その一方で海外展開を視野に入れ、実際に何度も渡航していた。
    この、ニコ動というよりも日本のドメスティックなネットカルチャーを強く意識しながら海の向こうへダイレクトに打って出るという両極端なスタンスは、いったい何に裏付けられていたのだろうか。
    この作品は、上記の謎を解くのに最適である。
    タイトルと詞は、オタクでなくても分かる国民的なお約束。変拍子によるトリッキーな構成に、チップチューン風味をわずかに効かせたフレーバー。いつもの「ざにおん家の」ミクの唄声。これらが実は伏線であり…サビで全て持っていくカタルシスとして爆発する。
    が、これらの「ギミック」は、あくまでも氏の照れ隠しであろう。小さくて静かで途切れ途切れで、しかし丁寧に奏でられるピアノの音色こそが、彼の託したメッセージに思えてならない。この音が聴こえる限り、想いは必ず伝わるはずだと。
    だから、たとえネタとして消費されても、たとえ言葉が通じなくても、ZANEEDSの音楽は我々の心を揺さぶり続けるのだ。
    2013年以降、氏はソロとしても新曲を発表していない。だが、音楽が大好きなあなたはきっと自分に嘘をつけない。その証拠に、今でもよく海外に行ってるじゃないか。まあ個人的な趣味なのも分かるけど。
    いいよ別に。引き出しが開いた机の前で、膝を抱えて座りながら待ち続けてやるから。
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    ■music:ざにお
    ■illust:CHAN×CO
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    ※冒頭に書いた「とある理由」とは、この曲をフィーチャーした「【OP動画】ジャイアンリサイタル【みらいのねいろ@AnimeExpo2013】」を見て感動したためです。とにかく素晴らしいので、ぜひ一度ご覧ください。

    Info

DAIMお蔵出し:ケフィアP / “VOCAL-ENGINE”

  1. 声と楽器と音とノイズについて、ここしばらく考え込んでいる。
    ボーカロイド等は歌声合成ソフトという楽器の一種だが、その元はサンプリングされた声である。
    楽器は音楽を奏でるための器材だが、様々な音程が出せるよう工夫されたものもあれば、音が出れば良しとする場合もあって、もちろん声も含まれる。
    音とは空気の振動だが、キャラクターが明瞭に響くものもあれば、雑多な周波数が混在しているものや不可聴帯域のものもあって、もちろん各種楽器の音色も含まれる。
    ノイズとは不快な音だが、無響室に入ると自分の身体が発するノイズが聞こえてくる。
    人間の聴覚は、こういったノイズを無意識下でフィルタリングしているらしいと何かで読んだ気がする。
    音楽への衝動は、長い歳月を経て様式が整理され器材が進化しても、根っこは変わらないのだと思う。声があるかぎり歌う。音が出るかぎり奏でる。その気になれば、どんなノイズでさえも歌にすることができる。
    ボカロの声に魅了されるのも、フェラーリの走行音に官能を見出すのも、実は似たような話なのかもしれない。
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    ■music:ケフィアP
    ■illust:ゆかこ
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    Info

DAIMお蔵出し:くちばしP / “EX-GIRL”

  1.  初音ミクのオリジナル曲の歴史を語るとき、「メルト」によって「キャラソン」が「私とあなたの歌」に変化した、というのが一般的な意見である。しかし、ミクという仮想人格への自己言及から二人称的な誰かの物語へのシフトは、「メルト前メルト後」のようにデジタルに遷移したものではない。そのことを強く印象づけているのが、この作品である。
     曲の概要はニコニコ大百科に譲る。注目したいのは、タイトルの「EX」と歌詞の謎である。「EX」とは何だ?「自分に飽きた」のは、いったい誰なんだ?この独白を、初音ミクという「個人」、あるいは、どこかにいる多感な少女の心の動きと解釈することはたやすいが、両者を隔てるものは無に等しい。ここにいる彼女は、「細い裏路地」という日常空間から「この世の全て裏から眺め」ることができるのだから。そして彼女が獲得するのは、全ての視線と新たな世界である。
     「EX」とは、初音ミクと分かちがたい特別な存在、つまりニコ動を見ているあなた自身のことである。
     ※ただしおっさんを除く
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    ■music&illust:くちばし
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    Info

DAIMお蔵出し:ちえ / “フライングスタート”

  1.  この季節にふさわしい、せつなくもあざやかな高揚感につつまれてみよう。そして、なぜかを探ってみよう−こんな調子で語り始めると1年が過ぎてしまうので、できるだけ端的にまとめてみたい。
     まず、たった11秒、ピアノとベース、ドラムだけのイントロの豊かさに目を瞠る。そこからミクの声とフルートのような音色が加わって、ひらひらと舞い踊る。35秒あたりからは弦楽器のピチカートを交えつつタメをつくり、46秒からのサビで喜びを爆発させて、2番に続く間奏からは一気に畳み掛ける。
     このスピーディでトリッキーな構成に、いかにも春らしいキーワードを散りばめた歌詞が花を添える。曲を聴きながらじっくりと確かめて、メロディと言葉が織りなす響きとリズムを堪能してほしい。
     そしてやや後ろから描かれたミクのイラストは、翼のように両手を広げ彼方に翔んでいってしまいそうな彼女の一瞬を切り取っている。
     ざっと見渡しただけで、この密度である。まるでポップソングのお手本なのだが、おそらく楽曲制作や楽器演奏の経験があるほど驚きが増すだろう。これを聴いて自分も何かやってみようとそわそわし始めた方が、決して少なくないと想像するのだ。
     3分57秒。この余韻は、なにものにもかえられないきらめきである。
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    music:ちえ
    words:リョータイ
    illust:はらの
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    Info


DAIMお蔵出し:Treow(逆衝動P) / “Chaining Intention”

  1.  卵から孵ったばかりの雛鳥が最初に見たものを親と思い込む「刷り込み」という行動があるが、音楽はそのトリガーになりうるだろうか。ワタシは充分に有り得ると思っている。
     いや別に胎教の話をするつもりはない。音楽に対して主体的に行動するきっかけになる楽曲が、誰にでも必ずあるだろうということだ。
     そういうポテンシャルを持つ作品は、往々にしてブロードキャストされていない。例えば皆が見ているTVに独りそっぽを向いてPCを眺めているときに、前触れなく現れるものだ。ネットでそんな楽曲を発見して大きなショックを受け、血眼になって音楽情報を漁るようになったティーンエイジャー…ボカロネイティブあるいはネット音楽ネイティブが、今後どんな風景を見せてくれるのか、あるいはどんな人生を歩むのか、実は楽しみで仕方がないのである。
     てなことを、この作品とワタシ自身のトリガー楽曲を聴き比べながらぼんやりと考えている。
     「刷り込み」は中二病の感染源だよなあ。
    ********************
    music:Treow
    words:NaturaLe
    illust:花雀
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    Info

DAIMお蔵出し:OSTER project / “【初音ミク】恋スルVOC@LOID -テイクゼロ-【おまけ】”

  1.  2013年の今こそ、あえて取り上げる。
     いわゆるn次創作の端的な例であるパロディは、元ネタへの深い洞察とリスペクトとセンスが必要となる。さらに元ネタと密接な距離に位置するので、ハズすわけにはいかない。そのプレッシャーを想像するだけで胃が痛くなる、そういう種類の創作である。
     ボーカロイド…特に初音ミクのキャラクター性の成立過程において、極初期に制作され広く共有された「ハイレベルな2次創作」が影響していることは、あらためて強調しておきたい。実際、ミクがなぜ仕事を選ばないのか、なぜネギを持っているのか等を説明するには、年表を広げるしか無いのだ。
     さて、自身の曲を高度かつ徹底的にパロったこの作品によって、作者がミクにアホの子属性を付加した罪は重い。しかも作者は現在に至るまで懲りるどころか最前線から降りそうな気配もないので、始末に負えない。
     まったく、「セルフバカー」とはよく言ったものである。
    ********************
    ■music,lyrics:OSTER project
    ********************
    ※通常はレビュー曲の外部プレイヤーを配置するのですが、今回は原曲と、あたま@ニコニコさんによる素晴らしいProject Divaエディット動画をご紹介しておきます。

    Info

DAIMお蔵出し:kz(livetune) / “Tell Your World”

  1. ハジメテノオトが溶けて消え失せた世界の終わりで踊ろう
    どんな歌でも歌うから
    あふれ出す想いは歌に変えて
    おはよう、おはよう
    記憶の中の幻と陽炎の日々は昔々の今日
    オンディーヌ?ウンディーネ?
    深海へ沈むリアルな世界は明日も皆様他人事
    進化の過程の僕が贈るものは全て胡桃と緑のジュース
    未来と願いと奇跡の絵の具で猫という猫を虹色に!
    千の桜の雨が降る最果ての世界で一番のお姫様は
    アイとはなんぞと問われれば
    ここから連れ出してと
    十文字以内で答エル





    「覚悟をしててよね?」
    「教えてよ 君だけの世界」




    *******************
    ■music&lyrics:kz(livetune)
    ■movie:わかむらP,ファンタジスタ歌磨呂,TAKCOM
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    Info

DAIMお蔵出し:島白(よだれP) / “初音ミクが「ほしのこもりうた」歌いやがった【リローデッド】”

  1.  おっさんには新しい音楽なんて必要ないのさ勝手にやってればいいのさ。そう考えていた時期が自分にもありました。
     タイトルの通り、これは「2008年08月31日」に投稿されたものの再投稿である。あの24時間前後の異様な熱気と一体感による興奮で文字通りモニタに齧りついていたことを、夏の終わりの暑さとともによく覚えている。
     この曲は、あの日に投稿された作品群のなかでも異質であった。モチーフ・メロディ・歌詞・アレンジのアクロバティックとさえ思える組合せを、可愛らしい合成音声が唄う。一聴してすぐに自分が蓄積してきた音楽感、いや、独りよがりのまま更新されなかった知識と嗜好が、一気に崩壊した。
     あとで調べたら、どうやらこれは「ドラムンベース」と呼ばれるジャンルの一種らしいと分かった。ではジャングルと何が違うのだろう。調べるなら手がかりはそのへんか。こうして、音楽をめぐる探検を再開したのである。
    ********************
    ■music&lyrics:島白(よだれP)
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    ニコニコ動画

    この動画は投稿者により非公開に設定されています。

    Info

DAIMお蔵出し:ぱきら / “Ribbon~脱・女のコ宣言”

  1.  隠れた名曲である(と言っても殿堂入りしている)「涙にさよなら」の作者・ぱきらさんの、もっと隠れてるけど個人的に忘れられない作品。
     一言で表すと、メロディ、アレンジ、(初音ミクに寄せているが)自称的な歌詞のどれもが、1980年代後半〜1990年代初期に隆盛を極めた、典型的な女性アイドルポップスである。
     こういったテイストが、2000年代後半にインディペンデントで聴けるとは、さすがに予想していなかった。我らがバーチャルアイドルが唄う音楽は実にバラエティに富んでいるけど、それらがアイドルポップスとして機能しているなら、たまにはこういうのもいかがでしょう?
    ********************
    ■music&lyrics:ぱきら
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    ※参考:Qlair「思い出のアルバム」

    Info


DAIMお蔵出し:曲者P / “10月の雨”

  1.  おっさんどもがボカロにハマる理由を考えたことがあるだろうか?キャラに魅せられた奴、世界を変える可能性を感じてる奴もいるが、ワタシは「音楽を取り戻すことができた」からに尽きる。
     ワタシはフォークからMTVに至るまで、TVやラジオで流れる音楽を聴いてきた。やがて音楽が「産業として」成熟しJ-POPだらけになって、ワタシが親しんだ音楽は表から消えた。いよいよ新譜購入を止めようと考えてたのが2007年の夏。マジ。
     この曲はそういうおっさんの琴線に触れた。シンセ主体のAOR的なミディアムポップス…求めていた音楽を見つけた。これが新作で聴けて見渡せば他にも良曲がある。ここは宝の山だ!そう感激したのが2007年の暮れ。マジ。
     おっさんどものこんな音楽体験の「再生」が、たぶん今でも同時多発している。これで理解できないなら、ホール&オーツのKiss on My Listを引っ張り出してこい。話はそれからだ。
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    ■music&lyrics:曲者P
    ********************

    Info

DAIMお蔵出し:委員長 / “台湾人が中国語で「いーあるふぁんくらぶ」を歌ってみた”

  1. ダメダメここでは あなたも“你好”!
    晩夏の狂騒に明け暮れていた或る日、以下のツイートが目に留まった。

    「いーある〜」は未聴だったので早速聴いてハマって、さらに「歌ってみた」を調べて巡りあったのがこちら。その理由は、やはりTwitterで見た『これは中華圏で翻訳された「歌ってみた」が、たくさんある』という情報を確認したかったからである。
    ワタシは原曲を、日本と中華圏との関係を、女の子のありふれた好奇心を通じて描いたものと解釈している。遠くて近く、近くて遠い。たぶん我々は、ずっと昔からそのように過ごしてきたのだ。
    だんだん君と 同じ言葉が 使えるね 
    うぉーあいにー 言えるかな
    委員長さんの「歌ってみた」は、そんな両者の距離を一気に縮めてくれたようで、ちょっぴり泣いてしまった。香港・台湾ツアーは、必ず成功すると確信している。
    だんだん君の 伝えたい気持ちが わかってく
    うぉーあいにー 言わせてよ
    うぉーあいにー 言えるかな
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    ■song:委員長
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    ■music,words&play:みきとP
    ■illust:ヨリ
    ■movie:りゅうせー
    ■enginner:友達募集P
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DAIMお蔵出し:鼻そうめんP / “YOUTHFUL DAYS’ GRAFFITI”

  1. 先日も謎のヒットを飛ばしたアニメーター兼イラストレーター兼コンポーザーである氏の作品から、おっさん的な好みでこれを紹介しつつ、氏がいわゆる総合Pではないことを指摘したい。
    この曲のほぼ完成した状態を、ピアプロで聴ける。

    だが何かが足りない。もちろん歌詞である。これに限らず、氏はほとんどの作品で歌詞を外注しているので、総合P=楽曲や動画の全てを手がける制作者とは言えない。
    さて、歌詞の不在で不足するものとは何か。電気グルーヴが「Shangri-La」を発表した際、石野卓球氏が「ラブソングがないと駄目だ」と発言した記憶がある(がソース不明)。両者ともガチな電子音楽家で多彩な表現力を持つのに、場合によっては欠落してしまう要素があるらしいのだ。
    推測だが、氏は十分にそれを理解している。できないことを潔く切り捨てることも、表現者には必要なのでR。
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    ■music&illust:鼻そうめんP
    ■lyrics:友場洋
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